火山岩の正体を突き止める際、化学組成に基づいた分類は非常に強力なツールとなります。その代表的な手法がTAS分類(Total Alkali Silica)です。これは、岩石に含まれるシリカ(SiO2)の量と、全アルカリ(Na2O + K2O)の合計値の相関関係を用いて、岩石に名称を割り当てる体系的な手法です。

アルカリとシリカの比率は、その岩石がどのような鉱物組成を持つか(規範鉱物学および実際の鉱物学)を決定づける重要な要因であるため、化学分析データから迅速に岩石名を特定できるこの手法は、地質学的な解析において広く活用されています。

Key Facts

  • 定義: 全アルカリ量とシリカ量の関係に基づいた火山岩の分類体系。
  • 適用条件: 鉱物モード分析(顕微鏡による鉱物量の測定)が困難な岩石に適用される。
  • 前処理: 分析データは水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を除外して100%に再計算する必要がある。
  • 限界: すべての火山岩に適用できるわけではなく、ランプロファイアなどの特定の岩石には別途、組織的・鉱物的な基準が必要となる。

TAS分類の運用と注意点

TAS分類を正しく運用するためには、いくつかの前提条件を理解しておく必要があります。まず、この手法はあくまで「化学的な指標」による分類です。もし岩石の鉱物組成を直接分析できる場合は、QAPF図などの鉱物学的な分類スキームを優先することが推奨されます。

また、自然界の岩石は必ずしも単純な分類に当てはまるわけではありません。1937年にJohannsenが指摘したように、岩石分類はあくまで他との比較や記述のための「索引」のような役割を果たす人工的なシステムであり、自然界の複雑さを完全に網羅できるものではないという視点が重要です。

さらに、TAS図だけでは判別がつかない岩石も存在します。そのような場合は、追加の化学分析や組織学的特徴を組み合わせて判断する必要があります。

TAS Diagram. This version is based upon coordinates provided by Le Maitre et al. (2002).

TAS図における岩石の定義と名称

Le Maitreら(2002)による定義に基づき、TAS図上の各領域は以下のような岩石名に割り当てられます。一部の岩石については、さらに詳細な規範鉱物学的な分析によって細分化されます。

主要な火山岩の分類

  • B (玄武岩 / Basalt): 規範鉱物学を用いてさらに細分化する。
  • O1 (玄武岩質安山岩 / Basaltic andesite)
  • O2 (安山岩 / Andesite)
  • O3 (デイサイト / Dacite)
  • R (流紋岩 / Rhyolite)
  • T (粗面岩または粗面デイサイト / Trachyte or trachydacite): 規範鉱物学により決定。
  • Ph (フォノライト / Phonolite)
  • Pc (ピクロ玄武岩 / Picrobasalt)

アルカリ性の高い岩石と変種

以下の分類では、ナトリウム(Na2O - 2)とカリウム(K2O)の比率によって、さらに「ソーダ質」と「カリウム質」に分けられます。

  • S1 (粗面玄武岩 / Trachybasalt): ソーダ質はハワイアイト、カリウム質はカリウム粗面玄武岩。
  • S2 (玄武岩質粗面安山岩 / Basaltic trachyandesite): ソーダ質はムギアライト、カリウム質はショショナイト。
  • S3 (粗面安山岩 / Trachyandesite): ソーダ質はベンモライト、カリウム質はラタイト。

特殊な組成を持つ岩石

  • U1 (バサナイトまたはテフライト / Basanite or tephrite): 規範鉱物学により決定。
  • U2 (フォノテフライト / Phonotephrite)
  • U3 (テフリフォノライト / Tephriphonolite)
  • F (フォイド岩 / Foidite): 主な長石様鉱物に基づいて命名。メリリタイトもこの領域に含まれるが、別途化学的基準で区別する。

TAS分類まとめ表

TAS分類における主要岩石の識別基準
分類コード 岩石名(日本語) 補足・細分化基準
B 玄武岩 規範鉱物学による細分化
O1〜O3 玄武岩質安山岩〜デイサイト シリカ含有量の増加に伴い変化
R 流紋岩 高シリカ組成
S1〜S3 粗面玄武岩〜粗面安山岩 Na2OとK2Oの比率で変種を決定
F フォイド岩 支配的な長石様鉱物で命名

Frequently Asked Questions

TAS分類を適用する前に必要なデータ処理は何ですか?

化学分析の結果から、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を除いた成分のみを用いて、合計が100%になるように再計算(正規化)する必要があります。

どのような場合にTAS分類ではなくQAPF図を使用すべきですか?

岩石の鉱物モード分析(どの鉱物がどれくらいの割合で含まれているか)が可能な場合は、化学組成に基づくTAS分類よりも、鉱物学的なQAPF図などのスキームを使用することが適切です。

「ソーダ質」と「カリウム質」の化学的な違いは何ですか?

一般的に、(Na2O - 2) が K2O より多ければソーダ質、(Na2O - 2) が K2O より少なければカリウム質と定義されます。

TAS分類で名前を付けられない岩石はありますか?

はい。すべての火山岩に適用できるわけではありません。例えばランプロファイアなどの岩石は、TAS図だけでは分類できず、組織的な特徴や追加の化学的基準を用いる必要があります。

フォイド岩(F)の領域にある岩石をさらに詳しく分類するにはどうすればよいですか?

可能な限り、その岩石の中で支配的な長石様鉱物(feldspathoid)に基づいて命名します。また、メリリタイトなどの特定の岩石は、追加の化学的基準を用いて区別します。