予期せぬ災害やシステム障害などの破壊的な事象が発生した際、組織が重要な機能を維持し、迅速に回復させるための世界的な基準となるのがISO 22301です。この規格は、事業継続マネジメントシステム(BCMS:Business Continuity Management System)を計画し、実装・運用するための具体的な要求事項を定めています。
BCMSを導入することで、組織は単に事後対応に追われるのではなく、リスクの発生確率を低減させ、万が一の事態に備えた体制を構築し、効率的な復旧プロセスを実現することが可能になります。この規格は、組織の規模や業種、形態を問わず、あらゆる組織に適用できるよう汎用的に設計されています。
Key Facts
- 目的: 破壊的な事象に対する保護、発生確率の低減、準備、対応、および復旧のための管理体制を構築すること。
- 適用範囲: 組織のタイプ、規模、性質に関わらず、あらゆる組織またはその一部に適用可能。
- 構造: Annex SLに基づくハイレベル構造を採用しており、他のISO規格(ISO 9001やISO/IEC 27001など)と統合しやすい。
- 認証: 要求事項を満たし、正式な審査を受けることで、第三者機関による認定認証を取得できる。
BCMSの構造と統合的なアプローチ
ISO 22301は、管理システムの標準的な記述形式である「Annex SL」に従い、10の主要な条項で構成されています。この共通構造を採用しているため、品質管理のISO 9001や情報セキュリティのISO/IEC 27001といった他のマネジメントシステムと併せて導入することが容易です。これにより、組織は重複する業務を排除し、コスト削減と運用効率の向上を図ることができます。
ISO 22301を構成する10の条項
- 適用範囲
- 引用規格
- 用語および定義
- 組織の状況
- リーダーシップ
- 計画
- 支援
- 運用
- パフォーマンス評価
- 改善
これらの条項を通じて、組織は現状の分析からリーダーシップの確立、具体的な運用計画、そして継続的な改善というサイクルを回すことが求められます。
関連規格とエコシステム
ISO 22301は単独で機能するものではなく、事業継続管理に関する一連の規格や技術仕様書(TS)の中心的な役割を担っています。目的やニーズに応じて、以下のような補完的なガイドラインを活用することで、より詳細な対策を講じることが可能です。
| 規格番号 | 主な内容・目的 |
|---|---|
| ISO 22300 | セキュリティとレジリエンスに関する用語集 |
| ISO 22313 | ISO 22301の運用に関する実装ガイドライン |
| ISO/TS 22317 | 事業影響分析(BIA)のためのガイドライン |
| ISO/TS 22318 | サプライチェーンの継続性に関するガイドライン |
| ISO/TS 22330 | 事業継続における人的側面のガイドライン |
| ISO/TS 22331 | 事業継続戦略に関するガイドライン |
| ISO/TS 22332 | 事業継続計画および手順書の策定ガイドライン |
| ISO/IEC/TS 17021-6 | BCMSの監査および認証を行う機関への能力要求事項 |
規格の変遷と歴史
本規格は、もともと社会安全(Societal Security)を専門とする技術委員会 ISO/TC 223によって策定され、2012年5月に初版が発行されました。この初版は、マネジメントシステム規格の新しい記述形式であるAnnex SLを全面的に採用した最初のISO規格となりました。
その後、責任部署がISO/TC 292(セキュリティとレジリエンス)に移管され、規格の改訂が行われました。2019年10月31日に発行された第2版では、内容の重複を排除し、テキストをリファクタリング(再構成)することで、より明確で使いやすい構成へと改善されています。
Frequently Asked Questions
ISO 22301を導入する最大のメリットは何ですか?
最大のメリットは、予期せぬ中断事象が発生した際に、組織が重要な業務を維持し、迅速に復旧できる体制を構築できることです。また、認証を取得することで、社内外のステークホルダーに対して、事業継続管理におけるベストプラクティスを遵守していることを客観的に証明でき、信頼性の向上につながります。
どのような組織がこの規格を利用できますか?
組織の形態、規模、業種に関わらず、あらゆる組織が適用可能です。大企業だけでなく中小企業や公的機関でも利用でき、組織全体だけでなく、特定の部門や事業単位に限定して適用することも可能です。
他のISO規格(ISO 9001など)と同時に導入することは可能ですか?
はい、可能です。ISO 22301はAnnex SLという共通のハイレベル構造を採用しているため、他のマネジメントシステム規格と非常に親和性が高く、統合して運用することで効率的な管理が実現できます。
2012年版と2019年版の主な違いは何ですか?
2019年版(第2版)では、規格の根本的な要求事項に変更を加えるのではなく、主にテキストの整理が行われました。重複した表現を削除し、構成をリファクタリングすることで、読みやすさと理解しやすさが向上しています。
BCMSの認証を受けるにはどうすればよいですか?
まずISO 22301の要求事項に基づいたBCMSを構築・運用し、その有効性を確認します。その後、認定を受けた第三者認証機関による正式な審査(アセスメント)を受け、適合していると認められることで認証を取得できます。
References
- "ISO 22301:2019". ISO. 5 June 2023.
- "What is ISO 22301? Learn the Basics". 27001Academy.
- Howard, Casey (August 6, 2018). "What is business continuity/ISO 22301 and why do you need it?". IT Governance UK Blog.
- "What is ISO 22301 (International Organization of Standardization standard 22301)? - Definition from WhatIs.com". SearchDisasterRecovery.
- Tangen, Stefan; Austin, Dave (June 2012). "Business continuity: ISO 22301 when things go seriously wrong" (PDF). ISO Focus+. 3 (6): 22–23. 2226-1095. 834139006.
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- Gasiorowski-Denis, Elizabeth (5 June 2012). "ISO publishes new standard for business continuity management". ISO.
- "ISO 22313:2020". ISO.