私たちの足元、数千キロメートルの深くに位置する内核(Inner Core)は、地球の最も中心にある地質学的層です。直接サンプルを採取することは不可能ですが、地震波の解析や磁場の観測を通じて、その驚異的な正体が明らかになってきました。かつては単純な固体の球体と考えられていましたが、最新の研究では、粘性による変化や変形が起こる複雑な構造であることが示唆されています。

Key Facts
- 正体: 主に鉄とニッケルの合金からなる固体球。
- サイズ: 半径は約1,230kmで、地球全体の半径の約20%を占める。
- 温度: 表面温度は約5,700K(約5,430°C)に達し、太陽の表面温度に匹敵する。
- 圧力: 約330〜360ギガパスカルという超高圧環境にある。
- 密度: 中心部で約13.0kg/L、表面で約12.8kg/Lと非常に高密度である。
地球内部における内核の配置と構造
地球の内部は層状になっており、内核はその最深部に位置しています。内核の上には液体の外核があり、さらにその外側にマントルと地殻が広がっています。内核の形状は完全な球ではなく、自転の影響でわずかに扁平な回転楕円体であると考えられています。この扁平率は1/400から1/416の間と推定されており、赤道方向の半径が極方向に比べて約3km長い計算になります。

物理的特性と極限環境
内核の密度は、中心から表面にかけて緩やかに減少しますが、外核との境界では急激に低下します。外核の液体部分は約12.1kg/Lであり、これは内核表面の密度よりも大幅に低くなっています。また、温度については研究者によって意見が分かれており、2002年の推定では5,400K〜5,700Kとされていましたが、2013年の実験では6,230±500Kというさらに高い数値が報告されています。
地震波が明かす内部の複雑性
内核の性質を調べる最大の武器となるのが地震波です。特にP波(縦波)の伝播速度を分析すると、方向によって速度が異なる「異方性」があることが分かりました。1983年の研究では、南北方向の伝播速度が赤道方向よりも約1%速いことが判明しています。
「内核の中の内核」という新説
近年の研究では、内核が単一の層ではない可能性が浮上しています。2002年には、さらに中心部に異なる特性を持つ「最内核(Innermost Inner Core)」が存在するという証拠が提示されました。その後、半径500kmの最内核と、その周囲を囲む600km厚の外層、そして100kmの等方性シェルからなる3層モデルなどが提案されています。2023年の報告では、最内核の原子配列が外層とわずかに異なり、それが地震波の速度差(約4%の減速)を生んでいる可能性が指摘されています。
磁場の生成とダイナミクス
内核と外核の相互作用は、地球を包み込む巨大な磁場を生み出す原動力となっています。外核の液体金属の運動がダイナモ効果を引き起こし、これが地磁気を形成します。最新の知見では、内核の回転速度や表面の変動が年単位で変化している可能性が議論されており、地球内部のダイナミクスは今なお変動し続けています。

内核の誕生と進化の歴史
内核がいつ形成されたかについては、熱力学的モデルと古地磁気学的な分析の両面から研究が進められています。初期のモデルでは、放射性元素の有無によって数億年から20億年ほど前という多様な推定値が出されていました。
しかし、2016年に固体鉄の熱伝導率を直接測定した結果、内核の年齢の上限は42億年である可能性が示されました。また、25億〜28億年前の岩石に含まれる古地磁気の分析からは、当時の磁場が現在のダイポール(双極子)構造に近かったことが分かっており、35億年から20億年前にかけて固体内核が成長したことで、磁場の生成メカニズムが変化したという説が有力視されています。
![Heat flow of the inner Earth, according to S.T. Dye[69] and R. Arevalo.[70]](/images/d8/06/d8064c695e8ac346d984efaa630d8389ebee828036e0a0598afad20f2c5fd756.jpg)
内核の特性まとめ
| 項目 | 推定値・特性 |
|---|---|
| 半径 | 約1,221 〜 1,230 km |
| 体積 | 約76億立方km(地球全体の約0.69%) |
| 主成分 | 鉄・ニッケル合金 |
| 表面温度 | 約5,400 K 〜 6,230 K |
| 圧力 | 330 〜 360 GPa |
| 密度 | 12.8 〜 13.0 kg/L |
Frequently Asked Questions
内核は本当に「固体」なのですか?
基本的には固体であると考えられていますが、2025年時点の最新の研究では、完全に硬い球体ではなく、部分的に変形可能で粘性のある変化を起こしている可能性が示唆されています。
なぜ内核の温度が太陽の表面と同じくらい高いのですか?
地球形成時の熱が残っていることに加え、外核から内核へと凝固が進む際に放出される潜熱や、内部に含まれる放射性元素の崩壊熱などが影響していると考えられています。
内核の存在をどうやって証明しているのですか?
直接見ることはできませんが、地震が発生した際に地球内部を通過する地震波の速度や経路を精密に測定することで、密度や状態(固体か液体か)を逆算して導き出しています。
内核がなくなるとどうなりますか?
内核の成長とそれに伴う外核の対流は、地球の磁場を維持するために不可欠です。もしこの構造が失われれば、地磁気が弱まり、太陽風から大気を守るバリアが機能しなくなる可能性があります。
References
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