緊急事態が発生した際、すべての人が等しく安全を確保できるわけではありません。特に、身体的・社会的な要因によってリスクが高まる人々への配慮は、地域社会全体のレジリエンス(回復力)を高める上で不可欠です。ISO 22395:2018は、こうした「脆弱な状況にある人々」を適切に支援するための国際的な指針として、2018年10月に国際標準化機構(ISO)から発行されました。
本規格は、ISO/TC 292(セキュリティおよびレジリエンス)によって策定された任意適用のガイドラインであり、災害時の支援体制を構築するための実践的なアプローチを提示しています。
Key Facts
- 正式名称:ISO 22395:2018 Security and resilience -- Community resilience -- Guidelines for supporting vulnerable persons in an emergency
- 目的:緊急時に脆弱な状況にある人々を特定し、適切な支援を提供するための指針を提供すること
- アプローチ:従来の限定的な定義を超え、社会的孤立や言語障壁、経済的困窮などを含む包括的な視点での支援を推奨
- 主な内容:脆弱性の特定、コミュニケーション手法、避難・輸送・医療などの具体的支援、および計画の継続的改善
脆弱性の定義を広げる:包括的な支援の必要性
従来、災害支援における「弱者」とは、主に子ども、高齢者、障がいを持つ方々を指していました。しかし、現代のコミュニティレジリエンスにおいては、より広い視点での定義が求められています。
ISO 22395では、身体的な特性だけでなく、以下のような社会的・環境的な要因による脆弱性にも注目しています。
- 社会的に孤立している人々
- 現地の言語スキルが不足している人々
- 経済的な困窮状態にある人々
- 社会的に疎外された人々
このように、多様なリスク要因を認識することで、誰一人取り残さない実効性のある救助・支援計画の策定が可能になります。
ISO 22395が提供する具体的な指針と構成
本規格は、単なる概念論ではなく、計画の策定から実行、評価までをカバーする実務的な構成となっています。主な構成要素は以下の通りです。
1. 脆弱な人々の特定とコミュニケーション
まず、緊急時においてどのような人々がリスクにさらされるかを正確に把握するプロセスを定義します。また、パニック状態や言語の壁がある状況下で、どのように情報を伝え、意思疎通を図るべきかというコミュニケーション戦略について推奨事項を提示しています。
2. 実践的な支援策の展開
被災地からの安全な移動(輸送)や、適切な避難所の確保、必要な医療サービスの提供、さらには経済的なサポートなど、具体的かつ実用的なヒントと戦略が盛り込まれています。
3. 計画の運用と継続的改善
一度計画を立てて終わりにするのではなく、実施した支援プロセスを評価し、得られた教訓を次回の計画に反映させる「レビューと改善」のサイクルを重視しています。
コミュニティレジリエンスを支える関連規格
ISO 22395は単独で機能するものではなく、コミュニティ全体の回復力を高めるための一連の規格群の一部です。連携して活用することで、より強固な防災体制を構築できます。
| 規格番号 | 焦点となる内容 |
|---|---|
| ISO 22315:2015 | 大規模避難の計画に関するガイドライン |
| ISO 22319:2017 | 自発的なボランティアの関与計画 |
| ISO 22392:2020 | ピアレビュー(相互審査)の実施指針 |
| ISO 22396:2020 | 組織間での情報交換に関するガイドライン |
Frequently Asked Questions
ISO 22395は強制的に適用しなければならないルールですか?
いいえ。本規格は「ガイドライン」であり、任意適用の標準です。組織や自治体が自らの状況に合わせて、支援計画を最適化するための参照資料として活用することが想定されています。
この規格で定義される「脆弱な人々」とは具体的に誰を指しますか?
高齢者や子ども、障がい者といった伝統的な定義に加え、言語の壁がある外国人、経済的に困窮している方、社会的に孤立している方など、緊急時に自力での対処が困難な状況にあるすべての人々を含みます。
計画を策定した後、どのようにしてその有効性を確認すればよいですか?
ISO 22395では、実施した支援プロセスを評価し、レビューを行うことを推奨しています。実際の運用結果や訓練での課題を分析し、継続的に計画を改善していくサイクルを組み込むことが重要です。
避難以外のどのような支援について記載されていますか?
物理的な避難や輸送だけでなく、避難所での生活支援、必要な医療サービスの提供、金銭的なサポート、および被災者やステークホルダーとの効果的なコミュニケーション方法などが含まれています。
References
- "ISO 22395:2018". ISO. . Retrieved 2020-04-22.
- "ISO 22319:2017". ISO. 30 October 2020.
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