自然界に広く分布するクロライト(緑泥石)は、その名の通り鮮やかな緑色を特徴とする層状珪酸塩鉱物のグループです。地質学的な指標として非常に重要であり、特に低〜中温の変成作用を受けた岩石において頻繁に見られます。見た目は雲母に似ていますが、化学組成や結晶構造には独自の特性を持っており、地球内部のダイナミクスを解明する鍵となる鉱物です。
Key Facts
- 正体: 低〜中温の変成岩や変質した火成岩に一般的な層状珪酸塩鉱物。
- 色: 主に緑色(稀に黄色、赤、白)。
- 構造: TOT層とO層が交互に重なる構造を持ち、非膨張性の粘土鉱物の一種。
- 指標: 「緑色片岩相(greenschist facies)」を代表する診断鉱物。
- 組成: マグネシウム、鉄、アルミニウム、ケイ素が互いに置換し合う多様な組成を持つ。
クロライトの化学的・物理的性質
クロライトは、ギリシャ語で「緑色」を意味する「chloros」に由来しています。よくある誤解に「塩素(chlorine)」を含んでいるというものがありますが、実際には塩素は含まれていません。主成分はマグネシウムや鉄であり、これらが結晶構造内で入れ替わることで、マグネシウムに富むクリノクロアから鉄に富むカモサイトまで、連続的な固溶体シリーズを形成します。
物理的な特徴としては、モース硬度が2〜2.5と非常に柔らかく、完全な劈開(へきかい:特定の方向に割れやすい性質)を持ちます。雲母と同様に薄いプレート状の形態をしていますが、雲母のような弾力性はなく、無理に曲げると折れやすい性質があります。また、滑石(タルク)のような石鹸のようなぬめりはありません。

結晶構造のメカニズム
クロライトの構造は「TOT-O」構造と呼ばれます。これは、2枚の四面体層(T)で1枚の八面体層(O)を挟んだ「TOT層」と、さらに別の八面体層(O層)が交互に積み重なったものです。TOT層はタルク(滑石)と同じ構造ですが、クロライトの場合はケイ素の一部がアルミニウムに置き換わっているため、層全体が負の電荷を帯びています。この負電荷を、正に帯電したブルサイト層(O層)が結合させることで、強固な構造を維持しています。
自然界での産出と地質学的意義
クロライトは、玄武岩などの低シリカ火山岩が変成してできる緑色片岩に大量に含まれており、岩石全体を緑色に染める要因となります。また、黒雲母や角閃石、柘榴石などの苦鉄質鉱物が熱水変質を受けた際に、二次的に生成されることも一般的です。

地質学において、クロライトは変成度の指標として極めて重要です。特に温度約450℃、圧力約5kbarの条件下で安定する「緑色片岩相」の代表的な鉱物とされています。温度がさらに上昇すると、クロライトはカリ長石やフェンジャイトと反応して黒雲母や白雲母へと変化し、最終的には水蒸気を放出して分解されます。

さらに、海洋底の枕状玄武岩のガラス質縁辺部が海水との化学反応でクロライトに変化したり、沈み込み帯の深部にあるマントルウェッジにおいても安定して存在することが実験的に示唆されており、地球深部の物質循環に関与していると考えられています。
クロライトグループの主要メンバーと用途
クロライトグループには多くの種が存在しますが、代表的なものにクリノクロア、カモサイト、ペナンタイトが挙げられます。また、東シベリアの鉄スカーン鉱床などで産出する、装飾的な彫刻石として利用される塊状のクリノクロアは、商品名としてセラフィナイトと呼ばれています。
産業的な用途は限定的ですが、クロライトを含む緑色片岩は、かつて米国ミネソタ州などで屋根材の粒状素材として利用されていました。現在は合成素材に取って代わられていますが、粘土鉱物の一部として、広範な工業的用途を持つ粘土の構成成分となっています。
| 特性項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 化学組成 | (Mg,Fe)₃(Si,Al)₄O₁₀(OH)₂ · (Mg,Fe)₃(OH)₆ |
| 結晶系 | 単斜晶系(一部三斜晶系) |
| モース硬度 | 2.0 〜 2.5 |
| 比重 | 2.6 〜 3.3 |
| 屈折率 | 1.57 〜 1.67 |
| 主な色 | 緑色(稀に黄、赤、白) |
Frequently Asked Questions
クロライトと雲母の違いは何ですか?
どちらも薄い板状の形態をしていますが、雲母は弾力性があり、曲げても元に戻ります。一方、クロライトは柔軟ではありますが弾力はなく、一度曲げると戻りません。また、層間の結合構造(陽イオンによる結合か、ブルサイト層による結合か)が根本的に異なります。
名前に「クロライト」とありますが、塩素が含まれていますか?
いいえ、含まれていません。名称はギリシャ語で「緑色」を意味する「chloros」に由来しており、見た目の色に基づいた命名です。
どのような岩石でよく見つかりますか?
主に低〜中温の変成岩(緑色片岩など)や、熱水変質を受けた火成岩、および粘土を含む堆積岩の中で頻繁に見られます。
セラフィナイトとは何ですか?
セラフィナイトは、クリノクロアというクロライトの一種が塊状になったもので、装飾的な彫刻石として取引されている名称です。
地質学的にどのような意味を持つ鉱物ですか?
特定の温度と圧力条件下で安定するため、その岩石がどのような変成プロセス(特に緑色片岩相)を経たかを示す重要な指標鉱物として利用されます。
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