ハンガリーの知的財産と文化的な記憶を保存するセチェーニ国立図書館は、ハンガリカ(ハンガリー国内で出版されたもの、ハンガリー語で書かれたもの、あるいはハンガリーに関連する著作物)の収集を主目的としています。国内で発行されるすべての印刷物は2部ずつ納本される仕組みとなっており、国家の記録を網羅的に保存しています。
主要な事実(Key Facts)
- 世界的な古書群: 1500年以前に印刷されたインクナブラ(揺籃期本)を1,800冊保有。
- 国内最大の写本: 約140万点の写本を所蔵し、国歌などの重要文書を含む。
- 希少な定期刊行物: 約25万冊の定期刊行物を保有し、その約75%が世界で唯一の現存コピー。
- 膨大な視覚資料: 400万点のポスター・小印刷物や30万点以上の地図を所蔵。
- デジタル化の推進: 電子定期刊行物アーカイブ(EPA)への大規模な追加や、仮想地球儀博物館の開設など、アクセシビリティを向上させている。
歴史を物語る書籍コレクション
図書館の書籍部門は、人類の印刷史を辿る貴重な資料の宝庫です。特に1500年以前の印刷本であるインクナブラコレクションには、グーテンベルク聖書の断片や、ハンガリー初の印刷本である『Chronica Hungarorum』が含まれています。
また、16世紀の資料を集めたアンティクア・コレクション(13,000点)にはノストラダムスの『予言書』初版が、古ハンガリー図書館(8,500点)にはハンガリー語で印刷された初の完全な聖書である『ヴィゾリ聖書』が収蔵されています。さらに、1924年にアルベルト・アポニ伯爵から寄贈されたアポニ・コレクション(3,000点以上)には、現存する最古のハンガリー印刷地図『Tabula Hungariae』という至宝が含まれています。
このほか、リーフレット、ルーマニア・キリル文字で書かれた典礼書を中心とする古キリル文字コレクション、初期印刷本アーカイブ、製本史コレクションなど、多岐にわたる専門的な収集が行われています。
定期刊行物とデジタルアーカイブ
19世紀の出版ブームを受け、1884年にヨーゼフ・シニェイ(父)によって国立新聞図書館が設立されました。現在、約25万冊の定期刊行物が保管されており、ハンガリー国内および国際的な新聞の約4分の3が、ここでのみ確認できる唯一の資料となっています。注目すべきは、ハンガリー初の定期刊行紙『Nova Posoniensia』や、欧州最古の学術誌『Journal des Sçavans』です。
これらの貴重な資料はデジタル化が進んでおり、2026年には電子定期刊行物アーカイブ(EPA)に650万ページもの資料が追加されました。
写本・地図・視覚芸術の記録
写本コレクションは、総数約140万点とハンガリー国内で最大規模を誇ります。ここにはハンガリー国歌『Himnusz』や、愛国歌『Szózat』のオリジナル原稿が保管されています。
地図コレクションは1939年に独立した部門となり、2015年時点で30万点以上の資料を保有しています。そのうち3,400枚は1800年代初頭のセチェーニ・コレクションに由来するものです。所蔵地図の約4分の1が歴史的なハンガリー領土をカバーし、残りは世界各地の地図で構成されています。近年ではエトヴェシュ・ロランド大学と連携し、地球儀をデジタル化した「仮想地球儀博物館」を開設したほか、『Tabula Hungariae』もオンラインで閲覧可能となりました。
また、1935年に設立されたポスター・小印刷物コレクションは約400万点に及び、図書館内でも最大級の規模を誇ります。2007年に設立された写真コレクションでは、蔵書に関連するガラス乾板やネガが4万点保管されています。
芸術と舞台文化の保存
音楽コレクションには17万点の印刷楽譜が収蔵されており、ヨーゼフ・ハイドンの手稿や初版作品、フランツ・リストの資料、フェレンツ・エルケルのオペラ手稿などが含まれています。
演劇史コレクションは、第二次世界大戦後に残された劇場図書館を引き継ぐ形で1949年に設立されました。3万冊の戯曲と38万点の関連文書を所蔵し、舞台芸術の歴史を伝えています。
コレクション概要まとめ
| カテゴリー | 主な所蔵数・特徴 | 代表的な資料 |
|---|---|---|
| 古書・書籍 | インクナブラ 1,800冊 / アンティクア 13,000点 | グーテンベルク聖書断片、ヴィゾリ聖書 |
| 定期刊行物 | 約25万冊(75%が唯一の現存本) | Nova Posoniensia、Journal des Sçavans |
| 写本 | 約140万点(国内最大) | ハンガリー国歌『Himnusz』原稿 |
| 地図 | 30万点以上 | Tabula Hungariae(デジタル公開済) |
| ポスター・印刷物 | 約400万点 | 多様な視覚的歴史資料 |
| 音楽・演劇 | 楽譜 17万点 / 戯曲 3万冊 | ハイドン、リストの手稿 |
Frequently Asked Questions
「ハンガリカ」とは具体的にどのような資料を指しますか?
ハンガリー国内で出版されたもの、ハンガリー語で書かれたもの、ハンガリー人著者の作品、およびハンガリーに関連する内容を持つ著作物の総称です。
世界的に見て特に希少価値が高い資料は何ですか?
1500年以前の印刷本(インクナブラ)や、世界で唯一のコピーである定期刊行物が多数含まれています。特にグーテンベルク聖書の断片や、欧州最古の学術誌などは極めて貴重です。
地図や古書をオンラインで閲覧することはできますか?
はい。デジタル化が進んでおり、電子定期刊行物アーカイブ(EPA)や、デジタル化された『Tabula Hungariae』、また大学と連携した「仮想地球儀博物館」などを通じてアクセス可能です。
音楽や演劇に関する資料はどのようなものが含まれていますか?
音楽面ではハイドンやリスト、エルケルなどの手稿や初版楽譜が所蔵されています。演劇面では、戦後の劇場図書館から引き継いだ3万冊の戯曲と38万点の文書が保存されています。
写本コレクションの規模はどのくらいですか?
約140万点という膨大な数を誇り、ハンガリー国内で最大の写本コレクションとなっています。国歌のオリジナル原稿などの国家的に重要な文書が保管されています。