アメリカ合衆国ワイオミング州北東部、ベルフォシュ川のほとりに突如として現れる巨大な岩塔、それがデビルズタワーです。周囲の風景から孤立してそびえ立つこの特異な地形は、訪れる人々を圧倒する視覚的インパクトを持っており、地質学的な希少性と深い文化的背景を併せ持っています。
この地は、ラコタ族には「Matȟó Thípila」、クロウ族には「Daxpitcheeaasáao」という名で知られ、古くから先住民にとって神聖な場所とされてきました。自然の造形美だけでなく、歴史的な論争や冒険の舞台としても知られるこの場所の魅力を詳しく解説します。

Key Facts
- 世界初の国立モニュメント: 1906年9月24日にセオドア・ルーズベルト大統領によって指定されました。
- 特異な地質構造: 「ラコリス(岩盤貫入岩)」と呼ばれる火成岩の塊で構成されています。
- 象徴的な柱状節理: マグマの冷却過程で形成された巨大な六角柱の岩柱が特徴です。
- 標高と規模: 頂上の標高は5,112フィート(約1,558m)に達し、基部から頂上までは約264mの高さがあります。
地質学的な成り立ち:巨大な岩塔の正体
デビルズタワーの正体は、約4,050万年前に地下から押し上げられたラコリス(マグマが地層の間に貫入し、ドーム状に盛り上がった構造)です。構成されている岩石は「フォノライト・ポルフィリー」という火成岩で、白色の長石の結晶が混ざった灰色や緑がかった色合いをしています。
最も目を引くのは、垂直に切り立った巨大な柱状の構造です。これはマグマがゆっくりと冷却される際に収縮し、六角形(稀に四角形や五角形、七角形)の柱状節理が形成されたものです。これらの柱は幅が最大6.1m、高さは180mに及ぶものもあり、自然が作り出した精巧な彫刻のような景観を生み出しています。
歴史と名称を巡る議論
1859年にウィリアム・F・レイノルズ大尉の遠征隊によって初めて記録に残され、その後の1875年にリチャード・I・ドッジ大佐が「デビルズタワー」という名称を付けました。しかし、この名称は先住民の言葉を誤解して付けられたという説があり、文化的な配慮から名称変更の議論が起きています。
2000年代に入り、先住民の伝統に敬意を表して「ベアロッジ(Bear Lodge)」への改称を求める提案が何度かなされました。しかし、観光業への影響や地域経済への打撃を懸念する反対意見もあり、最終的に名称は変更されませんでした。現在でも、この地が持つ多層的なアイデンティティは重要な議論のテーマとなっています。

クライミングの歴史と衝撃的な事件
デビルズタワーは、その垂直な壁からクライマーにとって憧れの地となっています。1893年7月4日、地元の牧場主であったウィリアム・ロジャースとウィラード・リプリーが、岩の裂け目に木の杭を打ち込んで梯子を作るという方法で、史上初めて登頂に成功しました。
一方で、1941年にはジョージ・ホプキンスが宣伝目的で無許可でパラシュート降下し、頂上に降り立つという大胆な行動に出ました。しかし、降下用のロープなどの装備が崖下に落下してしまい、悪天候の中で6日間にわたり孤立するという大事件に発展しました。最終的にジャック・デュランス率いる救助隊によって救出されましたが、この出来事は当時のメディアで大きく報じられました。
地域の気候特性
ワイオミング州の厳しい自然環境に位置するため、季節による変動が非常に激しいのが特徴です。夏季は最高気温が40度を超えることもありますが、冬季は氷点下30度を下回る極寒の地となります。また、秋から冬にかけては大量の降雪があり、特に10月には平均して120cm以上の積雪が記録されるなど、ダイナミックな気候変化が見られます。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 所在地 | アメリカ合衆国ワイオミング州クルック郡 |
| 指定日 | 1906年9月24日(全米初の国立モニュメント) |
| 総面積 | 1,346エーカー(約5.45平方キロメートル) |
| 岩石の種類 | フォノライト・ポルフィリー(火成岩) |
| 最高地点 | 5,112フィート(1,558メートル) |
| 管理団体 | アメリカ国立公園局(National Park Service) |
Frequently Asked Questions
なぜ「デビルズタワー」という名前がついたのですか?
1875年の遠征中に、リチャード・I・ドッジ大佐の通訳が先住民の呼称を「悪い神の塔」と誤訳し、それが短縮されて現在の名称になったと考えられています。
この岩塔は火山のことですか?
厳密には火山ではなく「ラコリス」と呼ばれる貫入岩体です。地下でマグマが地層を押し上げて固まったものであり、地表で噴火した火山とは構造が異なります。
一般の観光客でも登ることができますか?
専門的な装備と技術を持つクライマーは登頂していますが、一般の観光客は周囲を巡る「タワー・トレイル(約2.1km)」などのハイキングコースでその雄姿を楽しむのが一般的です。
名称を「ベアロッジ」に変更しようとした理由は?
先住民にとってこの場所は非常に神聖な「熊の宿(Bear Lodge)」であり、現在の名称が不適切であるという文化的・歴史的な視点から、正当な名称への変更が提案されました。
どのような動物が見られますか?
国立モニュメントの敷地内や周辺では、野生のシカなどの動物が観察されることがあり、豊かな自然環境が維持されています。
References
- DEVILS TOWER 1932–1958, DEVILS TOWER NO 2 1959–PRESENT
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