山岳地帯で見られる、半円形の劇場のような形状をした谷をカール(または圏谷)と呼びます。フランス語の「cirque」に由来し、スコットランドでは「corrie」、ウェールズでは「cwm」という名称で知られています。この独特な地形は、主に氷河による強力な浸食作用によって形成されますが、稀に河川の浸食によっても同様の形状が作られることがあります。
氷河によるカールは、三方を急峻な崖に囲まれ、一方のみが開口しているお椀状の盆地が特徴です。この構造は、氷河が山肌を削り取る過程で生まれ、自然の造形美として世界各地の山脈に点在しています。

Key Facts
- 基本形状: 三方を急斜面に囲まれた、半円形またはお椀状の谷。
- 主な形成要因: 氷河による浸食(氷食)および河川による浸食。
- 代表的な構成要素: 最上部の急崖(ヘッドウォール)と、氷河が流出する出口(リップ/しきい)。
- 二次的地形: 氷河が消滅した後に形成される小湖(ターン)や、隣接するカールが削り合ってできる鋭い稜線(アレート)。
- 環境指標: カールの位置を分析することで、過去の氷河の分布や気候変動の履歴を推測できる。
氷河浸食によるカールの形成プロセス
氷河によるカールは、主に雪が蓄積しやすい日陰の斜面(北半球では北東向きなど)で発生します。太陽光や風の影響を受けにくい場所に雪が溜まり、それが自重で圧縮されて氷河へと変化します。ここからニベーション(雪食作用)と呼ばれるプロセスが始まり、氷の分離による風化と浸食によって斜面に小さな窪みが形成されます。
窪みが大きくなると、氷河の浸食力がさらに強まります。氷河に含まれる岩石の破片がやすりのように底面を削る「研磨作用」や、岩塊をむしり取る「プラッキング作用」により、盆地は次第に深く、広く掘り下げられていきます。

氷河のダイナミクスと地形の変化
氷河が移動する際、静止している氷と移動している氷の間にベルグシュルンドという深い裂け目(クレバス)が生じます。この隙間に水が入り込み、凍結と融解を繰り返すことで岩盤が砕かれ、後壁(ヘッドウォール)の浸食が加速します。

氷河が十分に成長すると、お椀状の盆地から溢れ出し、数キロメートルに及ぶ谷氷河へと発展することがあります。氷河が後退または消滅すると、底部の深い窪みに水が溜まり、ターンと呼ばれる氷河湖が形成されます。この湖は、堆積物(モレーン)や岩盤の突起によって自然に堰き止められています。

複合的な地形への発展
複数のカールが相互に作用することで、さらに複雑な地形が生まれます。2つのカールが向かい合って浸食を進めると、その間に鋭い鋸歯状の稜線であるアレートが形成されます。また、3つ以上のカールが一点に向かって浸食した場合、マッターホルンのようなピラミッド型の鋭い山頂(氷食尖峰)が作り出されます。
![Lake Seal, Mt. Field National Park, Tasmania – a cirque formed from a glacier is visible in the walls around Lake Seal[6]](/images/be/40/be40151a236fef4c61dab5e74c4eb814654cead8f55174006e45eff86c3a7304.jpg)
さらに、カールが階段状に連続して配置されると「カール階段」と呼ばれる特有の景観が形成されます。

河川浸食によるカールの形成
氷河ではなく、河川の作用によって形成されるカールも存在します。特にカルスト地形に見られるマハテシュと呼ばれる地形が代表的です。これは、断続的な河川の流れが石灰岩やチョークの層を浸食し、周囲に切り立った崖を残して盆地を形成したものです。

河川浸食によるカールの共通点は、浸食に強い上層の岩石が、浸食されやすい下層の物質を覆っている地質構造を持っていることです。フランスのブルゴーニュ地方や、イスラエルのネゲブ砂漠などでこのような地形が確認されています。

世界各地の代表的なカール
カールは世界中の多様な環境で観察でき、その形成要因によって分類されます。
| 地域 | 氷河浸食による例 | 河川浸食による例 |
|---|---|---|
| 日本 | 涸沢カール、千畳敷カール、山崎カール | - |
| ヨーロッパ | ガヴァルニー(仏)、マリッツァ(ブルガリア) | ブ・デュ・モンド(仏)、ナヴァセル(仏) |
| 北米 | タッカーマン・ラビン(米)、タワーズ(米) | - |
| アジア・その他 | ウェスタン・クム(ネパール)、チャンドラタール(インド) | マハテシュ・ラモン(イスラエル) |
北米のタッカーマン・ラビンなどは、春になるとスキーヤーが集まるなど、レクリエーションの場としても活用されています。

また、ブルガリアのリラ山脈にあるマリッツァ・カールのように、氷河時代の名残を留める美しい景観が今も保存されている地域が多くあります。

Frequently Asked Questions
カールとターンの違いは何ですか?
カールは氷河の浸食によって作られた「お椀状の谷(地形全体)」を指します。一方、ターンは氷河が消えた後、そのカールの底にある窪みに水が溜まってできた「小さな湖」のことを指します。
氷河がない場所でもカールはできますか?
はい、可能です。河川による浸食( fluvial erosion)によっても同様の形状が作られます。特に石灰岩地帯などで、硬い岩層の下にある柔らかい層が削り取られることで、マハテシュのような河川浸食カールが形成されます。
アレートとはどのような地形ですか?
2つのカールが互いに向かい合って浸食を進めた結果、その境界に形成される非常に鋭く切り立った岩の稜線のことです。
カールの形成にはどのような条件が必要ですか?
氷河カールの場合は、雪が蓄積しやすく、かつ溶けにくい日陰の斜面であること、そして氷河の重量による浸食が継続的に行われる環境が必要です。河川カールの場合は、浸食耐性の異なる岩層が重なっている地質構造が必要です。
カールの研究はどのような役に立ちますか?
氷河は雪線より上の場所でしか発生しないため、現在のカールの位置や形状を分析することで、過去にどこまで氷河が広がっていたか、また当時の気候がどうであったかという古環境の復元に役立ちます。
References
- This concern is not new, see Evans, I.S. & N. Cox, 1974: Geomorphometry and the operational definition of cirques, Area. Institute of British Geographers, 6: 150–53 regarding term usage.
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![Lake Seal, Mt. Field National Park, Tasmania – a cirque formed from a glacier is visible in the walls around Lake Seal[6]](/images/be/40/be40151a236fef4c61dab5e74c4eb814654cead8f55174006e45eff86c3a7304.jpg)



