Surveyor 7 observes levitating dust, a phenomenon named Lunar horizon glow
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月の大気真空に近い「外気圏」の正体と古代の記憶

🗓 2026年8月10日

夜空に輝くを眺めるとき、私たちはそこを完全な真空の世界だと思いがちです。しかし、科学的な視点で見れば、月は極めて希薄ながらもガスに包まれています。地球のような厚い空気の層はありませんが、そこには外気圏(エグゾスフィアと呼ばれる特殊な環境が存在しています。

外気圏とは、ガス分子の密度が非常に低く、分子同士が衝突するよりも先に宇宙空間へ飛び出していくような希薄な大気層のことです。実質的には真空に近い状態であり、地球の最外縁部(国際宇宙ステーションが飛行する高度)に匹敵する密度しか持っていません。

Key Facts

  • 月の「大気」は極めて希薄な外気圏であり、実質的に真空と見なされる。
  • 全質量は10トン未満で、気圧は約0.3ナノパスカル(3 × 10-10気圧)と極めて低い。
  • ナトリウムやカリウムなど、地球や火星の大気には見られない成分が含まれている。
  • 約30億〜40億年前には、現在の火星の2倍近い厚い大気が存在していた可能性がある。
  • ガスは太陽風や放射圧によって常に宇宙へ流出しており、絶えず補充されている。

月の大気が形成されるメカニズム

月には大気を保持するための十分な重力がなく、ガス分子が脱出速度(秒速2.38km)を超えると簡単に宇宙へ逃げてしまいます。そのため、現在の大気は定常的なものではなく、以下のようなプロセスで絶えず供給されることで維持されています。

  • アウトガス:月内部の地殻やマントルで起こる放射性崩壊により、ヘリウムやラドンなどのガスが放出される現象。
  • スパッタリング:太陽風の粒子や微小隕石、太陽光が月面に衝突し、表面の原子を弾き飛ばして大気中に放出させるプロセス。

これらの相互作用により、月面周辺には地球の惑星間空間よりもわずかに高い粒子密度が維持されています。

"Overview of the processes known to occur around the Moon and on its surface, owing to interaction with the solar wind (from Bhardwaj et al. 2015)"

ガスの運命と消失

供給されたガスは、月の重力によって再び表面(レゴリス)に降り積もるか、あるいは太陽放射圧や太陽風の磁場に押し流されて宇宙空間へと消えていきます。このため、月の大気は層構造を持たず、自律的な循環も行われません。

Image of the lunar sodium exosphere over a 7° field of view.
Observations and modelling of the Moon’s sodium tail “spot”.

大気の組成と特異な現象

月の外気圏に含まれる成分は非常にユニークです。地球や金星、火星では一般的ではないナトリウムカリウムが検出されており、これらは地上からの分光観測によって確認されています。また、アポロ計画の探査機やルナ・プロスペクターなどのデータから、アルゴン40、ヘリウム4、ネオン、さらには二酸化炭素やメタンなどの存在も示唆されています。

また、ガスだけでなく、静電気によって浮遊する塵(ダスト)が一種の大気のような挙動を示すことがあります。これにより、日の出や日の入り時に地平線付近が光る「ルナ・ホライゾン・グロウ」という現象が観測されています。

Surveyor 7 observes levitating dust, a phenomenon named Lunar horizon glow
The thin lunar atmosphere is visible on the Moon's surface at sunrise and sunset with the lunar horizon glow[1] and lunar twilight rays, like Earth's crepuscular rays. This Apollo 17 sketch depicts the glow and rays[2] among the general zodiacal light.[3][4]

成分別の推定密度(昼間)

月の大気構成成分(1立方センチメートルあたりの原子数)
構成元素 推定原子数(個/cm³)
アルゴン 20,000 ~ 100,000
ヘリウム 5,000 ~ 30,000
ネオン 最大 20,000
ナトリウム 70
カリウム 17
水素 17未満

失われた古代の大気

現在の月は不毛な真空の世界ですが、かつては全く異なる姿をしていた可能性があります。NASAの研究チームがアポロ計画で回収されたマグマ試料を分析した結果、30億年から40億年前の約7,000万年間にわたり、比較的厚い大気が存在していたことが判明しました。

この古代の大気は、激しい火山活動によって放出されたガスによって形成され、その密度は現在の火星の約2倍に達していたと考えられています。理論上は生命を維持しうる環境であった可能性も議論されていますが、現時点で生命の痕跡は見つかっていません。この厚い大気層も、最終的には太陽風によって剥ぎ取られ、宇宙へと散逸してしまいました。

Frequently Asked Questions

月には本当に空気が無いのですか?

厳密には「外気圏」という極めて薄いガスの層が存在しますが、その密度は地球の真空装置の中と同等かそれ以下です。そのため、呼吸や気象現象が起こるような意味での「空気」は存在しません。

なぜ月の大気は地球のように厚くならないのですか?

主な理由は月の重力が弱いためです。ガス分子が太陽の熱などで加速されると、月の脱出速度(秒速2.38km)を容易に超えて宇宙へ逃げ出してしまいます。また、磁場がないため太陽風の影響を直接受け、ガスが剥ぎ取られやすい環境にあります。

「ルナ・ホライゾン・グロウ」とは何ですか?

月面で静電気的に浮遊している微細な塵が、太陽光を散乱させることで地平線付近が光って見える現象です。これはガスによる大気現象ではなく、浮遊するダストによるものです。

昔の月には生命がいた可能性がありますか?

30億〜40億年前には火山活動による厚い大気が存在していたことが分かっており、理論的には生命をサポートできた可能性があります。しかし、それを裏付ける具体的な生物学的証拠は見つかっていません。

月の大気にはどのような成分が含まれていますか?

アルゴンやヘリウム、ネオンなどの希ガスが多く含まれているほか、地球の大気では稀なナトリウムやカリウムなどが検出されています。

References

  1. "Lunar horizon glow from Surveyor 7". The Planetary Society. May 6, 2016. Retrieved Aug 8, 2022.
  2. "NASA Mission To Study Mysterious Lunar Twilight Rays". Science Mission Directorate. Sep 3, 2013. Retrieved Aug 8, 2022.
  3. Colwell, Joshua E.; Robertson, Scott R.; Horányi, Mihály; Wang, Xu; Poppe, Andrew; Wheeler, Patrick (2009-01-01). "Lunar Dust Levitation - Journal of Aerospace Engineering - Vol 22, No 1". Journal of Aerospace Engineering. 22 (1): 2–9. :10.1061/(ASCE)0893-1321(2009)22:1(2). Retrieved 2022-08-08.
  4. Deborah Byrd (Apr 24, 2014). "The zodiacal light, seen from the moon". EarthSky. Retrieved Aug 8, 2022.
  5. Barry, Caela (2025-01-30). "The Moon's Atmosphere". NASA Science. Retrieved 2025-03-07.
  6. Williams, David R. "Moon Fact Sheet". NASA. Retrieved 16 November 2016.
  7. Globus, Ruth (1977). "Chapter 5, Appendix J: Impact Upon Lunar Atmosphere". In Johnson, Richard D.; Holbrow, Charles (eds.). Space Settlements: A Design Study. NASA. NASA SP-413. Archived from the original on 2010-05-31. Retrieved 2016-11-15.
  8. Lucey, Paul; Korotev, Randy L.; Gillis, Jeffrey J.; Taylor, Larry A.; Lawrence, David; et al. (January 2006). "Understanding the Lunar Surface and Space-Moon Interactions". Reviews in Mineralogy and Geochemistry. 60 (1): 83–219. :2006RvMG...60...83L. :10.2138/rmg.2006.60.2.
  9. "Is There an Atmosphere on the Moon?". NASA. 12 April 2013. Archived from the original on 2018-08-08.
  10. Lawson, Stefanie L.; Feldman, William C.; Lawrence, David J.; Moore, Kurt R.; Elphic, Richard C.; et al. (September 2005). "Recent outgassing from the lunar surface: The Lunar Prospector Alpha Particle Spectrometer". . 110 (E9): E09009. :2005JGRE..110.9009L. :10.1029/2005JE002433.

📸 フォトギャラリー

Surveyor 7 observes levitating dust, a phenomenon named Lunar horizon glow
The thin lunar atmosphere is visible on the Moon's surface at sunrise and sunset with the lunar horizon glow[1] and lunar twilight rays, like Earth's crepuscular rays. This Apollo 17 sketch depicts the glow and rays[2] among the general zodiacal light.[3][4]
"Overview of the processes known to occur around the Moon and on its surface, owing to interaction with the solar wind (from Bhardwaj et al. 2015)"
Image of the lunar sodium exosphere over a 7° field of view.
Observations and modelling of the Moon’s sodium tail “spot”.