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ISO/IEC 15693規格の概要と非接触ICカードの通信メカニズム

🗓 2026年8月13日

現代の物流管理やセキュリティシステムにおいて、無線でデータをやり取りするRFID技術は欠かせない存在です。その中でもISO/IEC 15693は、「近接(Vicinity)」オブジェクトを対象とした国際規格であり、一般的な近接カード(Proximity cards)よりも広い通信距離を実現することを目的として設計されています。

この規格に基づいたカードやデバイスは、自前で電源を持たず、リーダーから無線経由で供給される電力を利用して動作します。これにより、電池交換不要なタグとしての運用が可能になります。

Key Facts

  • 動作周波数: 13.56 MHz
  • 最大読取距離: 最大1メートル
  • 磁界強度: 0.15 〜 5 A/m(近接カードより低い強度で動作可能)
  • 主な特徴: 通信距離を優先し、RF速度はISO/IEC 14443などの規格より低く設定されている

規格の構成と物理的特性

ISO/IEC 15693は、ISO/IEC JTC 1/SC 17によって策定されており、以下の3つのパートで構成されています。

  • Part 1 (ISO/IEC 15693-1:2018): 物理的な特性に関する規定
  • Part 2 (ISO/IEC 15693-2:2019): エアインターフェースおよび初期化手順
  • Part 3 (ISO/IEC 15693-3:2026): アンチコリジョン(衝突防止)および伝送プロトコル

通信プロトコルの詳細

リーダーからカードへの通信

リーダーからカードへのデータ送信には、変調指数10%または100%の振幅偏移変調(ASK)が採用されています。データコーディングには、パルス位置変調(PPM)が用いられ、以下の2つのモードが存在します。

  • 1-out-of-4 PPM: 75.52 μsのシンボル時間内に9.44 μsの休止時間を配置し、2ビットを表現します。ビットレートは26.48 kbpsで、最下位ビット(LSB)から送信されます。
  • 1-out-of-256 PPM: 4.833 msのシンボル時間内に9.44 μsの休止時間を配置し、8ビットを表現します。ビットレートは1.65 kbpsとなります。

カードからリーダーへの通信

カード側からリーダーへデータを返す際は、負荷変調(Load Modulation)を用いたサブキャリア通信が行われます。これには2つの方式があります。

振幅偏移変調(ASK)方式

423.75 kHzのサブキャリアを用い、変調指数100%で通信します。データレートは低速(6.62 kbps)と高速(26.48 kbps)の2種類があり、データはマンチェスター符号でエンコードされます。フレームの開始と終了は、特定のパルス数と無変調時間を組み合わせたコード違反によって識別されます。

周波数偏移変調(FSK)方式

423.75 kHzと484.25 kHzの2つのサブキャリアを切り替えることでデータを伝送します。データレートは低速(6.67 kbps)と高速(26.69 kbps)があり、こちらもマンチェスター符号が使用されます。フレームの境界は、特定の周波数のパルス列によって定義されます。

主要な実装例とメーカーコード

ISO/IEC 15693インターフェースは、単なるIDタグだけでなく、多様なデバイスに組み込まれています。例えば、STMicroelectronicsやNXPなどのメーカーが提供するEEPROMや、Texas Instrumentsが提供するマイクロコントローラがあります。後者の場合、リーダーの磁界のみで駆動し、温度センサーの値を無線で送信するといった高度な機能を実現しています。

また、デバイスの識別を容易にするため、ISO/IEC 7816-6に基づいたメーカーコードが割り当てられています。以下に代表的な例をまとめます。

代表的なメーカーコード一覧
コード メーカー名
0x03 日立製作所 日本
0x04 NXP Semiconductors ドイツ
0x08 富士通 日本
0x0A NEC 日本
0x0C 東芝 日本
0x0D 三菱電機 日本
0x1A ソニー 日本
0x20 ルネサス エレクトロニクス 日本
0x41 ルネサス エレクトロニクス 日本

Frequently Asked Questions

ISO/IEC 15693とISO/IEC 14443の違いは何ですか?

最大の違いは通信距離と速度です。ISO/IEC 15693は「近接(Vicinity)」規格であり、最大1メートルという比較的長い距離での読み取りを可能にしていますが、その分データ転送速度はISO/IEC 14443よりも低く設定されています。

カードに電池は必要ですか?

いいえ、必要ありません。リーダーが発する電磁界から電力を得る「パッシブ方式」を採用しているため、カード自体に電源を搭載することなく動作します。

どのような製品に利用されていますか?

EEPROMを搭載したRFIDタグや、リーダーの電力で動作して温度などの情報を送信する小型マイクロコントローラ搭載デバイスなどに利用されています。

マンチェスター符号とは何ですか?

データの「0」と「1」を電圧や周波数の変化(遷移)で表現する符号化方式です。これにより、受信側でクロックの同期を取りやすくなり、通信の信頼性が向上します。

メーカーコードは何のためにありますか?

ICチップを製造したメーカーを識別するためのものです。これにより、リーダー側でどのメーカーのチップが使用されているかを判断し、適切な処理を行うことができます。

References

  1. Hu, Jian-Guo; Mei, Wen-Zhuo; Wu, Jin; Li, Jia-Wei; Wang, De-Ming (August 29, 2023). "A Fully Integrated RFID Reader SoC". Micromachines. 14 (9): 1691. :10.3390/mi14091691.  2072-666X.  10534657.  37763854.