末日聖徒イエス・キリスト教会とモルモン教の信仰体系
一般的に「モルモン教」として知られる信仰体系は、19世紀にジョセフ・スミスが提唱し、その後ブリガム・ヤングやジェームズ・ストレンジらによって発展した神学に基づいています。信奉者の多くは自らを「末日聖徒(Latter Day Saints)」と呼び、伝統的なキリスト教との間で複雑かつ密接な関係を築いています。
彼らはイエス・キリストの贖罪や復活、再臨といった核心的な教義において伝統的なキリスト教と共通の視点を持っていますが、神の性質に関する定義においては、4世紀のニカイア信条が定める三位一体説とは明確に異なる独自の解釈を採用しています。
Key Facts
- 信仰の基礎:ジョセフ・スミスによる「回復」の教えに基づき、古代のキリスト教会を再建したと信じている。
- 聖典の構成:聖書に加え、「モルモン書」「教義と聖約」「s貴重な真珠」などの追加聖典を重視する。
- 神格の定義:父なる神(エロヒム)、子なる神(イエス・キリスト/エホバ)、聖霊という、個別の存在からなる神格を信じている。
- 人間観:人間は神の霊的な子であり、潜在的に神のような存在になれるという教えを持つ。
- 伝道活動:世界中に407のミッションと約7万人の宣教師を配置する大規模な伝道体制を敷いている。
「回復」の概念と歴史的背景
末日聖徒の信仰において中心となるのが「回復(Restoration)」という考え方です。彼らは、イエスの昇天後、キリスト教に「大いなる背教(Great Apostasy)」が起こったと考えています。これは、ギリシャ哲学などの混入による教義の変質や、使徒たちの殉教によって、教会を運営するための正当な「神権(priesthood authority)」が地上から失われたことを指します。
ジョセフ・スミスは、キリストから直接啓示を受け、既存のどの教会にも属さず、本来の教会を再建するよう命じられたと主張しました。彼らによれば、ペテロやヤコブ、ヨハネ、バプテスマのヨハネといった天使たちがスミスらの前に現れ、失われていた神権の権能を授けたとされています。これにより、スミスとその後継者たちは、神からの啓示を受けて教会を導く現代の預言者として位置づけられています。
神学的な特徴と伝統的キリスト教との違い
末日聖徒の神学は、19世紀のプロテスタント的な要素(バプテスマの必要性や家族の重視など)を共有しつつも、独自の方向へ進化しました。特に「三位一体」の解釈において顕著な違いが見られます。
神格(Godhead)の捉え方
伝統的なキリスト教が、一つの本質を持つ三位一体を説くのに対し、末日聖徒は以下の三者を個別の存在として定義します。
- 父なる神(エロヒム):永遠の父。
- イエス・キリスト(エホバ):肉体を持って生まれた唯一の御子であり、世界の救い主。
- 聖霊:霊的な存在であり、同時に多くの場所で影響を与えることができる。
人間の本質と可能性
また、人間の本質は神と共にある永遠のものと考えられており、人間は神の霊的な子として、将来的に神のような存在へと成長する可能性を秘めていると説いています。
組織と実践
最大派閥である末日聖徒イエス・キリスト教会は、伝統的なキリスト教との共通点、特に「キリストこそが世界の救い主であり、悔い改める者が天国に戻れるよう罪を贖った」という点に重点を置いています。一方で、独自の儀式を執り行い、他教派によるバプテスマは認めないという厳格な姿勢も持っています。
なお、すべての末日聖徒系団体が同じ教義を共有しているわけではありません。例えば、第2位の規模を持つ「キリスト共同体(Community of Christ)」などは、伝統的なプロテスタント神学に近い三位一体説を採用しており、後年に発展した独自の神学的展開を拒否しています。
| 比較項目 | 伝統的キリスト教(主流派) | 末日聖徒(LDS) |
|---|---|---|
| 神の概念 | 三位一体(一つの本質) | 神格(個別の三存在) |
| 聖典 | 聖書 | 聖書 + モルモン書等 |
| 教会の歴史 | 使徒継承による継続 | 大いなる背教後の「回復」 |
| 人間の可能性 | 神の被造物 | 神の霊的な子(神への潜在性) |
Frequently Asked Questions
「末日聖徒」とはどういう意味ですか?
新約聖書において、バプテスマというキリスト教の契約を結んだ人々を「聖徒」と呼びます。「末日」という言葉は、キリストの再臨前の時代に生きているという教義に基づいています。つまり、古代の教会が回復された時代に生きる信徒であることを意味しています。
モルモン教はキリスト教に含まれますか?
学術的な視点では、キリスト教の一形態でありながら、伝統的なキリスト教とは十分に異なる新しい宗教伝統を形成していると見なされています。信徒自身はキリスト教の一員であると考えていますが、一部のキリスト教徒(特に福音派)は、その神学的な相違から「非キリスト教」と見なす場合があります。
どのような聖典を使用していますか?
聖書を聖典として認めていますが、それに加えて「モルモン書」、「教義と聖約」、「貴重な真珠」という独自の聖典を採用しています。ただし、宗派によって使用する書物が異なる場合があります。
伝道活動はどのように行われていますか?
末日聖徒イエス・キリスト教会は非常に組織的な伝道プログラムを持っており、世界中に407のミッションと15のトレーニングセンターを設置し、約7万人の宣教師が活動しています。
ジョセフ・スミスはどのような役割を果たしましたか?
彼は神から直接啓示を受けた現代の預言者とされており、失われていた神権を回復し、イエス・キリストが本来教えた原始の教会を地上に再建した人物とされています。