月の赤道沿い、地球から見て見える側(表側)の最も東端に位置するのがスマイス海です。この地域は、19世紀のイギリス人天文学者ウィリアム・ヘンリー・スマイスにちなんで名付けられました。月の海の中で個人名が冠されたのは、ドイツの探検家アレクサンダー・フォン・フンボルトにちなむフンボルト海と、このスマイス海のわずか2箇所のみという非常に珍しい特徴を持っています。
Key Facts
- 位置: 月の赤道付近、表側の東端
- 直径: 約373km
- 最大深度: 約4km
- 構成物質: 低アルミナ玄武岩(上部インブリア紀およびエラトステネス紀)
- 主な地形: しわ状の尾根、ゴーストクレーター、ドーム、リル(溝)
形成プロセスと地質学的構造
スマイス海の成り立ちは、大規模な天体衝突から始まったと考えられています。もともとは円形の盆地として形成されましたが、その後の度重なる隕石衝突によって、現在の不規則な形状へと変化しました。この盆地自体の形成時期は、月で最も古い時代の一つである前ネクタリス紀に遡りますが、周囲の地形はネクタリス紀に形成されたものです。
その後、火山活動によって溶岩が流入し、盆地の底を埋め尽くしました。地質学的な分析によると、溶岩は南東および西側から北東方向へと流れ、盆地の最も低い部分に蓄積したことが分かっています。そのため、滑らかな海面状の地形は北東部と中央西側の限られたエリアにのみ見られ、その他の部分はアルベド(光の反射率)が高く、起伏の激しい地形となっています。
また、この地域には底面に亀裂が入った「床割れクレーター」が多く存在し、特にハルデーン・クレーターがその代表例です。これは、地表下に注入されたマグマによる押し上げ(アップリフト)が原因であると推測されています。
周辺の地理的特徴と観測データ
スマイス海の周囲には、特徴的な地形が点在しています。北側にはネペル・クレーターがあり、これは辺縁海の南側の縁の一部を構成しています。また、北西方向にはシューベルトおよびシューベルトBクレーターが位置し、南端には玄武岩で満たされた暗い色のケストナー・クレーターが見られます。さらに南西方向には、「バンドフィールド」と呼ばれる顕著な低温領域(コールドスポット)が存在します。
重力測定データ(GRAILミッションなど)によれば、スマイス海の中央部にはマスコン(質量集中領域)が存在することが確認されており、これが地域の重力信号に影響を与えています。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 座標 | 北緯1.3度、東経87.5度 |
| 直径 | 373.97 km |
| 地質時代 | 前ネクタリス紀(盆地)、インブリア紀〜エラトステネス紀(溶岩) |
| 岩石組成 | 低アルミナ玄武岩 |
| 特徴的な地形 | しわ状の尾根、ドーム、リル、床割れクレーター |
Frequently Asked Questions
スマイス海の名前の由来は何ですか?
19世紀に活躍したイギリスの天文学者、ウィリアム・ヘンリー・スマイスにちなんで名付けられました。人物名が付けられた月の海は非常に稀です。
この地域の地質的な特徴は何ですか?
低アルミナ玄武岩で構成されており、上部インブリア紀の玄武岩の上にエラトステネス紀の玄武岩が重なっている構造をしています。
なぜ一部のクレーターの底に亀裂があるのですか?
地下にマグマが注入されたことで地表が押し上げられ、その圧力によってクレーターの底に割れ目が生じたと考えられています。
スマイス海はどのようにして現在の形になりましたか?
最初は巨大な衝突による円形の盆地でしたが、その後の継続的な隕石衝突で形が崩れ、最終的に火山活動による溶岩の流入で現在の姿になりました。
周辺にある注目すべき地形はありますか?
北側のネペル・クレーターや、南端のケストナー・クレーター、そして南西にある低温領域のバンドフィールドなどが挙げられます。
References
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