アイスランドの首都レイキャビクに位置するアイスランド国立・大学図書館(Landsbókasafn Íslands – Háskólabókasafn)は、国の文化遺産を保存する国立図書館としての役割と、アイスランド大学の学術研究を支える大学図書館としての機能を併せ持つ、国内最大規模の知の拠点です。約100万点に及ぶ膨大なコレクションを誇り、研究者から一般市民まで、あらゆる人々が知識にアクセスできる開かれた環境を提供しています。
主要な事実(Key Facts)
- 設立: 1818年に国立図書館が誕生し、1994年に大学図書館と統合。
- 蔵書数: 約100万点(アイスランド国内最大)。
- 役割: 国立図書館およびアイスランド大学の大学図書館を兼任。
- 法的権限: アイスランドにおける主要な法定納本(出版物の義務的寄託)機関。
- メインビルディング: 「Þjóðarbókhlaðan(ソイザルボクフラザン)」と呼ばれる13,000平方メートルの近代建築。
歴史的変遷:統合への道のりと困難な建設
国立図書館の起源は1818年に遡ります。デンマークの古物研究家カール・クリスチャン・ラフンとアイスランド文学協会の主導で設立され、当初は寄贈された書籍を中心にコレクションを形成しました。その後、レイキャビク大聖堂の屋根裏や国会議事堂(アルシング)など、さまざまな場所に移転しながら規模を拡大し、1886年には法定納本制度が導入されたことで、蔵書数は飛躍的に増加しました。
1906年から1908年にかけて、国立図書館、国立博物館、国立公文書館、国立自然史博物館を収容する複合施設「Safnahúsið(サフナフース)」が建設され、長らくここが拠点となりました。

一方、アイスランド大学の図書館は1940年に正式に設立されました。国に2つの大規模な学術図書館が存在することの効率性が議論された結果、両者の統合計画が浮上します。1974年のアイスランド入植1100周年に合わせて新館「Þjóðarbókhlaðan」を開館させる計画でしたが、1973年のオイルショックによる財政悪化で建設が大幅に遅延しました。
1978年にようやく着工し、1983年には外装が完成したものの、内装費用が不足し、建物は10年近く空き家のまま放置されるという異例の事態となりました。最終的に1991年の新政権によって予算が優先され、アイスランド共和国独立50周年にあたる1994年12月1日、ついに統合図書館として開館しました。
多様なコレクションと専門的な役割
図書館は、保存状態や利用目的に応じて、以下のような専門的なコレクションに分かれています。
国立コレクションと古写本
法定納本制度により、アイスランド国内で出版されたほぼすべての印刷物、電子媒体、音声資料が収集されています。また、世界各地で出版されたアイスランド関連資料も積極的に収集しており、世界で最も包括的なアイスランド資料集となっています。特に、1100年頃の羊皮紙写本を含む約15,000点の古写本コレクションは極めて貴重であり、ハルドール・ラクスネスのような著名な作家の書簡や現代の電子資料まで幅広く保管されています。
学術コレクションとリファレンス
アイスランド大学の旧蔵書を中心とした学術コレクションには、多言語の科学論文や教科書が含まれています。これらはライブラリーカード保持者が館外貸出を利用でき、大学生にはカードが無料で発行されます。また、百科事典や辞書を備えたリファレンス部門では、大学が契約する電子データベースへのアクセスが可能です。
視聴覚資料
レコード、映画、テレビ番組などの視聴覚コレクションが整備されており、専用の設備を用いて館内で視聴することができます。特にアイスランド国内の音声・映像資料の収集に重点が置かれています。
デジタル化と現代的なサービス
図書館は、知識のオープンアクセスを推進しており、2012年にはベルリン宣言に署名しました。また、以下のような大規模なデジタルアーカイブプロジェクトを展開しています。
- Timarit.is: 新聞や雑誌のデジタル化(フェロー諸島、グリーンランドの国立図書館と協力)。
- Handrit.is: 古写本のカタログおよびデジタルライブラリー。
- Gegnir: 1991年に導入されたオンライン蔵書目録(OPAC)。現在はアイスランド全土の公共図書館で共有されるシステムとなっており、欧州デジタルライブラリー経由でも閲覧可能です。
- ウェブアーカイブ: Heritrixクローラーを用い、「.is」ドメインのウェブページを定期的に保存しています。
施設概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 主要施設名 | Þjóðarbókhlaðan(ソイザルボクフラザン) |
| 建物面積 | 13,000平方メートル |
| 管理組織 | アイスランド教育・科学・文化省傘下の独立高等教育機関 |
| 主な機能 | 法定納本、古写本保存、大学教育・研究支援、一般公開 |
| デジタルサービス | Gegnir (OPAC), Timarit.is, Handrit.is |
Frequently Asked Questions
誰でも図書館を利用できますか?
はい、一般公開されており、誰でも利用可能です。学術コレクションの貸出を希望する場合は、少額の手数料でライブラリーカードを作成することができます(アイスランド大学の学生は無料です)。
貴重な古写本を閲覧することはできますか?
古写本は専用の閲覧室で、申請に基づいて館内利用が可能です。ただし、非常に希少で価値の高い資料についてはアクセスが制限されており、その場合はデジタル画像による提供が行われます。
法定納本とは具体的にどのような制度ですか?
アイスランド国内で出版されたすべての印刷物、電子資料、音声資料を、保存と後世への継承のために図書館に寄託することを義務付ける法律に基づいた制度です。
デジタルアーカイブは無料で利用できますか?
はい、Timarit.isやHandrit.isなどの主要なデジタルプロジェクトは、オープンアクセスを推進しており、オンラインで誰でも無料で閲覧できるようになっています。
図書館の運営体制はどうなっていますか?
教育・科学・文化省が任命する7名の理事会と国立館長によって運営されており、内部は保存、サービス、広報、収集、管理の5つのセクションに分かれています。
References
- "About". National and University Library of Iceland. Retrieved 2022-03-27.
- Encyclopedia of library and information science. New York: Allen Kent. 1986. pp. 74–82. . 916329398.
- H. Petursdottir, Kristin (1983). "Public Libraries in Iceland". Scandinavian Public Library Quarterly. 16: 110.
- Kent, A; Lancour, H; Daily, J E (1974). Encyclopedia of library and information science. New York: M. Dekker. p. 148. . 500153885.
- International dictionary of library histories. Stam, David H. Chicago: Fitzroy Dearborn Publishers. 2001. p. 78. . 934606985.
{{}}: CS1 maint: others () - Drake, Miriam A. (2003). Encyclopedia of library and information science (2nd ed.). New York: Marcel Dekker. p. 2103. . 446665433.
- "Årbók". Landsbókasafnið. 1991. p. 111. 838647920.
- "Berlin Declaration: Signatories", Openaccess.mpg.de, Munich: , retrieved July 17, 2018
- "OA in Iceland". Open Access in Practice: EU Member States. . 31 May 2012. Retrieved July 17, 2018.
- "Manuscripts and Private Archives". National and University Library of Iceland. Retrieved 2022-03-27.