南アフリカの知的遺産を象徴する南アフリカ国立図書館は、単一の組織として始まったわけではありません。この機関は、異なる背景を持つ二つの主要な図書館が長い年月をかけて発展し、最終的に統合されることで誕生しました。一方はケープタウンで始まった英国的な伝統を持つ図書館であり、もう一方はプレトリアでオランダ文化の影響を受けて設立された国家図書館です。
南アフリカ国立図書館の成り立ちと主要事実
- 起源:1818年にケープタウンで設立された公共図書館と、1887年にプレトリアで設立された国家図書館の二系統からなる。
- 統合:1999年11月に両館が合併し、現在の「南アフリカ国立図書館」となった。
- 資金源:初期のケープタウン図書館は、ワイン貿易への課税による収益で運営されていた。
- コレクションの核:中世・ルネサンス期の写本や、オランダ文学の膨大なコレクションを保有している。
- 役割の変遷:地域的な公共図書館から始まり、法定納本(出版物を義務的に収集する制度)を経て、国家的な研究拠点へと進化した。
ケープタウンにおける公共図書館の黎明
南アフリカにおける近代的な図書館の歴史は、1818年にケープ植民地の初代文民総督チャールズ・サマセット卿が発した布告から始まります。彼はケープタウンで販売されるワインに税を課し、その収益を公共図書館の設立に充てることを決定しました。この取り組みの目的は、辺境の地に住む若者たちに知識への道を拓き、「家庭教育」という人生最大の恩恵を提供することにありました。この図書館のモデルは、1805年にロンドンで設立されたアテネウム(学術集会所)形式のロンドン・インスティテューションであったと考えられています。
図書館の蔵書は、多くの寄贈によって充実しました。1761年にオランダ改革派教会に寄贈されていたヨアヒム・ニコラウス・フォン・デッシン氏のコレクションが1820年に譲渡されたほか、1861年にはジョージ・グレイ卿が中世やルネサンス期の貴重な写本および稀少本を寄贈しました。1833年頃に訪問した外交官エドマンド・ロバーツは、当時約1万冊を蔵していたこの図書館を「植民地の誇り」と称賛しています。
その後、1873年からケープ植民地の法定納本図書館となり、1916年からは国内全域の印刷物が集まる体制となりました。1954年に法定納本の機能がケープタウン市に移管されると、同館は研究に特化した国家参照図書館としての性格を強め、1967年に「南アフリカ図書館」へと名称を変更しました。
プレトリアにおける国家図書館の発展
一方、内陸のトランスヴァール共和国では、オランダ文学協会(Maatschappij der Nederlandsche Letterkunde)からの寄贈をきっかけに、オランダ語の文学や言語に関する蔵書を中心とした「南アフリカ共和国国家図書館(Staats-Bibliotheek der Zuid-Afrikaansche Republiek)」が形成されました。1883年に最初の蔵書が届き、1887年9月21日に正式に憲章が承認されました。
プレトリアの都市成長に伴い、公共図書館の需要が高まりました。1878年に設立された最初の公共図書館は財政難で1890年に閉館しましたが、市民の強い支持により1893年に再建され、国家図書館の傘下に入りました。これにより、1964年まで国家図書館は「公共図書館」と「国家図書館」という二つの役割を兼務し、法定納本の責任も担うこととなりました。
蔵書の拡充には、初代館長でアフリカーンス語の詩人でもあるヤン・セリエール氏の功績が大きく、1898年には米国スミソニアン協会と交換協定を締結しました。これにより、南アフリカ共和国の公刊物と引き換えに、米国の公刊物を収集する体制が整いました。さらに1930年代にはマシュー・スターリング館長の指導下で、全国的な貸出システムや書誌情報の中心地としての機能を追求し、南アフリカ全体の中心図書館としての地位を確立しました。
歴史的変遷のまとめ
| 項目 | ケープタウン系統(南アフリカ図書館) | プレトリア系統(国家図書館) |
|---|---|---|
| 設立年 | 1818年 | 1887年(正式承認) |
| 初期の資金・蔵書源 | ワイン税の収益 / 個人の寄贈 | オランダ文学協会の寄贈 |
| 主な特徴 | 英国的モデル、中世・ルネサンス写本 | オランダ・アフリカーンス文化、公刊物交換 |
| 役割の変遷 | 公共図書館 → 法定納本 → 国家参照図書館 | 国家図書館 兼 公共図書館 |
| 最終的な統合 | 1999年11月に合併し「南アフリカ国立図書館」へ |
Frequently Asked Questions
南アフリカ国立図書館はどのようにして設立されましたか?
1818年にケープタウンで設立された公共図書館と、1887年にプレトリアで設立された国家図書館という、異なる歴史を持つ二つの機関が1999年に合併して誕生しました。
初期のケープタウン図書館の運営資金はどこから出たのですか?
ケープ植民地の総督チャールズ・サマセット卿が、ケープタウンで販売されるワインに課した税金の収益が充てられました。
法定納本とはどのような制度ですか?
出版された書籍などの印刷物を、法律に基づいて図書館に納入させる制度です。これにより、国内の知的生産物を網羅的に保存することが可能になります。