モウブレイ紋章官(Mowbray Herald Extraordinary)の歴史と役割
イギリスの伝統的な紋章制度において、モウブレイ紋章官は非常にユニークな立ち位置を持つ役職でした。もともとは特定の貴族に仕える私的な役割から始まり、後に王室に属する特別な紋章官へと変遷していったこの役職は、イギリスの階級社会と儀礼の歴史を象徴しています。
モウブレイ紋章官の正体とは
モウブレイ紋章官とは、イギリスにおける「紋章官(Officer of Arms)」の一種です。紋章官とは、家紋の管理や儀礼的な手続きを司る専門職のことを指します。この役職の最大の特徴は、王室の官職でありながら、ロンドンにある紋章院(College of Arms)という法人組織の正式なメンバーではなかった点にあります。
このような立場を「特別紋章官(Herald Extraordinary)」と呼び、通常の定員枠外で任命される臨時または特別な役職として運用されていました。
時代と共に変化した役職の性質
ノーフォーク公爵の私的紋章官時代
初期のモウブレイ紋章官は、リチャード2世からヘンリー6世の時代にかけて、ノーフォーク公爵個人の私的な紋章官として活動していました。この時期は、国家の役職というよりも、有力貴族の家系を管理し、その威信を高めるための専門職としての性格が強いものでした。
特別紋章官としての復活と運用
その後、1623年にこの役職が復活すると、その性質は変化し、以降は常に「特別紋章官」として任命されることになります。17世紀以降は、学術的な功績を持つ人物や、紋章院の管理運営に関わる人物が任命される傾向にありました。
例えば、1695年に任命されたロバート・プロットは、就任のわずか2日後に紋章院の登録官(Registrar)に就任しており、行政的な役割と密接に結びついていたことが伺えます。
Key Facts
- 起源:リチャード2世からヘンリー6世の時代、ノーフォーク公爵の私的紋章官として始まった。
- 地位:王室の官職(Officer of the Crown)であるが、紋章院の法人メンバーではない「特別紋章官」であった。
- 復活:1623年に制度が復活し、以降は特別紋章官として運用された。
- 特筆すべき人物:1624年に任命されたウィリアム・ル・ネーヴや、1695年に就任したロバート・プロットなどが知られている。
歴代の就任者一覧
モウブレイ紋章官の歴史は、大きく分けて「ノーフォーク公爵への奉仕時代」と「特別紋章官時代」の二つのフェーズに分かれます。
| 区分 | 氏名 | 就任時期(または時代) |
|---|---|---|
| ノーフォーク公爵の紋章官 | ジョン(John) | 1393年 |
| レイノルド(Reynold) | 1398年 | |
| ジョン・クーソン(John Couson) | 1416年 | |
| ジャイルズ・ウェスター(Giles Waster) | 1420年 | |
| ジョン・ホースリー(John Horsley) | ヘンリー6世時代 | |
| ジャイルズ・フランシーズ(Giles Fraunceys) | 1425年 | |
| ジャイルズ・ステーカー(Giles Steker/Steyker) | 1435年 | |
| ウィリアム・ベイカー(William Baker) | 1455年 | |
| 特別紋章官 | ジョン・ボロウ(John Borough) | 1623年6月 |
| ウィリアム・ル・ネーヴ(William Le Neve) | 1624年6月29日 | |
| フランシス・バーギル(Francis Burghill) | 1677年5月24日 | |
| パトリック・ブキャナン(Patrick Buchanan) | 1681年11月9日 | |
| ロバート・プロット(Robert Plot) | 1695年2月2日 | |
| ローランド・フライス(Rowland Fryth) | 1698年5月17日 | |
| ジョン・ダグデール(John Dugdale) | 1713年6月17日 | |
| ジョセフ・エドモンドソン(Joseph Edmondson) | 1764年1月21日 | |
| エドワード・ハワード=ギボン(Edward Howard-Gibbon) | 1842年4月25日 |
Frequently Asked Questions
モウブレイ紋章官は紋章院の正式なメンバーでしたか?
いいえ、王室に任命された官職ではありましたが、ロンドンの紋章院(College of Arms)という法人組織の構成員ではありませんでした。
この役職はもともとどのような目的で作られましたか?
初期はノーフォーク公爵の私的な紋章官として、公爵家の紋章管理や儀礼を担うために設けられていました。
「特別紋章官(Herald Extraordinary)」とはどういう意味ですか?
通常の紋章官の定員枠とは別に、特定の目的や個人の功績に基づいて任命される特別な役職のことです。
ロバート・プロットはどのような役割を担っていましたか?
1695年にモウブレイ紋章官に任命された直後、紋章院の登録官(Registrar)という重要な行政職に就任しています。
この役職は現在も存在しますか?
歴史的な記録によると、1842年にエドワード・ハワード=ギボンが任命された後、1849年まで存在していましたが、現在は歴史的な役職(Historical)として扱われています。