地球を構成する岩石や鉱物は、その化学成分によって大きく分類されます。その中でもマフィック(Mafic)、日本語で苦鉄質と呼ばれるグループは、地球の内部構造や火山活動を理解する上で極めて重要な役割を果たしています。一般的に、シリカ(二酸化ケイ素)の含有量が少なく、代わりにマグネシウムや鉄を豊富に含むのが特徴です。
マフィックな物質は、その組成から「フェロマグネシアン(鉄マグネシウム質)」とも呼ばれます。これらは視覚的に暗い色をしており、密度が高いという性質を持つため、地球の海洋地殻の大部分を占めています。対照的に、シリカに富み、色が明るく密度の低い岩石は「フェルシック(珪長質)」と呼ばれ、主に大陸地殻に見られます。
Key Facts
- 主要成分:マグネシウムと鉄が豊富で、シリカ(SiO₂)が比較的少ない。
- 外見的特徴:色が暗く、密度が高い。
- 代表的な岩石:玄武岩、輝緑岩、斑れい岩。
- 主な分布:主に海洋地殻に分布し、地球のマントル組成を反映している。
- 火山活動:粘性が低いため、フェルシックな溶岩に比べて爆発的な噴火が起こりにくい。
マフィックという言葉の成り立ちと歴史
「マフィック(Mafic)」という用語は、1912年にチャールズ・ウィットマン・クロスらによって提唱された造語です。これは、マグネシウム(Magnesium)と鉄(Ferric)の頭文字を組み合わせたものです。
それ以前の分類では、石英や長石などの「サリック(salic)」鉱物と、かんらん石や輝石などの「フェミック(femic)」鉱物に分けられていました。しかし、雲母やアルミニウムに富む角閃石の扱いについて議論があり、最終的にあらゆる鉄マグネシウム質鉱物を包括する言葉として「マフィック」が採用されました。これは、当時提案されていた「フェマグ(femag)」という響きを彼らが好まなかったためでもあります。
鉱物学的視点からの分類
現代の地質学において、マフィックな鉱物とは主に暗色の鉄マグネシウム質鉱物を指します。代表的なものには、かんらん石、輝石、角閃石、黒雲母などが挙げられます。また、カルシウムを多く含む斜長石もこれらの岩石によく含まれています。
国際地質科学連合(IUGS)などの最新の分類体系では、メリライトのような明るい色の鉱物や、ジルコン、アパタイトといった副成分鉱物が、精密な分類のためにマフィックな分画に含まれることがあります。

さらに、地球の深部である下部マントルでは、マグネシウムと鉄に富むケイ酸塩鉱物であるブリッジマナイトが大部分を占めており、地球内部の超苦鉄質(ウルトラマフィック)な性質を裏付けています。
マフィック岩石の化学的・物理的性質
岩石に適用される場合、「マフィック」は主に暗色の火成岩を指す現場用語として使われます。化学的な定義では、シリカ含有量が重量比で45%から55%の範囲にある岩石を指し、これはTAS分類(全アルカリ-シリカ分類)における玄武岩の範囲に相当します。
![Total alkali-silica (TAS) diagram for classification of volcanic rocks (after Le Maitre et al., 2002)[7]](/images/23/b7/23b7e0c3ee539b35cb62af47092611a7ba8176104ba6ed1af1fba63f0cf5b5a0.png)
物理的な特徴として、暗色の鉱物が占める体積割合(色指数)が50%から90%の間にあることが一般的です。これらの岩石は鉄、マグネシウム、カルシウムに富んでおり、アルミニウム、ケイ素、カリウム、ナトリウムに富むフェルシック岩よりも密度が高くなります。
代表的なマフィック岩石には、火山岩である玄武岩、半深成岩である輝緑岩、深成岩である斑れい岩があります。

地質学的な重要性と火山活動への影響
マフィック岩石は、マントルのペリドタイト(かんらん岩)が部分的に溶融することで生成されます。特に、海嶺において上昇するマントル物質が減圧溶融することで玄武岩が作られ、これが海洋地殻の主成分となります。

また、マグマの化学組成は噴火の形態に直接影響を与えます。マフィックなマグマはシリカ含有量が低いため、粘性が低くなります。その結果、水や揮発性成分がスムーズに放出されやすく、フェルシックなマグマによる噴火に比べて、爆発的な噴火になりにくい傾向があります。
組成による岩石の分類まとめ
| 分類 | シリカ含有量 (SiO₂) | 代表的な火山岩 | 代表的な深成岩 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 超苦鉄質 (Ultramafic) | 45%未満 | コマタイト | かんらん岩 | 極めて鉄・マグネシウムに富む |
| 苦鉄質 (Mafic) | 45% ~ 52% | 玄武岩 | 斑れい岩 | 暗色、高密度、海洋地殻の主成分 |
| 中間質 (Intermediate) | 52% ~ 63% | 安山岩 | 閃緑岩 | 苦鉄質と珪長質の中間的な性質 |
| 珪長質 (Felsic) | 63%超 | 流紋岩 | 花崗岩 | 明色、低密度、大陸地殻の主成分 |
Frequently Asked Questions
マフィックとフェルシックの最大の違いは何ですか?
主な違いは化学組成と外見です。マフィックは鉄とマグネシウムに富み、シリカが少なく、色が暗く密度が高いのが特徴です。一方、フェルシックはシリカ、アルミニウム、カリウム、ナトリウムに富み、色が明るく密度が低くなります。
なぜマフィックな溶岩の噴火は爆発しにくいのですか?
シリカ含有量が低いため、マグマの粘性が低くなるからです。粘性が低いと、マグマに含まれるガスや水などの揮発性成分が容易に抜けていくため、圧力が蓄積しにくく、穏やかな噴火になる傾向があります。
マフィック岩石はどこで多く見られますか?
主に地球の海洋地殻に広く分布しています。海嶺などでマントル物質が溶融して生成された玄武岩などがその代表例です。
「苦鉄質」という日本語訳はどういう意味ですか?
「苦」はマグネシウム(苦土)を、「鉄」はそのまま鉄を指しています。つまり、マグネシウムと鉄を多く含む性質であることを意味しています。
マフィックな鉱物にはどのようなものがありますか?
代表的なものに、かんらん石、輝石、角閃石、黒雲母などがあります。これらは一般的に暗い色をしており、岩石の色指数を高める要因となります。
References
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