私たちが地面に足をつけて立っていられるのは、地球が持つ重力のおかげです。一般的に重力は一定のものと考えられがちですが、実際には地球上のどこにいるか、あるいはどの高さにいるかによって、その強さは微妙に異なります。重力とは、地球内部の質量分布による万有引力と、地球の自転によって生じる遠心力が組み合わさった正味の加速度のことを指します。
重力の方向は、重りを用いた「下げ振り」が示す垂直方向と一致します。物理学的な単位では、1秒あたりに速度がどれだけ増加するかを示すメートル毎秒平方(m/s²)や、1キログラムあたりの力を示すニュートン毎キログラム(N/kg)で表現されます。地表付近では、概ね 9.8 m/s² という値になります。

Key Facts
- 標準重力の定義値は 9.80665 m/s² であり、世界的な計算基準として用いられている。
- 地球は完全な球体ではなく扁球体(赤道付近が膨らんだ形)であるため、場所により重力が異なる。
- 重力は赤道付近で最も弱く、北極や南極などの極地方で最も強くなる。
- 高度が上がるほど地球中心からの距離が増えるため、重力は減少する。
- 地殻の密度や地形の差によって生じる局所的な重力の変動を重力異常と呼ぶ。
重力の強さを決定する要因
緯度による変動と地球の形状
地球の重力が場所によって異なる最大の理由は、地球が自転していることと、その形状にあります。自転による遠心力は赤道付近で最大となり、これが万有引力を打ち消す方向に働くため、赤道上の重力はわずかに減少します。
また、遠心力の影響で地球は赤道方向に膨らんだ「扁球体」となっています。これにより、赤道に立つ人は極地方に立つ人よりも地球の中心から遠くなるため、万有引力の法則(距離の2乗に反比例して力が弱まる)に従い、重力が弱まります。結果として、海抜0メートル地点での重力は赤道の約 9.780 m/s² から、極地方の約 9.832 m/s² まで変化し、重量は約0.5%の差が生じます。
![Earth's gravity measured by NASA GRACE mission, showing deviations from the theoretical gravity of an idealized, smooth Earth ellipsoid. The deviations toward stronger gravity are colored red; deviations toward weaker gravity are colored blue.[1][2]](/images/b0/02/b0028a2174e7fd8d1c6a683f54364af1969f76a2ac65180f3cee1ac64225d8df.jpg)
高度と深さの影響
地表から離れて高度が上がると、地球中心からの距離が増えるため、重力は減少します。例えば、海抜0メートルから9,000メートルまで上昇すると、重量は約0.29%減少します。よくある誤解に「宇宙飛行士は重力から脱出したため無重力である」というものがありますが、国際宇宙ステーション(ISS)の高度(約400km)でも、重力は地表の約90%も維持されています。彼らが浮いているのは、軌道速度による自由落下状態にあるためです。


一方で、地球の内部(深部)へ向かった場合、重力の変化は複雑です。ある深さにおいて、その地点より外側にある殻状の質量が及ぼす引力は互いに打ち消し合い、その地点より内側にある質量のみが重力に寄与します(シェル定理)。地球内部の密度分布に基づくと、深さによって重力値は変動します。

局所的な地質と地形(重力異常)
理論的な計算値と実際の観測値の間には、わずかなズレが生じます。これを重力異常と呼びます。これは、地下にある岩石の密度差や、山脈などの地形的な要因によって、質量分布が不均一であるために起こります。こうした異常は、海面の盛り上がりや精密な振り子時計の誤差として現れることがあります。


世界各都市の重力値比較
緯度と高度の影響を具体的に見ると、高緯度の都市(ヘルシンキやアンカレッジなど)では重力が強く、赤道に近い都市(シンガポールやクアラルンプールなど)では弱くなる傾向があります。また、メキシコシティのような高地にある都市では、高度の影響で重力が低くなっています。
| 都市名 | 重力加速度 (m/s²) | 特徴 |
|---|---|---|
| アンカレッジ | 9.826 | 高緯度のため強い |
| ヘルシンキ | 9.825 | 高緯度のため強い |
| 東京 | 9.798 | 中緯度 |
| メキシコシティ | 9.776 | 高地のため弱い |
| シンガポール | 9.776 | 低緯度のため弱い |
| クアラルンプール | 9.776 | 低緯度のため弱い |
重力の測定と科学的アプローチ
重力の測定は「重力測定(グラビメトリ)」と呼ばれます。現代では地上での観測だけでなく、人工衛星を用いた広域的な調査が行われています。例えば、NASAのGRACEミッションでは、2機の衛星を用いて地球全体の重力場の変動を精密に捉え、気候変動や氷床の減少などの解析に役立てています。
数学的なモデルとしては、1967年の国際重力公式やWGS-84(世界測地系1984)の楕円体重力公式などが用いられ、緯度に応じた重力値を極めて高い精度で推定することが可能です。
Frequently Asked Questions
なぜ赤道では体重が軽くなるのですか?
理由は2つあります。1つは自転による遠心力が赤道で最大となり、下向きの引力を打ち消すためです。もう1つは、地球が赤道方向に膨らんでいるため、中心からの距離が遠くなり、万有引力そのものが弱くなるためです。
宇宙ステーションで無重力なのは、重力がないからですか?
いいえ、重力は十分に存在しています。ISSの高度でも地表の約90%の重力がありますが、ステーションが地球の周りを高速で公転し、常に「自由落下」している状態にあるため、内部では無重量状態(微小重力)になります。
「標準重力」とは何のためにあるのですか?
場所によって重力が異なるため、物理的な計算や単位(キログラム力など)を定義する際に、世界共通の基準値が必要になります。そのため、1901年に 9.80665 m/s² という合意された値が設定されました。
重力異常とは具体的にどのような現象ですか?
地球を均一な密度を持つ球体と仮定して計算した理論値と、実際に測定した値との差のことです。地下に非常に密度の高い鉱床があったり、逆に密度の低い空洞があったりすると、その地点の重力がわずかに変化します。
山の上では重力は弱くなりますか?
はい、弱くなります。山の上は海抜0メートルの地点よりも地球の中心から遠くなるため、万有引力の強さが減少します。ただし、周囲の山塊による質量の寄与などの局所的な要因も影響します。
References
- NASA/JPL/University of Texas Center for Space Research. "PIA12146: GRACE Global Gravity Animation". Photojournal. NASA Jet Propulsion Laboratory. Retrieved 30 December 2013.
- "GRACE Fact Sheet". www2.csr.utexas.edu. Archived from the original on 2024-07-10. Retrieved 2026-06-01.
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- "2022 CODATA Value: standard acceleration of gravity". The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. . May 2024. Retrieved 2024-05-18.
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- Hirt, Christian; Claessens, Sten; Fecher, Thomas; Kuhn, Michael; Pail, Roland; Rexer, Moritz (August 28, 2013). "New ultrahigh-resolution picture of Earth's gravity field". Geophysical Research Letters. 40 (16): 4279–4283. :2013GeoRL..40.4279H. :10.1002/grl.50838. :20.500.11937/46786. 54867946.
- "Wolfram|Alpha Gravity in Kuala Lumpur", Wolfram Alpha, accessed November 2020
- Terry Quinn (2011). From Artefacts to Atoms: The BIPM and the Search for Ultimate Measurement Standards. . p. 127. .
- Resolution of the 3rd CGPM (1901), page 70 (in cm/s2). BIPM – Resolution of the 3rd CGPM
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