中国における近代的な出版文化の礎を築いた商務印書館は、単なる出版社を超え、知識の普及と学術的な発展を牽引してきた象徴的な組織です。人文学や社会科学の深い研究、そして多くの人々にとって親しみ深い「新華字典」の刊行で知られる同社は、激動の時代を生き抜き、現在も北京に拠点を置いて活動を続けています。
Key Facts
- 設立: 1897年2月11日(上海にて)
- 創業者: 夏瑞芳(Xia Ruifang)と3人の友人
- 主要製品: 書籍、新聞、雑誌、辞書(特に新華字典)
- 専門分野: 人文学、社会科学の学術出版および翻訳
- 現在の拠点: 中国・北京
創業から黄金期へ:近代出版の幕開け
1897年、当時26歳だった夏瑞芳と、宝兄弟(宝先恩、宝先昌)を含む3人の友人が上海で商務印書館を設立しました。彼らはプロテスタントのクリスチャンであり、アメリカ長老派教会のミッションプレスで得た経験を活かし、聖書などの出版から事業を開始しました。

20世紀に入ると、同社は日本の教科書出版大手である金剛堂との合弁事業(1903年〜1914年)を通じて、最新の印刷技術や映画、ランタンスライドなどの視覚メディアを導入し、技術的な飛躍を遂げました。また、張元済(Zhang Yuanji)の主導により、新しい教育課程に合わせた教科書や翻訳シリーズを次々と展開。さらに『東方雑誌』や『教育雑誌』、『小説雑誌』といった多様な定期刊行物を創刊し、知識層から一般市民まで幅広い読者層を獲得しました。
メディアの拡大と戦禍の悲劇
商務印書館の挑戦は書籍にとどまりませんでした。1917年には南京にあった米国企業の映画設備を譲り受け、ドキュメンタリー映画の制作に着手しました。これは、当時の外国映画が中国の社会状況を皮肉的に描き、風俗を乱しているという考えに基づき、国産映画によって健全な文化を維持することを目的としたものでした。
しかし、1932年の「1・28事件」の際、日本軍による爆撃が同社の上海・閘北にあった本社を襲いました。この惨劇により、管理事務所や印刷機だけでなく、50万冊以上の蔵書を誇った「東方図書館」が消失。数万冊の希少本を含む膨大な知的資産が失われ、資産の約80%が破壊されるという壊滅的な打撃を受けました。

体制の変遷とグローバル展開
1949年の政権交代に伴い、同社の運営体制は大きく変化しました。1954年には本社を上海から北京へ移転し、西洋で出版された学術作品の翻訳と出版に重点を置くようになります。その後、1993年には中国本土、香港、台湾、シンガポール、マレーシアの各拠点が共同出資し、「商務印書館国際有限公司」を設立しました。
2011年には北京の事務所が有限責任会社となり、中国出版传媒股份有限公司の傘下に入りました。現在は、中国語学習教材や教科書、文化雑誌『漢語世界』などを発行し、言語教育の普及に貢献しています。

組織構造と主要な活動
現在の北京本社では、英語、外語、ユネスコ(教科文)、デジタル出版など、専門的な編集センターを設けて多角的な展開を行っています。また、過去には香港でのオンライン書店運営や、台湾、シンガポール、マレーシアでの独立した法人運営など、広範なネットワークを構築してきました。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 設立年 | 1897年 |
| 創業地 | 上海 |
| 現在の本社 | 北京 |
| 代表的な出版物 | 新華字典、学術書、教育教材 |
| 歴史的転換点 | 1932年の爆撃による資産喪失、1954年の北京移転 |
Frequently Asked Questions
商務印書館はどのような組織ですか?
中国で最初の近代的な出版組織であり、特に人文学、社会科学の学術出版や翻訳、そして有名な「新華字典」の刊行で知られる出版社です。
創業時にどのような影響を受けましたか?
創業者たちはアメリカ長老派教会のミッションプレスで訓練を受けており、その経験とプロテスタントの背景が設立の基盤となりました。
1932年の爆撃でどのような被害が出ましたか?
上海の本社と東方図書館が破壊され、50万冊以上の蔵書(うち数万冊の希少本)を含む資産の約80%が失われました。
日本との関わりはありましたか?
1903年から1914年にかけて、日本の教科書出版社である金剛堂と合弁事業を行い、最新の印刷技術や映像技術を導入しました。
現在はどのような活動をしていますか?
北京に本社を置き、中国語学習教材、辞書、教科書、および文化雑誌『漢語世界』などの出版を続けています。
References
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