100年以上の歴史を持つRedbook(レッドブック)は、アメリカの出版文化において、時代の価値観や読者のニーズを映し出す鏡のような存在でした。当初はイラストを多用したフィクション誌としてスタートし、やがて社会問題に取り組む総合誌へ、そして現代的な女性のライフスタイルを提案する雑誌へと、その姿を大きく変えてきました。
Key Facts
- 創刊: 1903年5月、シカゴの小売業者らによって創刊。
- コンセプトの変遷: イラスト中心の小説誌から、男女向け総合誌、そして女性向けライフスタイル誌へ移行。
- 最大発行部数: 1960年代から80年代にかけて、約500万部まで拡大。
- 社会的貢献: 1954年にベンジャミン・フランクリン賞を受賞。
- 現状: 2018年11/12月号をもって印刷版を終了し、オンライン展開へ移行。
創刊から黄金期へ:フィクション誌としての台頭
1903年、シカゴの商人であるStumer、Rosenthal、Ecksteinの3名によって『The Red Book Illustrated』として産声を上げました。初代編集者のトランブル・ホワイトは、「赤」という色が持つ明るさや快活さを誌面に反映させ、読者に心地よい刺激を与えることを目指しました。初期の誌面は、著名な作家による短編小説や、当時の人気女優たちの写真で彩られていました。
その後、カール・エドウィン・ハリマンが編集に就くと、世界最大のイラスト付きフィクション誌としての地位を確立します。ジャック・ロンドンやエディス・ウォートンといった才能ある作家たちが寄稿し、恋愛、犯罪、ミステリー、そして西部開拓時代や南北戦争といった歴史物語まで、あらゆる層が楽しめるコンテンツを提供しました。

多様化するコンテンツとメディア展開
1929年にMcCall Corporation(マコール社)に買収されると、名称が現在の『Redbook』へと変更されました。編集者のエドウィン・バルマーの下で、誌面は男女双方をターゲットとした総合的な関心事へと幅を広げます。F・スコット・フィッツジェラルドなどの文豪による小説に加え、エレノア・ルーズベルトのような著名人のノンフィクションや、1929年のウォール街大暴落に関する分析記事などが掲載されました。
また、1932年には雑誌の内容をドラマ化したラジオ番組『Redbook Magazine Radio Dramas』を開始し、活字以外のメディアを通じたアプローチにも挑戦しました。1937年には発行部数が100万部に達し、絶頂期を迎えます。
危機の克服と社会的な役割への転換
1940年代後半、テレビの普及により読者が減少するという危機に直面します。1948年には多額の損失を計上しましたが、ウェイド・ハンプトン・ニコルズの就任により、ターゲットを18歳から34歳の「ヤングアダルト」に絞る戦略へと転換しました。これにより1950年には発行部数が200万部にまで回復しました。
この時期のRedbookは、単なる娯楽誌に留まらず、人種差別や核兵器の危険性、マッカーシズム(赤狩り)による被害といった深刻な社会問題を取り上げるようになります。こうした公共サービスへの貢献が認められ、1954年にはベンジャミン・フランクリン賞を受賞しました。
女性の権利とライフスタイルの追求
1950年代後半から、誌面は徐々に女性読者へとシフトしていきます。ロバート・スタインや、その後17年間にわたり編集を務めたセイ・チャスラーの下で、女性の権利擁護に力を入れました。特にチャスラーは、複数の女性誌と連携して男女平等修正案に関する記事を同時に掲載させるという画期的な取り組みを主導しました。
1980年代にHearst Corporation(ハースト社)の傘下に入ると、コンテンツはさらに変化します。伝統的なフィクションを減らし、セレブリティの起用や、エクササイズ、フィットネス、栄養学といった健康面への関心を高めました。家庭と仕事の両立を目指す若い女性を主役に据えた構成へと移行したのです。
1990年代に入ると、ターゲットをさらに「若い母親」へと絞り込み、より専門的なライフスタイル誌としての道を歩みました。しかし、時代の変化とともに印刷媒体の需要は低下し、2018年11/12月号をもって紙の雑誌としての歴史に幕を閉じ、デジタル専用のメディアへと移行しました。
Redbook誌の変遷まとめ
| 時代 | 主なターゲット | コンテンツの傾向 | 主な編集方針 |
|---|---|---|---|
| 1900年代初頭 | 一般読者 | イラスト、短編小説、女優写真 | 明るさと快活さの追求 |
| 1920-30年代 | 男女総合 | 文豪の小説、時事問題、ノンフィクション | 総合的な関心事の提供 |
| 1940-50年代 | ヤングアダルト | 社会問題、政治的議論 | 公共サービスと社会啓蒙 |
| 1960-80年代 | 女性 | 女性の権利、健康、フィットネス | 女性の自立とライフスタイル |
| 1990年代以降 | 若い母親 | 育児、家庭、キャリアの両立 | ターゲットの絞り込みとデジタル化 |
Frequently Asked Questions
Redbook誌は現在も発行されていますか?
印刷版としての発行は2018年11/12月号で終了しています。現在はオンライン専用のメディアとして運営されています。
かつてどのような作家が寄稿していましたか?
ジャック・ロンドン、シンクレア・ルイス、エディス・ウォートン、F・スコット・フィッツジェラルドなど、アメリカ文学を代表する多くの著名な作家たちが作品を寄稿していました。
雑誌の内容が大きく変わった転換点はいつですか?
大きな転換点は2回あります。1回目は1940年代後半にヤングアダルト向けに方向転換し社会問題を取り上げた時期、2回目は1980年代にフィットネスや栄養学など、現代的な女性のライフスタイルに特化した時期です。
社会的な貢献としてどのような活動を行いましたか?
人種差別や核兵器の問題、マッカーシズムへの批判的な記事を掲載したほか、1970年代には多くの女性誌と協力して男女平等修正案を支持するキャンペーンを展開しました。
発行部数のピークはいつ頃でしたか?
セイ・チャスラーが編集を務めていた時期に、発行部数は約500万部にまで達し、絶頂期を迎えました。