アルゼンチン北西部に位置するサルタ州は、「ラ・リンダ(美しき地)」という愛称にふさわしい、息をのむような絶景と深い歴史を持つ地域です。ボリビア、パラグアイ、チリという3つの国と国境を接し、アンデス山脈の険しい峰々から緑豊かなジャングル、そして広大な平原まで、多様な景観が凝縮されています。
州都サルタを中心としたこの地域は、植民地時代の面影を残す街並みと、先住民の文化、そして近代的な産業が共存しており、訪れる人々を魅了して止みません。

主要な事実(Key Facts)
- 地理的地位: アルゼンチンで6番目に広い面積(155,488 km²)を誇る州。
- 人口: 約144万人(2022年国勢調査)。
- 経済の柱: 農業(タバコ、サトウキビ、ワイン)、鉱業(ウラン、銀)、エネルギー産業(ガス、石油)。
- 気候の多様性: 熱帯雨林から高地の乾燥地帯まで、標高差による劇的な変化がある。
- 文化遺産: インカ帝国のミイラを保管する博物館や、世界的に有名な「雲上の列車」が存在する。
歴史の変遷:先住民から独立まで
スペイン人の到来以前、この地にはカカン語を話すディアギタ族やカルチャキ族などの先住民が多くの部族を形成して暮らしていました。プナ地域にはアタカマ族が、チャコ地域にはウィチ族が定住していました。
16世紀に入るとスペインの征服者が進出し、1582年にエルナンド・デ・レルマによって「サン・フェリペ・デ・サルタ」が建設されました。その後、行政上の重要性が増し、1783年には州都としての地位を確立します。

1813年のサルタの戦いによってスペインからの解放を果たしましたが、その後も周辺地域との境界争いが続きました。特に19世紀には、隣接するフフイ州の分離やボリビアへの領土割譲などを経て、現在の州の形へと至りました。独立戦争の英雄であるマルティン・ミゲル・デ・グエメスは、この地の自由を守るために戦った象徴的な人物として今も敬われています。

ダイナミックな地理と気候
サルタ州の最大の特徴は、標高による環境の劇的な変化です。東部の低地は熱帯半乾燥気候で、夏には47℃に達する猛暑となりますが、アンデス山脈の麓に近づくと、湿った風が上昇して大量の雨を降らせるため、生物多様性に富んだ密林(ユンガス)が形成されています。

さらに西へ進むと、標高3,000〜4,000メートルの高地平原「アルティプラーノ」が広がります。ここでは年間の降水量が極めて少なく、冬にはマイナス15℃を下回ることもある厳しい寒冷乾燥気候となります。また、この地域は地質学的に活動的であり、過去に大規模な地震が発生した歴史があります。1692年の大地震は、現在も毎年9月に開催される「奇跡の主と聖母」の祭りの由来となっています。

地域の景観区分
- 東部低地: サバナのような半乾燥地帯。
- 山麓地帯: 豊かな雨量による雲霧林(ユンガス)。
- 内陸渓谷: 農業に適した亜熱帯高地気候。
- 高地・プナ: 塩湖が点在する寒冷な乾燥地帯。

経済と産業の構造
サルタ州の経済は、天然資源の活用と農業を中心に構成されています。製造業が経済の約20%を占め、特にタルトガルの中心地などで採掘される石油や天然ガスは、パイプラインを通じてブエノスアイレスなどの大都市へ輸送されています。また、イルヤやラ・ポマではウランの採掘が行われています。
農業分野では、タバコやサトウキビが主要な輸出商品となっており、特にサン・マルティン・デ・タバカルの製糖工場は州内最大規模を誇ります。また、カファヤテ周辺のカルチャキ渓谷では、標高の高い土地を活かしたブドウ栽培が盛んで、トルロンテスやマルベックといった高品質なワインが生産されています。

観光のハイライト
州都サルタは、コロニアル様式の建築物や大聖堂が立ち並ぶ美しい街です。特に「高地考古学博物館」では、リュジャイジャコ火山で発見された3体のインカ時代のミイラ(リュジャイジャコの子供たち)が展示されており、世界中から観光客が集まります。

自然とエンジニアリングの融合を体感できるのが「雲上の列車(Tren a las Nubes)」です。この鉄道は険しい峡谷や断崖を越え、標高3,775メートルのサン・アントニオ・デ・ロス・コブレスまで到達します。
![The Train to the Clouds one of the highest railways in the world, taking its way across the high peaks of the Cordillera de los Andes.[15]](/images/9d/3e/9d3ec7dbb511cb0d5b3605d8e9e39656e130c67f81a0947daa38b182174adc36.jpg)
また、赤い岩肌が印象的なカルチャキ渓谷や、カチの山々、そしてロス・カルドネス国立公園などの国立公園では、アンデス山脈ならではの壮大な景色を楽しむことができます。



人口と社会構成
2010年の国勢調査によると、州人口の約6.5%が先住民の血を引いていると回答しており、これはアルゼンチン国内でも高い割合です。特にウィチ族、コジャ族、グアラニー族が多く居住しています。
また、シリア・レバノン系、スペイン系、イタリア系などの移民コミュニティが共存しており、宗教的にも多様です。州都にはシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)やモスク(イスラム教礼拝所)が存在し、多文化共生社会を形成しています。


州の概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 面積 | 155,488 km²(アルゼンチン第6位) |
| 人口 | 1,440,672人(2022年) |
| 主要都市 | サルタ(州都)、サン・ラモン・デ・ラ・ヌエバ・オラン |
| 主要産業 | ワイン、サトウキビ、タバコ、石油・ガス、鉱業 |
| 人間開発指数 (HDI) | 0.844(非常に高い) |
Frequently Asked Questions
サルタ州の気候で注意すべき点は何ですか?
標高によって気候が劇的に異なります。東部の低地では非常に高温になりますが、西部の高地(アルティプラーノ)では冬に氷点下まで下がるため、訪れる地域に合わせた服装の準備が不可欠です。
「雲上の列車」とはどのような観光列車ですか?
アンデス山脈の険しい地形を走る世界有数の高標高鉄道で、最高地点は3,775メートルに達します。深い峡谷や絶壁を通過するスリリングなルートが特徴です。
サルタ州で有名な特産品は何ですか?
特にカファヤテ地域で生産されるワインが有名です。中でも白ワインの「トルロンテス」は、この地域の気候と土壌が生み出す代表的な銘柄として知られています。
高地考古学博物館の見どころは何ですか?
リュジャイジャコ火山で発見された、保存状態が極めて良い3体のインカ時代の子供のミイラが展示されており、当時の文化や生活を知る貴重な資料となっています。
サルタ州の人口構成にはどのような特徴がありますか?
ウィチ族やコジャ族などの先住民の割合が高いほか、中東(シリア・レバノン)や欧州からの移民が多く、多様な民族的・宗教的背景を持つ人々が共生しています。
References
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