私たちの日常生活で頻繁に利用されている非接触ICカードの多くは、ISO/IEC 14443という国際規格に基づいています。この規格は、カードリーダーとICカードの間で無線通信を行うための厳格なルールを定めたもので、スムーズで安全なデータ交換を実現しています。

本記事では、この規格を策定した組織から、通信の核心となるType AとType Bの技術的な差異までを分かりやすく解説します。

Key Facts

  • 動作周波数:13.56 MHz(高周波RFID)を使用。
  • 通信速度:双方向ともに106 kbpsの半二重通信。
  • 構成要素:リーダー側のPCDと、カード側のPICCで構成される。
  • 主要な分類:変調や符号化方式が異なる「Type A」と「Type B」が存在する。
  • 共通点:伝送プロトコル(Part 4)は両タイプで共通。

規格の構成と策定組織

ISO/IEC 14443は、ISO/IEC JTC 1(合同技術委員会1)のSC 17(小委員会17)およびWG 8(ワーキンググループ8)によって開発されました。この規格は、機能ごとに以下の4つのパートに分かれています。

  • Part 1:物理的な特性に関する規定。
  • Part 2:無線周波数の電力および信号インターフェース。
  • Part 3:初期化およびアンチコリジョン(衝突防止)の手順。
  • Part 4:データ伝送プロトコル。

通信の基本構造:PCDとPICC

この規格では、通信に関わるデバイスを明確に定義しています。カードリーダーに相当するデバイスをPCD(Proximity Coupling Device)、ICカード側のチップをPICC(Proximity Integrated Circuit Card)と呼びます。

両者は13.56 MHzの周波数を用いて通信し、データのやり取りは一度に一方のみが行う「半二重通信」方式で制御されています。

Type AとType Bの技術的な違い

ISO/IEC 14443には、大きく分けてType AType Bの2種類があります。これらはどちらも同じ周波数を使用しますが、リーダーからカードへ、およびカードからリーダーへデータを送る際の「変調方式」と「符号化方式」が異なります。

Type Aの通信方式

Type Aでは、リーダーからカードへの通信にASK(振幅偏移変調)とModified Miller符号化を採用しています。一方、カードからリーダーへ戻る信号には、OOK(オンオフキーイング)とマンチェスター符号が用いられます。

Type Bの通信方式

Type Bでは、リーダーからカードへの通信にASKとNRZ符号化を使用します。カードからリーダーへの通信には、BPSK(二位相偏移変調)とNRZ-L符号化が採用されており、Type Aとは異なるアプローチでデータを伝送します。

なお、カード側からの送信データは、リーダーが提供する搬送波周波数の16分の1にあたる847.5 kHzのサブキャリアで負荷変調されます。

共通の伝送プロトコル

変調方式こそ異なりますが、Part 4で定義されている伝送プロトコルはType A・B共通です。これにより、以下のような高度なデータ交換メカニズムが実現しています。

  • データブロックチェイニング:複数のデータブロックを連続して転送する仕組み。
  • 待ち時間延長:処理に時間を要する場合に通信時間を延長する機能。
  • マルチアクティベーション:複数のカードを効率的に扱うための制御。

仕様比較まとめ

ISO/IEC 14443 Type A vs Type B 仕様比較
項目 Type A Type B
動作周波数 13.56 MHz 13.56 MHz
リーダー→カード(変調) 100% ASK 10% ASK
リーダー→カード(符号化) Modified Miller NRZ
カード→リーダー(変調) OOK (負荷変調) BPSK (負荷変調)
カード→リーダー(符号化) Manchester NRZ-L
サブキャリア周波数 847.5 kHz 847.5 kHz
データ転送速度 106 kbps 106 kbps

Frequently Asked Questions

PCDとPICCとは何のことですか?

PCDは「Proximity Coupling Device」の略で、ICカードを読み取るリーダー端末を指します。PICCは「Proximity Integrated Circuit Card」の略で、読み取り対象となるICカード側のチップを指します。

Type AとType Bの最大の違いは何ですか?

主に、無線信号をどのように変化させてデータを表現するかという「変調方式」と、データをビット列に変換する「符号化方式」が異なります。これにより、物理層での通信手順に違いが生じます。

通信速度に違いはありますか?

いいえ、Type AとType Bのどちらにおいても、基本のデータ転送速度は双方向ともに106 kbpsで共通しています。

伝送プロトコルはタイプごとに異なりますか?

いいえ、伝送プロトコル(ISO/IEC 14443-4)は共通です。データブロックの連鎖や待ち時間の延長といった制御メカニズムは、どちらのタイプでも同じルールで動作します。

サブキャリア周波数はどのように決まりますか?

カードからリーダーへ送信される信号に使用されるサブキャリア周波数は、リーダーが提供する搬送波周波数(13.56 MHz)の16分の1である847.5 kHzに設定されています。