南米のアンデス山脈周辺で古くから愛されているフミータ(Humita)は、トウモロコシを主役に据えた伝統的な郷土料理です。スペイン植民地時代以前の先住民文化にまで遡る歴史を持ち、ペルー、ボリビア、チリ、エクアドル、そしてアルゼンチン北西部など、広範な地域で親しまれています。
基本的には、新鮮なトウモロコシ(チョクロ)をすり潰してペースト状にし、それをトウモロコシの皮で包んで蒸したり茹でたりして調理します。見た目はメキシコのタマレスに似ていますが、タマレスが石灰水で処理したトウモロコシ粉(マサ)を使うのに対し、フミータは新鮮な生の状態のトウモロコシを使用するのが最大の特徴です。

Key Facts
- 主原料:新鮮なトウモロコシ(チョクロ)と、包み材としてのトウモロコシの皮。
- 起源:スペイン侵攻前の先コロンブス期から存在するアンデス地方の伝統食。
- 味のバリエーション:塩味(セイボリー)と甘味(スイート)の2種類が一般的。
- 調理法:蒸す、茹でる、焼くなど、地域や家庭によって異なる。
- 肉の不使用:伝統的なレシピにおいて、肉類が含まれることはありません。
地域ごとの多様なスタイル
フミータは地域によって呼び名や調理法、加えられる食材が異なります。それぞれの国で独自の進化を遂げています。
アルゼンチン:2つの調理形式
アルゼンチンでは、主に「フミータ・ア・ラ・オジャ(鍋仕立て)」と「フミータ・エン・チャラ(皮包み)」の2種類が作られます。鍋仕立ての場合は、トウモロコシをすり潰したクリーミーな混合物に、玉ねぎやパプリカ、クミン、バジルなどの香辛料を加え、時にはカボチャ(クリオロ・パンプキン)や牛乳を混ぜて煮込みます。仕上げに溶けたチーズを添えることもあります。
一方、皮包みのスタイルでは、混合物を2枚の皮で十字に包み、塩水で約1時間茹で上げます。特に北部地域では、中に白いチーズやヤギのチーズを入れるのが一般的です。

チリ:バターとハーブの風味
チリのフミータは、新鮮なトウモロコシに玉ねぎ、バジル、そしてバターやラードを加えて作られます。皮で包んだ後、茹でるかオーブンで焼いて調理し、紐でしっかりと固定します。食べる際に砂糖やトマトを添える習慣があります。
エクアドル:専用の鍋で蒸し上げる
エクアドルでは、トウモロコシに玉ねぎ、卵、豚脂、そして地域や家庭ごとのスパイスを混ぜ合わせます。最大の特徴は、茹でたり焼いたりせず「蒸す」ことで仕上げる点です。あまりに伝統的な料理であるため、フミータ専用の調理鍋が存在します。また、食べる直前にフライパンで軽く焼くことも一般的です。
ペルーとボリビア:アンデスの原風景
ペルーやボリビアの中央アンデス地域では、ラードと塩、ケソ・フレスコ(新鮮なチーズ)を合わせた塩味のものか、砂糖、シナモン、レーズンを加えた甘いもののどちらかが作られます。中にはアニスを加える地域もあり、独特の香りが楽しめます。ペルーでは、伝統的な地中オーブン「パチャマンカ」で調理されることもあります。
フミータの概要まとめ
| 地域 | 主な調理法 | 特徴的な食材・手法 | 味の傾向 |
|---|---|---|---|
| アルゼンチン | 鍋煮込み / 茹で | カボチャ、クミン、パプリカ | 塩味・甘味 |
| チリ | 茹で / 焼き | バター、バジル、トマト添え | 塩味・甘味 |
| エクアドル | 蒸し | 卵、豚脂、専用鍋を使用 | 塩味・甘味 |
| ペルー・ボリビア | 茹で / 蒸し / パチャマンカ | ケソ・フレスコ、シナモン、アニス | 塩味・甘味 |
Frequently Asked Questions
フミータとタマレスの違いは何ですか?
最大の違いは原料の状態です。フミータは新鮮な生のトウモロコシをすり潰して作りますが、タマレスは「ニクスタマリゼーション(石灰処理)」されたトウモロコシ粉(マサ)を使用します。
フミータに肉は入っていますか?
いいえ、伝統的なフミータに肉類が含まれることはありません。トウモロコシの自然な甘みを活かした料理です。
どのような味付けがありますか?
大きく分けて「塩味(セイボリー)」と「甘味(スイート)」の2種類があります。塩味にはチーズやハーブが、甘味には砂糖やシナモン、レーズンなどが使われます。
歴史的な記録はありますか?
ペルーでは、1609年に出版されたインカ・ガルシラソ・デ・ラ・ベガの著書『インカ帝国評伝』の中で、1539年から1560年にかけて彼が食べた記憶としてフミータについて記述されており、非常に古い歴史を持つことが分かっています。
他の国で似た料理はありますか?
ブラジルの「パモーニャ(Pamonha)」や、コロンビアの「エンブエルトス(Envueltos)」、「ボジョ(Bollos)」などが、新鮮なトウモロコシを使う点においてフミータに非常に近い料理です。
References
- "Tierra-inca.com". www.tierra-inca.com. Retrieved 2024-07-17.
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- de la Vega, Garcilaso (1688). Comentarios Reales de los Incas [The Royal Commentaries of Peru]. Translated by Rycaut, Sir Paul. London: M. Flesher. p. 318.
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