Diagram of the geological process of subduction showing upper mantle
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上部マントルモホロビチッチ不連続面転移帯かんらん石地震波

上部マントルの構造と組成:地球内部のダイナミズムを解き明かす

🗓 2026年8月10日

地球の表面を覆う薄い皮殻(地殻)のすぐ下には、惑星の体積の多くを占める巨大な岩石層「マントル」が広がっています。中でも上部マントルは、地殻との境界から深さ約670kmまで続く領域であり、プレートの移動や火山活動など、地表のダイナミックな変動を支配する重要な役割を担っています。

この領域は、単なる均質な岩石の塊ではなく、深さに伴う圧力と温度の変化によって、鉱物の構造や物理的性質が劇的に変化する複雑な層状構造を持っています。

Key Facts

  • 範囲:地殻直下(海洋底で約10km、大陸で約35km)から深さ約670kmまで。
  • 主要成分:かんらん石(約55%)と輝石(約35%)を中心とする超マフィック岩(ペリドタイト)。
  • 温度:上端の約900K(627°C)から下端の約1,200K(930°C)まで変化。
  • 物理的状態:極めて高い圧力がかかるため、高温であっても大部分が固体として存在。
  • 役割:粘性流体のようにゆっくりと対流し、地表のプレートテクトニクスを駆動させる。

地球内部の層構造と境界線

地球の内部構造は、地震波の伝播速度の変化を分析することで明らかにされてきました。密度が高まるにつれて地震波の速度が変化するため、組成や物理的性質が急変する地点は「不連続面」として観測されます。

地殻とマントルの境界は、1909年にアンドリヤ・モホロビチッチによって発見されたモホロビチッチ不連続面(モホ面)と呼ばれます。この境界の深さは場所によって異なり、海洋地殻の下では10km未満と薄い一方、大陸地殻の下では平均35km、チベット高原のような地域では最大70kmに達します。

1 = continental crust, 2 = oceanic crust, 3 = upper mantle, 4 = lower mantle, 5+6 = core, A = crust-mantle boundary (Mohorovičić discontinuity)

上部マントル全体の厚さは約640kmであり、これはマントル全体の厚さ(約2,900km)の約20%に相当します。また、深さ220km付近には、P波とS波の速度が急上昇するレーマン不連続面が存在することが知られています。

Cross-section of the Earth, showing the paths of earthquake waves. The paths curve because the different rock types found at different depths change the waves' speed. S waves do not travel through the core

転移帯と鉱物の相転移

深さ410kmから670kmの間は転移帯と呼ばれ、圧力の増加に伴い鉱物の結晶構造が変化(相転移)する領域です。このプロセスにより、岩石の密度が段階的に高まります。

410km不連続面

この境界では、主要成分であるかんらん石($\\alpha$-相)が、より密度の高いワズリー石($\\beta$-相)へと変化します。この不連続面は温度の影響を受けやすく、冷たい沈み込み帯では浅くなり、高温のマントルプルーム付近では深くなる傾向があります。

670km不連続面

上部マントルと下部マントルの境界となる最も複雑な不連続面です。ここではリングウッダイトが分解し、ブリッジマナイトとペリクラーゼというさらに高密度の鉱物へと変化します。この反応は吸熱反応であり、粘性の急激な変化を伴うため、地球全体の対流モデルにおいて極めて重要な役割を果たしています。

Pyrolitic mantle mineralogy as a function of mineral volume fraction and depth variation.

また、深さ520km付近でも、かんらん石やガーネットの相転移による不連続面が予測されており、一部のデータで観測されています。

熱力学的な性質と物質の循環

上部マントルの温度は、下に行くほど上昇し、下端では約1,200Kに達します。地表の基準で考えれば岩石の融点を超えていますが、深くなるほど増大する静水圧(上部の岩石の重みによる圧力)が融点を押し上げるため、マントルはほぼ固体状態で維持されています。

しかし、数百万年という長い時間スケールで見ると、これらの岩石はプラスチックのように変形し、ゆっくりと流動します。外核と地表の温度差によって生じるこのマントル対流により、高温の物質は上昇し、冷却されて重くなった物質は沈み込み帯を通じて深部へと戻っていきます。

Diagram of the geological process of subduction showing upper mantle

化学組成と鉱物学的特徴

上部マントルの主成分はペリドタイトという超マフィック岩です。その組成は主に以下の鉱物で構成されています。

  • かんらん石:約55%
  • 輝石:約35%
  • アルミナ相:5〜10%(浅い場所では斜長石、深くなるとスピネル、さらに深くなるとガーネットへと変化)

化学的には地殻と似ていますが、マグネシウムが多く、ケイ素やアルミニウムが少ないのが特徴です。主要な元素は酸素、マグネシウム、ケイ素、鉄の順に多く含まれています。

上部マントルの主要化学組成(質量パーセント)
化合物 質量%
SiO2(二酸化ケイ素) 44.71
MgO(酸化マグネシウム) 38.73
FeO(酸化鉄) 8.18
Al2O3(酸化アルミニウム) 3.98
CaO(酸化カルシウム) 3.17
その他(Cr2O3, NiO等) < 1.5

地球内部への挑戦:探査の歴史と現状

マントルの直接探査は、地殻が薄い海底で行われるのが一般的です。かつての「プロジェクト・モホール」は困難に直面しましたが、その後の技術革新により掘削深度は飛躍的に向上しました。

日本の深海掘削船「地球(ちきゅう)」は、世界記録を塗り替える深さまで掘削を行い、下北半島沖などでマントル由来の岩石サンプルを採取することに成功しています。

Chikyu drilling ship

また、2023年にはJOIDES Resolution号がアトランティス山塊でペリドタイト主体のコアを回収しました。これらはマグマとして溶け出した後の再結晶ではなく、元の状態に近いマントル岩石である可能性が高く、学術的に極めて貴重な資料となっています。さらに、放射性熱源を用いて岩石を溶かしながら潜航するプローブなどの革新的な探査手法も提案されています。

Frequently Asked Questions

上部マントルは液体(マグマ)なのですか?

いいえ、大部分は固体です。温度は非常に高いですが、同時に凄まじい圧力がかかっているため、岩石が溶けずに固体のままでいられます。ただし、非常に長い時間をかけてゆっくりと流動する性質を持っています。

「モホ面」とは具体的に何のことですか?

地殻とマントルの境界線のことです。この面を境に地震波の速度が急激に変化するため、地球内部の構造を区分する重要な指標となっています。

なぜ深さ410kmや670kmで不連続面ができるのですか?

圧力が増すことで、岩石を構成する鉱物の結晶構造がよりコンパクトで密度の高い形態に変化(相転移)するためです。この密度の変化が地震波の速度に影響を与え、不連続面として観測されます。

マントルの中に水は存在するのでしょうか?

はい、その可能性があります。転移帯に存在するワズリー石やリングウッダイトなどの高圧相鉱物は、結晶構造の中に水を保持できる能力が高いため、転移帯が大量の水を蓄えているという説があります。

上部マントルの岩石をどうやって採取しているのですか?

主に2つの方法があります。一つは「地球」のような掘削船で海底から直接掘り進む方法。もう一つは、キンバーライトなどの火山活動によって、深部の岩石(ゼノリス)が地表まで激しく噴出してきたものを回収する方法です。

References

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1 = continental crust, 2 = oceanic crust, 3 = upper mantle, 4 = lower mantle, 5+6 = core, A = crust-mantle boundary (Mohorovičić discontinuity)
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