1972年、NASAが送り出したアポロ16号は、月の地質学的謎を解き明かすために設計された極めて重要なミッションでした。この任務の主目的は、火山活動の痕跡があると信じられていたデカルト高地を調査し、月の形成過程に関する科学的データを収集することにありました。
ミッションを率いたのは、経験豊富なジョン・ヤング船長と、月面への初挑戦となるチャールズ・デューク、そして司令船に留まり運用を支えたトーマス・マッティングリーの3名です。彼らは最新の科学機器と月面車を駆使し、過酷な環境下で未知の領域へと足を踏み入れました。

Key Facts
- ミッション期間:11日1時間51分5秒
- 着陸地点:月のデカルト高地(南緯8度58分23秒、東経15度30分1秒)
- 月面活動:計3回の船外活動(EVA)を実施し、合計約20時間14分活動
- 収集サンプル:約95.71kgの月面物質を地球へ持ち帰った
- 移動距離:月面車(LRV)を用いて26.7kmを走行
- 使用ロケット:サターンV(SA-511)
ミッションの準備と打ち上げ
アポロ16号の成功の裏には、徹底した地質学トレーニングがありました。ヤングとデュークは、地球上の類似地形であるニューメキシコ州のリオグランデ峡谷などで、岩石の識別やサンプリングの手法を習得しました。

また、月面での効率的な移動を実現するため、月面車(LRV)の操縦訓練にも心血を注ぎました。この車両は、限られた時間内でより広範囲の調査を行うための不可欠なツールでした。

1972年4月16日、フロリダ州ケネディ宇宙センターの39A発射台から、巨大なサターンVロケットが夜空へと舞い上がりました。この打ち上げにより、司令船「キャスパー」と月着陸船「オリオン」が月への旅を開始しました。


月への旅路と軌道上の活動
地球を離れた宇宙飛行士たちは、月へと向かう航程(トランス・ルナ・コースト)の中で、美しい地球の姿を記録しました。特にチャールズ・デュークが撮影した、アメリカ合衆国を中心に捉えた地球の写真は、後世に語り継がれる名ショットとなりました。

月周回軌道に投入された後、司令船パイロットのマッティングリーは、船外活動(EVA)を行い、司令船の外壁に設置されていたフィルムカセットを回収するという困難な任務を完遂しました。

デカルト高地での月面探査
4月21日、月着陸船オリオンは目標としていたデカルト高地に無事着陸しました。この地域は、火山性の物質で覆われていると考えられており、科学的な期待が高まっていました。

船外活動は計3回にわたって行われました。1回目と2回目の活動では、月面車を利用して広範囲を移動し、クレーターの縁や岩石の多いエリアで詳細な調査を実施しました。特に「ストーン・マウンテン」付近の景色は圧巻であり、貴重な地質学的サンプルが採取されました。
![The view from the side of Stone Mountain, which Duke described as "spectacular"[107]](/images/e8/0e/e80ec1f4ef1905dee73f2a29cdfba2c7cf20eb5e81ba21fe43ea6489f315933c.jpg)

3回目の活動では、より限定的なエリアでの精密な調査が行われました。また、デュークは個人的な思い出として、家族の写真を月面に残したというエピソードも残っています。

展開された科学装置
月面には、地球にデータを送信し続けるための自動科学実験装置(ALSEP)が設置されました。これには、月内部の振動を計測する受動的地震実験装置や、磁場を測定する月面磁力計などが含まれていました。


さらに、粒子および磁場サブサテライト(PFS-2)が軌道上に投入され、月の環境を多角的に分析しました。

地球への帰還とミッションの成果
月面での任務を終えたヤングとデュークは、上昇段を用いて軌道上の司令船キャスパーと再ドッキングし、地球への帰還路につきました。


4月27日、彼らは南太平洋に無事スプラッシュダウンし、USSティコンデロガによって回収されました。このミッションで持ち帰られた約96kgのサンプルは、月の地質学的歴史を塗り替える重要な手がかりとなりました。
ミッションの完遂を記念して、シルバー製のロビンス・メダリオンなどの記念品が作成され、歴史に刻まれました。

| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 乗組員 | ジョン・ヤング(船長)、チャールズ・デューク(月面操縦士)、トーマス・マッティングリー(司令船操縦士) |
| 宇宙船 | 司令船「キャスパー」、月着陸船「オリオン」 |
| 着陸地点 | デカルト高地 |
| 月面滞在時間 | 約71時間(船外活動 合計20時間14分) |
| 回収サンプル量 | 95.71 kg |
| 月面車走行距離 | 26.7 km |
Frequently Asked Questions
アポロ16号の主な目的は何でしたか?
主な目的は、月のデカルト高地における地質調査でした。特に、火山活動によって形成されたと考えられていた地域の岩石や土壌を採取し、月の成り立ちを解明することを目指していました。
月面車(LRV)はどのような役割を果たしましたか?
月面車は、宇宙飛行士が徒歩で移動するよりもはるかに遠い地点まで迅速に移動することを可能にしました。これにより、26.7kmという広範囲の調査と、多様な地点からのサンプル採取が実現しました。
どのような科学装置が月面に設置されましたか?
ALSEP(自動科学実験装置)の一環として、月内部の地震活動を記録する受動的地震実験装置や、磁場を測定する月面磁力計などが設置され、地球へデータを送信し続けました。
ミッションで持ち帰ったサンプルの量はどれくらいですか?
合計で約95.71kgの月面サンプルが地球に持ち帰られました。これらの物質は、その後の月地質学の研究において極めて重要な資料となりました。
司令船パイロットは月面に降りたのですか?
いいえ、トーマス・マッティングリーは司令船「キャスパー」に留まり、月周回軌道での運用を担当しました。彼は月面には降りませんでしたが、軌道上での船外活動を行い、重要なフィルムの回収任務を遂行しました。
References
- , p. 547.
- , p. 473.
- , p. 476.
- , p. 573.
- , p. 482.
- , p. 472.
- , p. 20.
- , p. 26.
- , p. 585.
- , p. 499.
📸 フォトギャラリー











![The view from the side of Stone Mountain, which Duke described as "spectacular"[107]](/images/e8/0e/e80ec1f4ef1905dee73f2a29cdfba2c7cf20eb5e81ba21fe43ea6489f315933c.jpg)




