地球の深部を構成する主要な物質であり、宇宙の至る所に存在する超マフィク岩(Ultramafic rocks)は、地質学的に極めて特異な性質を持つ火成岩の一種です。一般に「超塩基性岩」とも呼ばれますが、厳密には後者の用語の方が、炭酸岩や超カリウム岩など、鉄やマグネシウムが極端に濃集していない低シリカ岩までを含むより広い概念を指します。
化学的な定義では、二酸化ケイ素(SiO2)の含有量が45%未満であり、酸化マグネシウム(MgO)が通常18%を超え、鉄(FeO)に富み、カリウムが少ないことが特徴です。また、岩石の90%以上が暗色のマフィク鉱物(マグネシウムと鉄を多く含む鉱物)で構成されています。
Key Facts
- 主成分:シリカ含有量45%未満、MgO 18%以上の低シリカ・高マグネシウム岩石。
- 地球での役割:地球のマントルを構成する主要な岩石である。
- 希少な溶岩:地表に出る超マフィク溶岩(コマタイトなど)は、主に太古代などの古い地質時代に限定される。
- 生態系への影響:蛇紋岩由来の土壌は特有の化学組成を持ち、適応した固有植物や多様な地衣類を育む。
- 宇宙的な広がり:火星、水星、木星の衛星イオ、さらには系外惑星TRAPPIST-1bの表面にも存在の証拠がある。
深成岩としての超マフィク岩
地下深くでゆっくりと冷却して形成される深成超マフィク岩は、しばしば巨大な層状貫入岩体として発見されます。ここでは結晶分化作用により、異なる岩相が層状に積み重なる現象が見られます。これらの累積岩は、元のマグマの化学組成をそのまま反映しているわけではない点に注意が必要です。
代表的な種類には、カンラン石が主成分のカンラン岩(Peridotite)、輝石が主成分の輝石岩(Pyroxenite)、そしてカンラン石のみで構成されるダナイトがあります。また、カルシウムに富む斜長石を含むトロクトライトや、さらに斜長石比率の高いアノーソサイトへと移行する場合もあります。層状岩体の底部から上部にかけて、ガブロ(斑れい岩)やノライト(ノルガブロ)が分布することもあり、稀に角閃石岩や金雲母岩が見つかることもあります。



火山活動と地表への出現
超マフィク岩が溶岩として地表に噴出した例は、地球上では非常に稀です。主に太古代から新プロテロゾイック時代までに見られ、現代に近い時代ではほとんど確認されていません。代表例として、ニッケル鉱床の母岩となることが多いコマタイトやピクライト玄武岩が挙げられます。

また、極めて稀なケースとして超マフィク凝灰岩が存在します。これらは石英や長石をほとんど含まず、カンラン石や蛇紋石に富むのが特徴です。南アフリカのダイヤモンド鉱山に見られるキンバーライトのマール(火口丘)などの特殊な堆積物として現れます。
超カリウム超マフィク岩
溶融モデルに基づき別グループに分類されることもありますが、MgOが18%を超える超カリウム岩(ラムプロファイア、ラムプロイト、キンバーライトなど)も超マフィク岩の範疇に含まれます。これらは溶岩流としてではなく、ダイアトリーム(爆裂火口)やマール、岩脈、ラコリスなどの形態で地表付近に到達します。これらは揮発性成分を多く含む少量の溶融体であり、一般的な超マフィク岩とは異なるプロセスでその化学組成を獲得しています。
変成作用と環境への影響
超マフィク岩が水や二酸化炭素(CO2)にさらされると、変成作用によって性質が変化します。流体中のCO2濃度が10%以上の場合はタルク炭酸塩岩へと変化し、10%未満の場合は蛇紋岩化(Serpentinisation)が進み、緑泥石や蛇紋石、角閃石の集合体となります。
このような岩石が風化した「蛇紋岩土壌」は、マグネシウムが豊富である一方、カルシウム、カリウム、リンが極端に不足しています。さらに、植物に毒性を持つクロムやニッケルが高濃度に含まれるため、そこに生息する植物は成長が抑制されたり、特殊な適応を遂げた固有種となったりします。ニューカレドニアの熱帯雨林やマレーシアのキナバル山などで、こうした特異な植生が見られます。
また、地衣類の研究では、超マフィク岩上のコミュニティが隣接するマフィク岩よりも多様であるケースが報告されています。地衣類の風化作用は、蛇紋石鉱物からマグネシウムを完全に除去し、二次鉱物を形成させるなど、生物地球化学的なプロセスを促進します。
宇宙における超マフィク岩の分布
超マフィク岩の存在は地球に留まりません。太陽系内の他の天体や、遠く離れた系外惑星でもその痕跡が確認されています。
- イオ(木星の衛星):表面温度が1,200°Cを超えるホットスポットが観測されており、地下のマグマ温度は1,400°Cに達すると推測されます。この温度域は超マフィクマグマの存在を強く示唆しています。
- 水星:超マフィクな火山岩が存在していると考えられています。
- 火星:未分化の地殻の多くがマフィク岩および超マフィク岩で構成されています。ラドン盆地などで観測される暗色の溶岩流は、分光分析により超マフィクな性質を持つことが確認されています。
- 系外惑星:TRAPPIST-1bの中赤外線観測データは、その表面が超マフィク岩で覆われているモデルと整合しています。
岩石分類のまとめ
| 分類 | SiO2 含有量 | 代表的な岩石(火山岩 / 深成岩) |
|---|---|---|
| 超マフィク岩 | 45% 未満 | コマタイト / カンラン岩 |
| マフィク岩 | 45% ~ 52% | 玄武岩 / 斑れい岩 |
| 中間岩 | 52% ~ 63% | 安山岩 / 閃緑岩 |
| フェルシック岩 | 63% 超 | 流紋岩 / 花崗岩 |
Frequently Asked Questions
超マフィク岩と超塩基性岩の違いは何ですか?
多くの場合、同じ意味で使われますが、超塩基性岩(Ultrabasic)の方がより包括的な用語です。超マフィク岩が主に鉄とマグネシウムに富む岩石を指すのに対し、超塩基性岩には炭酸岩や超カリウム岩など、必ずしも鉄・マグネシウムが極端に多くない低シリカ岩も含まれます。
なぜ超マフィクな溶岩は現代ではほとんど見られないのですか?
超マフィクマグマが地表まで上昇して噴出するには、極めて高い温度が必要です。地球の内部温度が時代とともに低下したため、そのような高温のマグマが地表に到達できるのは、主に地球がまだ非常に熱かった太古代などの初期の時代に限られています。
蛇紋岩土壌に生える植物に特徴があるのはなぜですか?
蛇紋岩土壌はマグネシウムが過剰である一方で、植物の成長に不可欠なカルシウムやカリウムが不足しており、さらに有害なニッケルやクロムが含まれているためです。この過酷な化学環境に適応した植物だけが生存できるため、独特の植生や固有種が現れます。
宇宙の他の天体で超マフィク岩が見つかる意味は何ですか?
超マフィク岩の存在は、その天体の内部温度や分化の程度を示しています。例えば、イオの超高温マグマや火星の地殻組成を分析することで、それらの天体がどのように形成され、どのような熱履歴を辿ったかを知る重要な手がかりとなります。
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