地球や他の惑星の表面において、風が物質を削り、運び、そして積み上げることで地形を変化させる現象を風成プロセス(Aeolian processes)と呼びます。この言葉は、ギリシャ神話で風を司る神「アイオロス」に由来しています。
水による浸食に比べるとその威力は限定的ですが、植生が乏しく、土壌の水分が少ない乾燥地帯では、風は地形を決定づける極めて重要な要因となります。風成プロセスは、主に「浸食」「運搬」「堆積」という3つの段階を経て進行します。
Key Facts
- 風成プロセスとは、風による地表の浸食、運搬、堆積の総称である。
- 浸食の主因となる「デフレーション」には、表面クリープ、塩砕(サルテーション)、懸濁(サスペンション)の3つのメカニズムがある。
- 風によって運ばれた微細なシルトが堆積したものをロエスと呼び、農業に適した肥沃な土壌となる。
- 砂漠の20%程度は、広大な砂丘地帯であるエルグや砂丘群で構成されている。
- 風成プロセスは地球だけでなく、火星などの他惑星の地形形成にも関与している。
風による浸食のメカニズム
風による浸食は、主に「デフレーション」と「アブレーション(摩耗)」の2つの形態に分けられます。
デフレーション(風食)
デフレーションとは、風の乱気流によって地表から緩い物質が持ち上げられ、除去される現象です。これには粒子の大きさに応じた3つの運搬方式があります。
- 表面クリープ(Traction):大きな粒子が地表を転がったり滑ったりして移動する。全体の5〜25%を占める。
- 塩砕(Saltation):粒子が地表で跳ねながら短距離を移動する。最も支配的なメカニズムで、全体の50〜70%を占める。
- 懸濁(Suspension):微細な粒子が完全に風に乗り、長距離を運ばれる。全体の30〜40%を占める。
このデフレーションによって地表に窪みが形成されることがあり、これをブローアウトと呼びます。規模は直径3メートルの小さな窪みから、モンゴルや米国ワイオミング州に見られる数キロメートルに及ぶ巨大な陥没地まで多岐にわたります。

アブレーション(摩耗)
アブレーションとは、風に運ばれた砂粒が岩石などの地表に衝突し、表面を削り取る現象です。かつてはキノコ岩やタフォニ(蜂の巣状の風化)などの主要な原因と考えられていましたが、現在ではこれらの多くは雨による洗浄や差別風化、デフレーションによる影響が大きいと考えられています。風で運ばれる砂の多くは地表から50センチメートル以内に留まるため、高い位置にある岩石を削る力は限定的だからです。

物質の運搬と広域的な影響
風は砂だけでなく、さらに微細なシルト粒子を数千キロメートルにわたって運ぶ能力を持っています。このような塵の嵐(ダストストーム)によって運ばれたシルトが堆積したものをロエスと呼びます。
中国のロエス高原では、その堆積層が最大350メートルに達しており、ここから飛散したアジアの塵は遠くハワイまで運ばれることがあります。北米のアイオワ州西部でも最大40メートルの厚さのロエス層(ピオリア・ロエス)が確認されており、これらの土壌は農業において非常に高い生産性を誇ります。

堆積作用と砂丘の多様な形態
風が弱まったり、障害物にぶつかったりすると、運ばれていた物質が堆積します。堆積した形態によって、以下のような特徴的な地形が形成されます。
砂シートと小規模地形
砂シートは、緩やかな起伏を持つ平坦な砂の堆積層です。エジプト南部からスーダン北部に広がるセリマ砂シートは、面積が6万平方キロメートルに及び、基盤岩の上に薄い砂の層が広がっています。
砂丘の種類と特徴
砂丘は風向や砂の供給量によって、さまざまな形状に分かれます。
- 横方向砂丘(Transverse dunes):風向に対して直角に形成される砂丘。特に巨大な複合砂丘である「ドラ(Draa)」は、幅4,000メートル、高さ400メートルに達することもあります。
- 線状砂丘(Linear dunes):数十キロメートルにわたって伸びる細長い砂丘。季節的に風向が変化する環境で形成されると考えられています。
- 複合砂丘(Complex dunes / Star dunes):中心の頂点から放射状に稜線が伸びる星型の砂丘。あらゆる方向から強い風が吹く場所で形成され、垂直方向に大きく成長する特徴があります。

地球規模の風成システムと地質学的記録
地球上の陸地の20〜25%を占める砂漠の多くは、北緯・南緯10〜30度の地域に集中しています。これはハドレー循環による下降気流が気圧を高め、降水を抑制するためです。面積が125平方キロメートルを超える広大な砂丘地帯はエルグと呼ばれ、地球全体の陸地面積の約6%を占めています。
地質学的な記録においても、過去の巨大な風成システムが確認されています。例えば、北米のナバホ砂岩やナゲット砂岩は、かつて存在した世界最大級のエルグの痕跡であり、その厚さは最大700メートルに達します。これらの岩石に見られる丸みを帯びた石英粒子や、大規模な斜交層(クロスベディング)は、かつてここが風による砂の堆積地であったことを証明しています。

| プロセス | 主なメカニズム | 形成される代表的な地形・物質 |
|---|---|---|
| 浸食(デフレーション) | 表面クリープ、塩砕、懸濁 | ブローアウト(風食窪地) |
| 浸食(アブレーション) | 砂粒による物理的摩耗 | 岩石の表面摩耗 |
| 運搬 | 風による長距離移動 | ダストストーム(塵の嵐) |
| 堆積 | 風速の低下による沈降 | 砂丘(エルグ)、ロエス、砂シート |
Frequently Asked Questions
風成プロセスは砂漠だけで起こる現象ですか?
いいえ。乾燥地帯で最も顕著に現れますが、植生の少ない地域や土壌水分が不足している場所であれば、他の環境でも発生します。また、地球以外の惑星(火星など)でも同様のプロセスが確認されています。
ロエスと砂丘の砂は何が違うのですか?
主に粒子の大きさが異なります。砂丘を構成するのは主に砂サイズの粒子ですが、ロエスはさらに微細なシルトサイズの粒子が堆積したものです。そのため、ロエスは保水力が高く、農業に適した肥沃な土壌となります。
キノコ岩は風で削られてできたものですか?
かつては風による摩耗(アブレーション)が主因と考えられていましたが、現在は雨による洗浄や、岩石の硬さの違いによる差別風化、デフレーションなど、複数の要因が組み合わさって形成されたという説が有力です。
星型砂丘(複合砂丘)が形成される条件は何ですか?
風向が一定ではなく、複数の方向から強い風が吹く環境で形成されます。横方向への成長よりも垂直方向への成長が強く、砂を蓄積する「砂のシンク」としての役割を果たします。
エルグとは具体的にどのような場所ですか?
面積が約125平方キロメートルを超える、広大な砂丘地帯のことを指します。地球上の砂漠の約20%がこのようなエルグや砂丘群で構成されています。
References
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