ハワード・パースュイヴァント:英国紋章院における特別な役職の歴史

英国の伝統的な紋章制度において、ハワード・パースュイヴァント(Howard Pursuivant of Arms Extraordinary)は非常にユニークな位置づけを持つ役職です。この役職は、王室の紋章官でありながら、ロンドンにある紋章院(College of Arms)の正規メンバーではない「特別紋章官(Officer of Arms Extraordinary)」として定義されています。

一般的にパースュイヴァントとは、紋章官の中でも見習いまたは伝令役を指す職位であり、歴史的に重要な役割を担ってきました。ハワード・パースュイヴァントは、特定の家系の歴史と深く結びついた、極めて限定的な運用がなされた役職です。

主要な事実(Key Facts)

  • 設立時期: 1992年11月、アール・マーシャル(紋章卿)によって創設。
  • 役職の性質: 王室紋章官であるが、紋章院の常任メンバーではない「特別職」。
  • 管轄区域: イングランド、ウェールズ、および北アイルランド。
  • 任命実績: 創設以来、任命された人物はわずか1名のみ。
  • 現状: 1998年以降、この役職は空席となっている。

役職の起源と名称の由来

この役職は、1869年に創設された「グロッソップのハワード男爵(Barony of Howard of Glossop)」という称号に由来しています。1972年にこの称号を継承し、その後1975年にアール・マーシャルおよびノーフォーク公爵となったマイルズ・フィッツアラン=ハワードによって、1992年に正式に設けられました。

興味深い点として、ノーフォーク公爵自身は、母方のボーモント男爵位の方が優先順位が高いため、グロッソップの称号を実際には使用していませんでした。しかし、その家系の歴史を称える形で、この特別な紋章官の役職が誕生したのです。

象徴としての紋章バッジ

1992年の役職創設と同時に、この職位専用のバッジ(紋章)が定められました。そのデザインは、金色の翼に囲まれた銀色の「クロス・クロスレット・フィッチー(下端が尖った十字架)」という構成になっています。

このデザインには深い意味が込められています。十字架の部分はハワード家の紋章とクレスト(兜飾り)から引用されており、翼のデザインはハワード家の別のクレストへのオマージュであるとともに、伝令役としてのパースュイヴァントが持つべき「迅速さ」を象徴しています。

就任者の記録

ハワード・パースュイヴァントとしての任務に就いたのは、歴史上たった一人だけです。1992年の創設直後に任命され、数年間にわたりその職を務めました。

ハワード・パースュイヴァントの就任履歴
就任者名 就任期間 現在の状況
ジョン・ヘンリー・ブルース・ベデルズ 1992年11月30日 〜 1998年 退任
(空席) 1998年 〜 現在 欠員

よくある質問(FAQ)

ハワード・パースュイヴァントと通常の紋章官の違いは何ですか?

最大の違いは、紋章院(College of Arms)の正規メンバーであるかどうかです。ハワード・パースュイヴァントは「特別紋章官(Extraordinary)」であり、王室の任命を受けた紋章官ではありますが、紋章院の運営組織に組み込まれた常任職ではありません。

なぜこの役職は創設されたのですか?

ノーフォーク公爵(アール・マーシャル)が、自身の家系に関連するグロッソップのハワード男爵位を記念し、紋章学的な伝統を維持・顕彰するために創設しました。

バッジに描かれた「翼」にはどのような意味がありますか?

翼はハワード家のクレストに基づいたデザインであると同時に、パースュイヴァントが本来持っていた「伝令(メッセンジャー)」としての迅速な行動力を表現しています。

現在、この役職に就いている人はいますか?

いいえ。1998年にジョン・ヘンリー・ブルース・ベデルズ氏が退任して以来、現在まで後任者は任命されておらず、空席の状態が続いています。