現代のビジネス意思決定に不可欠なデータ提供を担うS&P Global。その巨大な組織基盤は、情報サービスの先駆者であるIHSと、金融データのスペシャリストであるMarkitという2つの強力な企業の統合によって形作られました。本記事では、航空宇宙分野のデータベースから始まり、世界最大級の合併に至るまでの軌跡を辿ります。
主要な事実(Key Facts)
- IHSは1959年にコロラド州デンバーで設立され、当初は航空宇宙エンジニア向けにマイクロフィルム形式で情報を提供していた。
- Markitは2003年に設立され、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の価格提供など金融データに特化して成長した。
- 2016年にIHSとMarkitが合併し、IHS Markitが誕生した。
- 2022年2月28日、S&P GlobalによるIHS Markitの買収が完了した。
- S&P Globalによる買収額は約440億ドルの全株式交換方式であり、当時の年内最大規模の取引となった。
IHSの歩み:専門情報サービスの拡大
IHS(Information Handling Services)の歴史は、1959年にまで遡ります。創業当初は、航空宇宙分野のエンジニアを対象としたマイクロフィルムベースのデータベースを提供していました。その後、同社は積極的な事業拡大を行い、Jane's Information GroupやGlobal Insight、Cambridge Energy Research Associatesなど、多様な情報サービス企業を傘下に収めました。
また、2008年には船舶や所有者にIMO番号(国際海事機関が割り当てる固有識別番号)を付与するFairplay社を買収し、海事分野への展開も強化しました。経営面では、Jerre Stead氏が2006年から2013年、および2015年から合併に至るまでCEOとして指揮を執りました。
Markitの台頭とIHSとの統合
一方のMarkitは、2003年に「Mark-it Partners」として設立されました。同社は、債務不履行時の損失を補償する金融派生商品であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の日次価格提供という、極めて専門性の高い金融データサービスからスタートしました。ジョイントベンチャーの設立や他社の買収を通じて急速に規模を拡大し、2016年にはロンドンを拠点とするMarkitとコロラド州のIHSが合併し、IHS Markitとなりました。
S&P Globalによる最終的な統合と事業再編
2020年11月30日、S&P GlobalとIHS Markitは、約440億ドルという巨額の全株式取引による合併合意を発表しました。Dealogicのデータによれば、これはその年における世界最大の取引となりました。この統合プロセスにおいて、競争制限への懸念を解消するため、一部の事業売却が行われました。
具体的には、2021年9月にPricing and ReimbursementデータセットをGlobalDataへ売却し、同年12月にはBase Chemicals事業をNews Corpへ約2億9,500万ドルで売却する方針を明らかにしました。これらの一連の手続きを経て、2022年2月28日にS&P Globalによる買収が正式に完了しました。
| 年 | 出来事 | 詳細 |
|---|---|---|
| 1959年 | IHS設立 | 航空宇宙向け情報サービスを開始 |
| 2003年 | Markit設立 | 金融データ(CDS価格)提供を開始 |
| 2016年 | IHSとMarkitの合併 | IHS Markitが誕生 |
| 2020年 | 買収合意 | S&P Globalが約440億ドルで買収を発表 |
| 2022年 | 買収完了 | 2月28日にS&P Globalへの統合が完了 |
Frequently Asked Questions
IHSはもともとどのような事業を行っていた会社ですか?
1959年にコロラド州で設立され、当初は航空宇宙エンジニア向けにマイクロフィルム形式のデータベースを提供していました。その後、エネルギーや海事など幅広い分野の情報サービスへと事業を拡大しました。
Markit社が提供していた主なサービスは何でしたか?
2003年の設立当初は、金融市場におけるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の日次価格提供という、専門的な金融データサービスを主軸としていました。
S&P GlobalによるIHS Markitの買収規模はどのくらいでしたか?
約440億ドルの全株式交換方式による取引であり、Dealogicのデータに基づくと、合意が発表された年において世界最大の取引規模となりました。
合併に際して、一部の事業が売却されたのはなぜですか?
競争上の影響(独占禁止法などの懸念)を軽減するためです。具体的には、Base Chemicals事業をNews Corpへ、Pricing and ReimbursementデータセットをGlobalDataへ売却しました。
IHS Markitの統合はいつ完了しましたか?
2022年2月28日に、S&P Globalによる買収手続きが正式に完了しました。