南米の多くの国々、特にアルゼンチンやウルグアイにおいて、アサード(Asado)は単なる調理法ではなく、家族や友人が集う重要な社会的イベントとして深く根付いています。牛肉を中心に、豚肉や鶏肉、さまざまなソーセージをじっくりと焼き上げるこの文化は、地域のアイデンティティそのものと言っても過言ではありません。
基本的には、屋外で火を囲み、時間をかけて肉を焼き上げるスタイルです。調理を担う専門の焼き手は「アサドール(asador)」または「パリーリェーロ(parrillero)」と呼ばれ、火加減と肉の焼き上がりを厳格に管理します。

Key Facts
- 主な地域:アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル(リオグランデ・ド・スル州)、チリ、パラグアイ。
- 主な食材:牛肉、豚肉、鶏肉、チョリソー、モルシージャ(血のソーセージ)。
- 調理器具:パリージャ(グリル)や、地面に設置した火床。
- 味付け:基本的に塩のみを使用し、素材本来の味を活かす。
- 定番ソース:パセリやニンニクをベースにした「チミチュリ」や、酢仕立ての「サルサ・クリオージャ」。
火と調理のメカニズム
アサードの質を決定づけるのは、燃料となる炭や薪の選択です。樹脂の強い松やユーカリは避け、ケブラチョやアルガロボといった現地の樹木が好まれます。ウルグアイでは炭を使わず、直接的に熾火(おきび)の上で焼き上げるのが一般的です。
調理方法には大きく分けて2つのスタイルがあります。一つは「アル・アサドール」で、地面に設けた火床の周囲に金属製の十字架(アサドール)を立て、動物の carcasses(屠体)を広げた状態で固定して焼く方法です。もう一つは「ア・ラ・パリージャ」で、炭の上に設置したグリル(パリージャ)で肉を焼くスタイルです。


地域特有の調理器具
パタゴニア地方など風の強い地域では、「チュレンゴ(chulengo)」と呼ばれる、半分に切ったオイルドラム缶のような器具が使われます。これにより、強風から火と肉を守りながら安定して調理することが可能です。

コース仕立てのメニュー構成
アサードは一度にすべてを食べるのではなく、調理時間の異なる食材を順番に提供するコース形式で楽しまれます。
前菜:エンブティドスとアチュラス
メインの肉が焼き上がるまでの間、まずは「エンブティドス(詰め物ソーセージ)」や「アチュラス(内臓類)」が提供されます。チョリソーやモルシージャ、チンチュリーネス(牛の小腸)、モジェハス(胸腺・膵臓)などが並び、プロボレタ(プロボローネチーズの焼き物)が添えられることもあります。特にチョリソーをフランスパンに挟んだ「チョリパン」は定番の人気メニューです。

メイン:厳選された肉料理
前菜の後は、いよいよメインの肉が登場します。まずは「アサード・デ・ティラ(骨付きショートリブ)」から始まり、続いて「バシオ(フランステーキ)」や「マタンブレ」などが供されます。レストランではパタゴニア産ラムや子ヤギ(チビート)が提供されることも一般的です。


パタゴニア地方の伝統的な「アサード・アル・パロ」では、羊や豚を丸ごと木の棒に刺して地面に固定し、数時間かけてゆっくりと焼き上げます。

サイドメニューと付け合わせ
肉の濃厚な味わいを引き立てるため、シンプルなサラダが添えられます。レタス、トマト、玉ねぎのミックスサラダや、ジャガイモ、ニンジン、グリーンピースにマヨネーズを和えた「ロシア風サラダ(エンサラーダ・ルサ)」が定番です。また、トウモロコシやナスなどの焼き野菜(ベルドゥラホ)も一緒にグリルされます。
パラグアイでは、チパ・グアスやソパ・パラグアイ、茹でたマンジョーク(キャッサバ)などが添えられます。飲み物は赤ワインやビールが好まれ、デザートには新鮮なフルーツが提供されるのが一般的です。
南米各国のバリエーション
| 国・地域 | 名称・特徴 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| アルゼンチン・ウルグアイ | アサード (Asado) | パリージャを使用し、塩のみでじっくり焼く。社会的イベントとしての側面が強い。 |
| ブラジル | シュラスコ (Churrasco) | 串焼きが主流。店員が肉を持って回る「ロディジオ」形式が有名。 |
| チリ | コルデロ・アル・パロ | 羊を丸ごと串に刺して焼く。ペブレ(トマトとパクチーのディップ)を添える。 |
| メキシコ | カルネ・アサダ (Carne Asada) | マリネした肉を炭火で焼く。ネギやノパレス(サボテン)を添える。 |
ブラジルのシュラスコは、アサードよりも調理時間が短く、串に刺した肉を次々と提供するスタイルが特徴です。一方、メキシコのカルネ・アサダでは、肉をあらかじめマリネして味付けすることが一般的です。

世界各地の類似文化
アサードに似た文化は世界中に存在します。南アフリカでは「ブライ(braai)」と呼ばれ、グリルで肉やソーセージを焼く習慣があります。また、ポルトガルやゴア(インド)でも「アサード(assado/assad)」という名称のロースト料理が存在しますが、これらは南米のバーベキュー文化とは異なる文脈で発展したものです。

Frequently Asked Questions
アサードとシュラスコの違いは何ですか?
アサードは主にアルゼンチンやウルグアイで、パリージャ(グリル)を用いてじっくり焼くスタイルです。一方、ブラジルのシュラスコは串焼きが中心で、調理時間が比較的短く、提供スタイルも異なります。
味付けに特別なスパイスは使いますか?
伝統的なアサードでは、肉自体には塩しか使いません。素材の味を最大限に引き出すためです。味の変化を楽しむために、食べる直前にチミチュリなどのソースを添えます。
チミチュリソースとはどのようなものですか?
刻んだパセリ、乾燥オレガノ、ニンニク、塩、黒胡椒、玉ねぎ、パプリカをオリーブオイルで和えたソースです。主に内臓料理(アチュラス)に添えられます。
アサードの調理にはどれくらいの時間がかかりますか?
火加減を調整しながらゆっくりと焼き上げるため、通常は2時間ほどかかります。チリのコルデロ・アル・パロのように、丸ごとの羊を焼く場合は5時間ほど要することもあります。
フィリピンのアサードと同じものですか?
いいえ、異なります。フィリピンのアサードは、甘いタレで煮込んだチャーシューのような料理や、野菜と一緒に煮込んだシチューを指します。南米のバーベキューとは調理法が全く異なります。
References
- Kuhn, Christoph (28 June 2007). "Jedes Biest auf den Grill" (in German). Zurich: WOZ Die Wochenzeitung. Archived from the original on 23 July 2010. Retrieved 29 December 2012.
Asado heisst eigentlich gegrilltes Fleisch, Braten; das Wort wird heute für das Grillereignis allgemein gebraucht.
- "Crossing Borders: From Iowa to Argentina". Iowa Research Online. University of Iowa. Archived from the original (PDF) on May 19, 2012. Retrieved 29 December 2012.
The person who cooks the asado is called an "asador".
- Catena, Laura (18 November 2011). Vino Argentino: An Insider's Guide to the Wines and Wine Country of Argentina. Chronicle Books. p. 43. . "...cooked over a slow fire for a couple of hours inside a cement or brick structure. Simple metal grill racks, placed over an open fire, are also popular."
- Pryor, Devon. "What is an Asado?". wiseGEEK. Retrieved 29 December 2012.
Chicken is also common, as is a slab of queso provoleta, or provolone cheese.
- Kaufman, Barry (9 June 2013). "Rockridge Cornucopia: Politics and Food". Archived from the original on 6 February 2021. Retrieved 12 June 2015.
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- Astigarraga, Guillermo (19 October 2011). "Understanding the Asado: Barbecue The Argentinian Way". Vagabundo Magazine. Archived from the original on 26 April 2012. Retrieved 29 December 2012.
Men grill the meat, women make the salad -which is just tomato and lettuce dressed with oil and salt, and maybe a squirt of vinegar; after all, the salad is not the point, it's all about the meat (look closely at how the different groups function, men in the backyard grilling, women in the kitchen chopping vegetables, all roles predetermined, neither side interested in introducing any variations).
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Pryor, Devon. "What is an Asado?". wiseGEEK. Retrieved 29 December 2012.
One is more likely to see an ensalada rusa, made from potato, carrot, green peas, hardboiled eggs, and mayonnaise.
- Waggoner, John (2009). Sao Paolo & Brazil. Hunter Publishing, Inc. p. 2. .
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