歴史の記憶は、文字だけでなく「音」や「映像」という形でも刻まれています。オーストリアにおけるこうした視聴覚的な文化遺産を専門的に保存・管理しているのが、オーストリア・メディアテーク(Österreichische Mediathek)です。ここは、単なる記録保管所ではなく、国の文化的アイデンティティを次世代へ継承するための重要な拠点となっています。
オーストリア・メディアテークの概要と歩み
この機関は1960年、教育省によって「オーストリア・フォノテーク(Österreichische Phonothek)」として設立されました。その後、2001年からはウィーン技術博物館(Technisches Museum Wien)の一部門として運営されています。主な使命は、写真媒体以外の音響および映像資料という、形のない文化遺産を保護することにあります。
収集対象は、オーストリア国内で制作・出版されたメディアだけでなく、オーストリアに関連する国際的な記録まで幅広く網羅しています。また、国内で放送されたテレビやラジオ番組の選別的な記録も行っており、時代の空気をそのままに保存する役割を担っています。

保存の取り組みと専門技術
物理的なメディアは経年劣化を避けられません。そのため、同館ではデジタル化と、デジタル形式での長期保存に特化した技術を導入しています。単にデータを保存するだけでなく、学術的なプロジェクトを通じてアーカイブ内容の精査が行われており、資料の価値を再発見する取り組みが続けられています。
多様なコレクションの内容
19世紀から現代に至るまで、膨大な時代の記録が保管されています。音楽、文学、歴史、政治、科学といった幅広い分野をカバーしており、以下のような多様な形式のメディアが含まれています。
- 音響メディア:即時録音ディスク、シェラック盤、ビニール盤、オーディオテープ、DAT、コンパクトカセット、CDなど。
- 映像メディア:DVDおよび各種ビデオフォーマット、デジタルファイル形式。
特筆すべき主要コレクション
アーカイブ内には、歴史的に価値の高い特別なコレクションが数多く存在します。
- オーストリア科学映画研究所(ÖWF)のコレクション
- オーストリア国会の本会議のライブ録音
- 1955年以降のブルク劇場での初演ライブ録音
- 戦後のラジオ録音をまとめた「Rot-Weiß-Rot(赤・白・赤)」コレクション
- 戦間期のシェラック盤を集めたギュンター・シフター・コレクション
- 著名な芸術家や科学者の遺した資料、および口述歴史(オーラルヒストリー)のインタビュー記録
デジタルアーカイブによる公開と活用
オーストリア・メディアテークは参照アーカイブとしての性格を持ちますが、一部の資料はオンラインで一般公開されており、誰でもアクセス可能です。特に以下のプラットフォームが注目されています。
- 音響年代記:1900年から2008年までのオーストリアの歴史を音で辿る試み。
- journale.at:ラジオ局Ö1が1967年から1999年にかけて放送したサウンド・ラジオ・ジャーナルをフルレングスで提供。
- Österreich am Wort:オーストリアの文化史に関する9,000件以上の音声・映像資料を公開。
主要情報のまとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 設立年 | 1960年(旧称:オーストリア・フォノテーク) |
| 所属 | ウィーン技術博物館(2001年より) |
| 保存対象 | 音響および映像資料(写真媒体を除く) |
| カバー期間 | 19世紀 〜 現代 |
| 主な分野 | 音楽、文学、歴史、政治、科学 |
| 主要技術 | デジタル化およびデジタル長期保存 |
Key Facts
- 文化遺産の保護:オーストリアの視聴覚文化遺産の保存を担う国家的なアーカイブである。
- 広範なメディア形式:シェラック盤から最新のデジタルファイルまで、あらゆる時代の記録媒体を管理している。
- デジタルへの移行:物理的な劣化を防ぐため、高度なデジタル化と長期保存技術に注力している。
- オンラインアクセス:「Österreich am Wort」などのプラットフォームを通じて、数千件の資料を一般に公開している。
Frequently Asked Questions
オーストリア・メディアテークではどのような資料が保存されていますか?
主に19世紀から現代までの音響および映像資料を保存しています。音楽や政治、科学などの分野を網羅し、レコードやテープからCD、DVD、デジタルファイルまで多岐にわたる形式のメディアを収集しています。
写真や映画フィルムも保存対象に含まれますか?
いいえ、写真媒体を用いたフィルムや写真そのものは、この機関の保存責任範囲から除外されています。
一般の人が資料を閲覧することはできますか?
はい。一部の資料はオンラインアーカイブとして公開されており、仮想展示や専用のデータベース(journale.atなど)を通じて、誰でもアクセスして視聴することが可能です。
デジタル化を行う目的は何ですか?
古い録音媒体やビデオテープは時間とともに劣化するため、デジタル形式に変換することで、資料を永続的に保存し、将来にわたって利用可能にするためです。
どのような特別なコレクションがありますか?
国会の議事録やブルク劇場の初演録音、戦後のラジオ記録、さらには著名な科学者や芸術家の遺した個人資料などが含まれています。
References
- "RIS - Gesamte Rechtsvorschrift für Museumsordnung für das Technische Museum Wien mit Österreichischer Mediathek - Bundesrecht konsolidiert, Fassung vom 09.08.2015". bka.gv.at.
- "RIS - Gesamte Rechtsvorschrift für Museumsordnung für das Technische Museum Wien mit Österreichischer Mediathek - Bundesrecht konsolidiert, Fassung vom 09.08.2015". bka.gv.at.
- "The Österreichische Mediathek - Information in English". www.mediathek.at.
- "Mediathek - Die Ö1 Hörfunkjournale 1967 - 1999". journale.at.
- "Österreich am Wort - Österreichische Mediathek". oesterreich-am-wort.at.