複雑な業務の流れやプログラムの論理構造を、誰にでもわかる形で表現したいと考えたことはないでしょうか。フローチャートは、ワークフローやアルゴリズム(課題解決のための段階的な手順)を図解化したものであり、プロセスの可視化において不可欠なツールです。
視覚的にプロセスを書き出すことで、潜在的な欠陥やボトルネック(処理の停滞箇所)を早期に発見でき、設計の最適化やドキュメント化に大きく貢献します。本記事では、フローチャートの基礎から標準的な記号、歴史的な背景までを詳しく解説します。

Key Facts
- 定義: ワークフローやアルゴリズムを、記号と矢印を用いて視覚的に表現した図。
- 主な目的: プロセスの分析、設計、文書化、および管理の効率化。
- 標準規格: ANSI(米国国家規格協会)およびISO(国際標準化機構)によって記号が標準化されている。
- 活用範囲: ソフトウェア開発からビジネスプロセス管理、品質管理(QC七つ道具の一つ)まで多岐にわたる。
フローチャートの構造と主要な記号
フローチャートは一般的に、上から下、または左から右へと流れるように構成されます。ISO 5807などの国際規格に基づいた共通の記号を使用することで、作成者以外の人間でも直感的に内容を理解することが可能です。
基本となる標準記号
最も頻繁に使用される基本的な形状とその意味は以下の通りです。
- 端子(楕円・角丸長方形): プロセスの開始点と終了点を示します。
- 処理(長方形): データの変更や具体的な操作など、一つの活動ステップを表します。
- 判断(ひし形): はい/いいえなどの条件分岐を行い、次に進む経路を決定します。
- 入出力(平行四辺形): データの読み込みや結果の出力を示します。
- フローライン(矢印): 操作の順序と方向を定義します。

高度な記号と特殊な表現
より詳細な設計には、以下のような専門的な記号が用いられます。
- 事前定義済み処理: 他で定義されたサブルーチンやプロセスを呼び出す際に使用します。
- 注釈: 補足情報を記載するためのオープンな長方形です。
- コネクタ: ページ内またはページをまたいで線を簡略化するための記号です。
- データ保存: 円筒形でデータベースやディスクドライブ上のデータを表現します。
- 手動操作: 台形で、人間が手作業で行う調整や操作を示します。

フローチャートの種類と応用展開
利用目的や視点によって、フローチャートはいくつかの形態に分類されます。例えば、組織の責任分担を明確にするために、垂直または水平の領域で分けたクロスファンクショナル(機能横断的)フローチャートがあります。これにより、どの部署がどの決定権を持つのかを一目で把握できます。
視点別の分類
ユーザーの役割に応じて、以下のようなモデルが使い分けられます。
- ドキュメントフローチャート: システム内での書類の流れと管理を可視化。
- データフローチャート: データの移動と制御に焦点を当てた図。
- システムフローチャート: 物理的なリソースやハードウェアレベルの制御を表現。
- プログラムフローチャート: ソフトウェア内部の論理的な制御フローを記述。
また、計算プロセスの可逆性に焦点を当てた「可逆フローチャート」という理論的なモデルも存在し、エネルギー効率の高い計算システムの基礎となっています。

フローチャートの歴史と変遷
フローチャートの概念は、1921年にフランクとリリアン・ギルブレスが提唱した「プロセスチャート」に遡ります。当初は産業工学の分野で「最善の方法」を見つけるためのツールとして普及し、後にビジネスプロセスや情報処理へと応用されました。
1940年代後半には、ジョン・フォン・ノイマンらがコンピュータプログラムの計画段階で図解を用いる手法を開発しました。これにより、アルゴリズムの記述にフローチャートが広く使われるようになりました。しかし、1970年代に高水準言語やインタラクティブ端末が普及すると、ソースコードや擬似コード(擬似的なプログラム記述)で簡潔に表現できるため、プログラミングにおけるフローチャートの利用は減少しました。それでも、UML(統一モデリング言語)のアクティビティ図などの形で、その精神は現代の設計手法に受け継がれています。
まとめ:フローチャートの特性一覧
| 項目 | 内容 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 基本記号 | 端子、処理、判断、入出力 | 論理構造の可視化 |
| 標準規格 | ANSI / ISO 5807 | 世界共通の理解を促進 |
| 応用形式 | クロスファンクショナル、UML | 責任分担の明確化、システム設計 |
| 代替手法 | 簡潔な記述や異なる視覚化 |
Frequently Asked Questions
フローチャートとアルゴリズムはどう違うのですか?
アルゴリズムは問題を解決するための「手順や論理そのもの」を指し、フローチャートはそのアルゴリズムを「視覚的に表現した図」のことです。つまり、フローチャートはアルゴリズムを伝えるための手段の一つです。
どのようなソフトウェアを使って作成するのが最適ですか?
単純な描画ソフトでも作成可能ですが、専用のフローチャート作成ソフトやビジュアルプログラミング言語を使用すると、データモデルとの連携や自動生成が可能になり、効率的に管理できます。
判断(ひし形)から出る線はいくつまで可能ですか?
一般的には「はい」か「いいえ」の2つの経路に分かれますが、条件に応じて3つ以上の分岐を持たせることも可能です。ただし、可読性を保つためにシンプルな分岐が推奨されます。
現代のプログラミングでフローチャートはもう不要ですか?
実装段階ではソースコードが優先されますが、設計段階での論理整理や、非エンジニアへの仕様説明、複雑なビジネスルールの可視化においては、今でも非常に有効なツールです。
クロスファンクショナルフローチャートのメリットは何ですか?
単なる手順だけでなく、「誰が(どの部署が)」そのタスクを担当し、どこで責任が移譲されるのかを明確にできるため、組織間の連携ミスを防ぐことができます。
References
- SEVOCAB: Software Systems Engineering Vocabulary. Term: Flow chart. Retrieved 31 July 2008.
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