私たちが地図や地球儀で見る地球は、きれいな球体やわずかに潰れた楕円体として描かれています。しかし、実際の地球は内部の密度が均一ではなく、場所によって重力の強さが異なります。この重力のばらつきを反映した、地球の「真の姿」とも言える仮想的な面が「ジオイド」です。
ジオイドとは、簡単に言えば「地球全体が海で覆われ、風や潮汐などの外力がなく、重力と自転の影響のみで静止したときの海面」を想定した形状のことです。この面を大陸の下まで延長して考えたものが、測地学における地球の数学的な形状となります。

Key Facts
- 定義: 重力ポテンシャルが等しい「等ポテンシャル面」であり、静止した海面の形状に相当する。
- 形状の特徴: 理想的な楕円体とは異なり、内部の質量分布に応じて凸凹がある。
- 偏差の範囲: 参照楕円体からのズレ(ジオイド高)は、最大で約-106mから+85mの範囲に収まる。
- 実用的役割: GPSなどのGNSSで得られる高さ(楕円体高)を、私たちが日常的に使う標高(正標高)に変換するために不可欠。
- 決定要因: 地殻の厚さやマントルの密度変化など、地球内部の質量分布によって決定される。
ジオイドと参照楕円体の違い
地球の形状を扱う際、計算を簡略化するために用いられるのが参照楕円体です。これは自転による遠心力で赤道方向に膨らんだ、滑らかな数学的モデルです。一方でジオイドは、実際の重力分布に基づいた不規則な面です。
地表の標高(エベレストの8,800mやマリアナ海溝の-11,000m)に比べると、ジオイドの凹凸はわずか200m程度ですが、精密な測量やナビゲーションにおいては極めて重要な意味を持ちます。
![Map of the undulation of the geoid in meters (based on the EGM96 gravity model and the WGS84 reference ellipsoid).[1]](/images/03/62/0362e4058887940b6554989648d14f63e4be7deee670b4216a51de3e2afd95bb.png)
ジオイド高(ジオイド起伏)の仕組み
参照楕円体からジオイドまでの垂直方向の距離を「ジオイド高(またはジオイド起伏)」と呼びます。一般的に、地下に高密度の物質が存在し、重力が強くなる場所ではジオイド面は盛り上がり、逆に密度が低い場所では沈み込みます。
重力と質量の密接な関係
ジオイドの形状が不規則になるのは、地球内部の密度が場所によって異なるためです。例えば、山脈や深い海溝、氷河による地殻の圧縮、あるいはマントルの対流などが重力場に影響を与えます。
具体的には、質量が過剰な領域(正の重力異常)がある場合、重力ポテンシャルが低下し、結果として等ポテンシャル面であるジオイドは外側へ押し出されます。逆に質量が不足している領域では、ジオイドは中心方向へ引き寄せられます。

この原理により、インド洋で見られる大きな低地(インド洋ジオイド低)や、北米・北欧の氷床の影響を受けた北大西洋の高地などが形成されています。

現代技術におけるジオイドの活用
現代の測位システム(GNSS/GPS)は、地球の中心を原点とした楕円体に基づいた「楕円体高(h)」を算出します。しかし、私たちが知りたいのは海抜からの「標高(H)」です。この変換には以下の計算式が用いられます。
標高 (H) = 楕円体高 (h) − ジオイド高 (N)
多くのGPSレシーバーには、あらかじめ計算されたジオイドモデル(EGM96など)が組み込まれており、内部のルックアップテーブルを用いて自動的に標高へと変換しています。もしこの補正を行わなければ、海上にいる船であっても、場所によって高度が変動して表示されることになります。
ジオイドの決定手法とモデル
ジオイドを正確に把握するためには、地上での重力測定に加え、人工衛星による観測が不可欠です。GOCEやGRACEといった衛星ミッションにより、地球全体の重力場が極めて高い精度でマッピングされています。これらのデータは、球面調和関数という数学的手法を用いてモデル化され、EGM2008やEGM2020といった高精度な地球重力モデルとして提供されています。
| 項目 | 参照楕円体 | ジオイド | 実際の地表 |
|---|---|---|---|
| 性質 | 数学的な理想形 | 物理的な等ポテンシャル面 | 物理的な地形 |
| 形状 | 滑らかな回転楕円体 | 緩やかな凹凸がある面 | 激しい起伏がある面 |
| 決定要因 | 地球のサイズと扁平率 | 内部の質量分布(重力) | 地質学的プロセス・浸食 |
| 主な用途 | 座標計算の基準 | 標高(海抜)の基準 | 地図作成・土木工事 |
Frequently Asked Questions
ジオイドと海面は完全に一致していますか?
ほぼ一致していますが、完全ではありません。潮汐、海流、水温や塩分濃度による密度の違い(海洋表面トポグラフィー)があるため、実際の海面はジオイドからわずかに変動しています。
なぜGPSだけでは正確な標高が分からないのですか?
GPSは地球を単純な楕円体として計算しているためです。しかし、実際の重力場は不均一であり、水が溜まる基準となるジオイド面は楕円体からズレているため、その差分(ジオイド高)を補正する必要があります。
ジオイドの形状は時間とともに変化しますか?
はい、変化します。氷床の融解による質量の移動や、マントルの対流、ポストグレイシャル・リバウンド(氷河期後の地殻隆起)などにより、重力場はゆっくりと変化しており、最新の衛星データで観測されています。
ジオイド高がプラスの場所とはどのような場所ですか?
一般的に、周囲よりも地下の密度が高く、重力が強い場所でジオイド面は盛り上がり、ジオイド高はプラスになります。
References
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- "UNB Precise Geoid Determination Package". Retrieved 2 October 2007.
📸 フォトギャラリー
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