19世紀から20世紀初頭にかけて、アメリカの知的風景に多大な影響を与えたのがD. Appleton & Companyです。ニューヨークを拠点としたこの出版社は、単なる書籍の販売にとどまらず、科学、医学、文学、そして歴史に至るまで、幅広い分野で質の高い知識を大衆に提供し続けました。
創業者のダニエル・アップルトンは、もともと書籍も扱う雑貨店を営んでいましたが、1831年に初の書籍を出版したことで、本格的な出版業へと舵を切りました。その後、同社は手頃な価格で最先端の知見を届ける戦略をとり、当時の知識層のみならず、一般市民の間でも広く支持される存在となりました。
Key Facts
- 創業: 1825年(ダニエル・アップルトンによる)
- 拠点: アメリカ合衆国 ニューヨーク市
- 強み: 科学、医学、スペイン語圏向け書籍、アメリカ史などの専門分野
- 主要功績: チャールズ・ダーウィンら著名な科学者の著作を普及させた
- 終焉: 1933年にThe Century Companyと合併し、後にAppleton-Century-Croftsへ
出版事業の展開と専門領域
D. Appleton & Companyの最大の特徴は、学術的な権威と商業的な普及を両立させた点にあります。特に科学分野への貢献は目覚ましく、チャールズ・ダーウィン、トーマス・ハクスリー、ジョン・ティンダル、ハーバート・スペンサーといった当時の世界的科学者の著作を、手の届きやすい価格で出版しました。
また、医学書の専門部門を設けたほか、南米市場をターゲットにしたスペイン語書籍(ラファエル・ポンボの作品など)の出版にも注力し、独自のニッチ市場を開拓しました。文学やアメリカ史の分野においても、一流の著者を揃えた強力なラインナップを構築していました。
百科事典と定期刊行物の成功
同社は大規模な参照図書の出版でも名を馳せました。『American Cyclopedia』や『Universal Cyclopaedia』などの百科事典シリーズは、当時の知識の集大成として高く評価されました。また、1872年にはエドワード・L・ユーマンズ編集による『Popular Science Monthly』誌を創刊し、科学の普及に大きく寄与しました。
沿革と組織の変遷
会社の歴史は、絶え間ない拡大と組織再編の連続でした。1848年に創業者ダニエルが引退すると、息子ウィリアム・ヘンリーと兄弟たちがパートナーシップを組み、経営を引き継ぎました。1857年には、ニューヨークの貿易出版社として初めて購読出版(サブスクリプション形式)を導入し、ビジネスモデルの革新を図りました。
しかし、順風満帆なことばかりではなく、1900年には一度破産申請を行い、『Popular Science』を売却するなどの苦境を経験しています。その後、ジョセフ・H・シアーズによる再編成を経て、再び業界での地位を回復しました。
1933年6月2日、同社はThe Century Companyと合併し「Appleton-Century Company」となりました。さらに1948年にはF. S. Crofts Co.と合併し、「Appleton-Century-Crofts」としてその歴史を継承することとなりました。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1825年 | ニューヨークで書籍ビジネスを開始 |
| 1831年 | 初の書籍『Crumbs from the Master's Table』を出版 |
| 1869年 | 『Appleton's Journal』創刊 |
| 1872年 | 『Popular Science Monthly』および国際科学シリーズを開始 |
| 1890年 | American Book Companyを共同設立 |
| 1933年 | The Century Companyと合併 |
| 1948年 | F. S. Crofts Co.と合併し、Appleton-Century-Croftsとなる |
代表的な出版作品
同社が世に送り出した作品は多岐にわたります。文学作品では、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の米国初版や、スティーヴン・クレーンの『赤い勲章』などを出版しました。また、ラドヤード・キプリングの全集(15巻)や、ヘンリー・ジェイムズ、エディス・ウォートンの著作など、時代を彩る作家たちの作品を数多く手がけています。
実用書や歴史書では、ウィリアム・テカムセ・シャーマン将軍の回想録や、ジェファーソン・デイヴィスの著作など、南北戦争に関連する重要な記録を世に送り出しました。また、『Appleton's Railroad and Steamboat Guide』のような旅行ガイドも出版し、当時の交通インフラの発展に合わせた情報提供を行っていました。
Frequently Asked Questions
D. Appleton & Companyはどのような出版社でしたか?
1825年にニューヨークで設立されたアメリカの出版社で、科学、医学、文学、歴史など幅広い分野の書籍を出版し、特に学術的な知見を一般に普及させたことで知られています。
どのような著名な著者の本を出版していましたか?
科学分野ではチャールズ・ダーウィンやトーマス・ハクスリー、文学分野ではルイス・キャロル(米国初版)やラドヤード・キプリング、エディス・ウォートンなどの著名な著者の作品を出版していました。
同社が特に力を入れていた専門分野は何ですか?
最先端の科学書籍を低価格で提供することに注力したほか、医学書の専門部門の運営や、南米市場向けのスペイン語書籍の出版に強みを持っていました。
会社は最終的にどうなったのでしょうか?
1933年にThe Century Companyと合併してAppleton-Century Companyとなり、その後1948年にF. S. Crofts Co.と合併してAppleton-Century-Croftsとなりました。
百科事典などの参照図書も出版していましたか?
はい。『American Cyclopedia』や『Universal Cyclopaedia』など、大規模な百科事典シリーズを多数出版し、当時の知識ベースの構築に貢献しました。
References
- "Century to Merge with Appleton & Co.; Two of the Oldest Publishing Houses in Nation Being United by Stockholders. Hiltman to be Chairman W.M. Shuster Will Be President of New Company — Project Long Under Consideration. (Published 1933)". . March 18, 1933. Retrieved February 5, 2021.
- Rines, George Edwin, ed. (1920). "Appleton, Daniel" . .
- "Granted Charter". Brooklyn, New York: Times Union. June 2, 1933. p. 11. Retrieved November 27, 2024.
- "1831---House of Appleton". Major American Publishers. The Hyde Park Book Store. February 7, 2012. Archived from the original on May 19, 2006. Retrieved September 14, 2013.
- International Scientific Series (D. Appleton & Co.) - Book Series List, publishinghistory.com. Retrieved 7 July 2023.