私たちが足元に感じる土や、月面を覆う白い砂のような物質。これらは地質学的にレゴリスと呼ばれます。レゴリスとは、固い岩盤の上に積み重なった、未固結で不均質な堆積物の層を指す言葉です。塵や砕けた岩石、その他の断片的な物質で構成されており、地球だけでなく、月や火星、小惑星など、太陽系の多くの天体に見られます。
この言葉は、ギリシャ語で「ブランケット(覆い)」を意味する「rhegos」と、「岩石」を意味する「lithos」に由来しています。1897年にアメリカの地質学者ジョージ・P・メリルによって定義され、その起源が風化によるものか、あるいは風や水によって運ばれてきたものかに関わらず、岩盤を覆う未固結の層すべてを包括する概念として確立されました。
Key Facts
- 定義: 固い岩盤を覆う、未固結で不均質な堆積層(塵、岩片など)のこと。
- 地球での役割: 植物の成長や動物の生息に不可欠であり、建設資材や地下水の経路としても重要。
- 月の特徴: 約46億年にわたる隕石衝突と宇宙風化により形成され、鋭利なガラス質の粒子を含む。
- 火星の特徴: 微細な塵が惑星規模の嵐で舞い上がり、地下には氷や二酸化炭素が凍結していると考えられている。
- 小惑星・衛星: 重力が極めて低いため、微細な粒子から巨大な岩塊まで多様な形態で存在する。
地球におけるレゴリスの多様性と重要性
地球上のレゴリスは、生物活動や気候変動、化学的な風化作用によって非常に複雑な構成となっています。一般的に私たちが「土壌」と呼ぶものは、レゴリスの最上層にあり、有機物が豊富に含まれている部分を指します。しかし、レゴリスの範囲はそれだけではありません。
具体的には、水によって運ばれた沖積層や、風・氷河・重力によって移動した堆積物、化学的に分解されたサプロライト(風化岩)、さらには火山灰や溶岩流などが含まれます。また、これらの物質がセメントのように固まったデュリクラスト(硬結層)もレゴリスの一部です。

レゴリスの厚さは場所によって異なり、ほとんど存在しない地域から数百メートルに及ぶ場所まであります。また、その年齢も、つい今降り積もった火山灰のような新しいものから、オーストラリアの一部に見られる先カンブリア時代のような数億年前のものまで多岐にわたります。
実用的な面では、レゴリスは建築や道路建設における基礎地盤として極めて重要であり、その機械的特性の把握が不可欠です。また、砂や砂利、石灰などの建設資材の供給源となるほか、地下水が涵養(かんよう)され、移動するための重要な経路としての役割も担っています。
月面レゴリス:宇宙の衝突が作り出した世界
月の表面は、ほぼ全域がレゴリスに覆われています。岩盤が露出しているのは、急峻なクレーターの壁面や一部の溶岩流路のみです。この層は、46億年という長い年月をかけて、大小さまざまな隕石の衝突や、超高速で降り注ぐ微小隕石、さらには太陽風などの荷電粒子が岩石を破壊し続けることで形成されました。

特に時速96,000kmを超える速度で衝突する微小隕石は、局所的に極めて高い熱を発生させ、塵を溶融・蒸発させます。これが再び凝固することで、地球のテクタイトに似た、鋭利でガラス質の「アグルチネート(凝集塊)」が形成されます。
月のレゴリスの厚さは、海(マレ)と呼ばれる暗い地域で4〜5m、古い高地地域では10〜15mに達します。さらにその下には、大規模な衝突で砕かれた岩盤の層である「メガレゴリス」が存在します。

月面科学では、粒径1cm以下の微細な成分を「月面土壌(lunar soil)」、さらに30マイクロメートル以下の極めて細かいものを「月面塵(lunar dust)」と呼び分けています。また、「宇宙風化」と呼ばれるプロセスにより、時間の経過とともに表面が暗くなるという光学的な特性の変化も見られます。
火星と小惑星におけるレゴリスの形態
火星の表面は、広大な砂漠と塵、そして点在する岩石で構成されています。火星の塵は非常に微細であるため、惑星規模の巨大な塵嵐が発生し、大気中に漂うことで空を赤く染めています。かつては液体の水が流れていたと考えられており、それが現在のレゴリスの形状に影響を与えた可能性があります。また、赤道付近の地下や高緯度地域の表面には、水や二酸化炭素の氷が凍結して保存されていると推測されています。
一方、小惑星のレゴリスは、重力が極めて弱いため、地球や月とは異なる挙動を示します。NEARミッションが調査した小惑星エロスでは、平坦な低地にレゴリスが充填され、その上に岩塊が散在する様子が確認されました。

近年のサンプルリターンミッション(はやぶさ2のリュウグウ、OSIRIS-RExのベンヌ)により、小惑星のレゴリスには水や有機物、炭素に富む原始的な物質が含まれていることが判明しました。また、ベンヌの表面は予想に反して非常に険しく、滑らかな堆積層よりも岩塊が支配的であることも分かっています。

タイタン:氷が岩石のように振る舞う世界
土星の最大の衛星タイタンでは、広大な砂丘が広がっています。ここでの「砂」の正体は、水氷の破片か、あるいは大気中で生成された有機物の粒子であると考えられています。本来、地球上の雪のような氷の粒子はレゴリスとは区別されますが、タイタンは極低温であるため、氷が岩石と同じような機械的性質を持ちます。そのため、ここでは「氷のレゴリス」による浸食や堆積プロセスが進行しています。
レゴリスの特性まとめ
| 天体 | 主な構成成分 | 形成要因 | 特筆すべき性質 |
|---|---|---|---|
| 地球 | 土壌、風化岩、堆積物 | 化学的・生物的風化、水・風の運搬 | 有機物が豊富で生命維持に不可欠 |
| 月 | 砕かれた岩石、ガラス質粒子 | 隕石衝突、宇宙風化 | 鋭利な粒子が多く、宇宙風化で暗色化する |
| 火星 | 微細な塵、砂、氷 | 風食、過去の水流、凍結 | 惑星規模の塵嵐が発生する |
| 小惑星 | 岩片、原始的有機物、水 | 衝突、太陽風の注入 | 低重力下で岩塊と微細粒子が混在 |
| タイタン | 水氷の粒子、有機物 | メタンの流れ、大気からの降下 | 極低温のため氷が岩石のように振る舞う |
Frequently Asked Questions
レゴリスと「土」は何が違うのですか?
土(土壌)はレゴリスの一種ですが、一般的に土壌は有機物を含み、生物活動が関与している最上層を指します。一方、レゴリスは有機物の有無に関わらず、岩盤を覆うすべての未固結物質(岩片や塵など)を指すより広い概念です。
月面レゴリスはなぜ危険だと言われるのですか?
月面レゴリスは、地球のように水や風による摩耗がないため、粒子が非常に鋭利で研磨剤のような性質を持っています。これが宇宙服や機器を摩耗させたり、吸い込むと健康に影響を及ぼしたりする可能性があるためです。
火星の空が赤いのはレゴリスが関係していますか?
はい。火星のレゴリスに含まれる非常に微細な塵が、風によって大気中に舞い上がり、太陽光を散乱させるため、空が赤みを帯びて見えます。
小惑星のレゴリスを地球に持ち帰る意味はありますか?
小惑星のレゴリスには、太陽系形成当時の原始的な物質や水、有機物が保存されている可能性が高いためです。これらを分析することで、地球の起源や生命の材料がどこから来たのかを解明する手がかりになります。
タイタンのレゴリスはなぜ「氷」なのですか?
タイタンは極めて低温の環境にあるため、水氷が地球上の岩石と同じように硬い固体として存在し、それが砕けて堆積しているためです。そのため、氷でありながら地質学的なレゴリスとして振る舞います。
References
- "regolith". UK English Dictionary. . Archived from the original on 28 April 2021.
- "regolith". (5th ed.). HarperCollins.
- Clarke, Jonathon (2008). "Extraterrestrial regolith. In Scott, K and Pain, C.F. (Eds)". Regolith Science, CSIRO Publishing, Melbourne: 377–407.
- Anderson, R. S. and Anderson, S. P., 2010, Geomorphology: The Mechanics and Chemistry of Landscapes. Cambridge University Press, p. 162
- Harper, Douglas. "regolith". .
- ρῆγος, λίθος. ; ; at the .
- Merrill, G. P. (1897) Rocks, rock-weathering and soils. New York: MacMillan Company, 411p.
- Ollier, Cliff; Pain, Colin (1996). Regolith, soils and landforms. Chichester: John Wiley. .
- Taylor, G.; Eggleton, R.A. (2001). Regolith geology and geomorphology. Chichester: J. Wiley. .
- Scott, Keith M.; Pain, Colin (2009). Regolith science. Collingwood, Vic.: CSIRO Pub. .
📸 フォトギャラリー




