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『8月のクジラ』伝説の名女優たちが演じた晩年の姉妹像と舞台裏

🗓 2026年8月14日

映画『8月のクジラ』(The Whales of August)は、1987年に公開されたアメリカのヒューマンドラマです。リンゼイ・アンダーソン監督がメガホンを取り、デヴィッド・ベリーによる同名の舞台作品を映画化した本作は、人生の終盤を迎えた二人の姉妹の複雑な関係性を静かに描き出しています。

本作の最大の魅力は、映画史に名を刻む伝説的な女優たちの共演にあります。特に、アメリカ映画の先駆者であるリリアン・ギッシュと、黄金時代の象徴であるベティ・デイヴィスという、世代を超えた名女優が競演したことは映画界にとって極めて稀な出来事でした。

Key Facts

  • 豪華キャスト:リリアン・ギッシュ、ベティ・デイヴィス、ヴィンセント・プライス、アン・サザンらが出演。
  • 俳優たちの集大成:リリアン・ギッシュ(当時93歳)とアン・サザンの遺作となり、ベティ・デイヴィスの最後から2番目の出演作となった。
  • 評価:脚本への賛否は分かれたものの、俳優陣の演技は絶賛され、アン・サザンがアカデミー助演女優賞にノミネートされた。
  • 意外なファン:世界的な巨匠、黒澤明監督が好んで挙げた映画の一つである。

物語の核心:埋まらない溝と記憶の断片

物語の舞台はメイン州の海岸沿いにある海辺の家です。フィラデルフィア出身の未亡人であるリビーとサラの姉妹は、毎年夏をここで過ごしています。人生の黄昏時にある彼女たちは、かつてこの地で過ごした若き日の記憶を呼び起こしますが、それは単なる懐古ではありません。

二人の間には、長年にわたって蓄積された嫉妬や誤解、そして拭い去れない苦い感情が横たわっています。身体的に衰え、性格が冷徹に変化してしまったリビーに対し、サラは寛容な態度で接し、姉との心の距離を縮めようと努めます。しかし、リビーの拒絶反応は強く、二人の間には深い溝が刻まれています。

そんな彼女たちの日常に、ロシアからの亡命者であるニコラス・マラノフと、快活な友人ティシャが加わることで、物語は動き出します。彼らの存在が触媒となり、姉妹は隠し続けてきた感情や真実を露わにしていくことになります。

制作の舞台裏:名女優たちの衝突と葛藤

プロデューサーのマイク・カプランは、リリアン・ギッシュの類まれなる才能を次世代に伝えるため、彼女をキャスティングしました。しかし、撮影現場ではベティ・デイヴィスとリリアン・ギッシュの不仲が深刻でした。

特にクレジットの表記順(トップビリング)を巡って対立し、デイヴィスはギッシュをほとんど無視したと言われています。また、デイヴィスはギッシュの聴覚障害によりキュー(演技の合図)が遅れることに苛立ち、一方でギッシュはデイヴィスの高圧的な態度に対し、わざと「聞こえないふり」をして対抗するという、静かな心理戦が繰り広げられていました。

また、キャスティング段階では、フレッド・アステアやキャサリン・ヘプバーンなど多くの大物俳優に打診されましたが、健康上の理由などで断られたケースが多く、最終的に現在のキャストが揃いました。なお、ベティ・デイヴィスとヴィンセント・プライスの共演は、1939年以来実に48年ぶりの再会となりました。

ロケーションと芸術的アプローチ

脚本のデヴィッド・ベリーは、自身の家族がピークス島に持っていた別荘での体験を物語のベースにしています。映画の撮影地を探すため、制作陣はカスコ湾の複数の島を巡り、最終的にクリフ島を選定しました。これにより、物語に不可欠な海辺の情景と、孤独感漂う雰囲気が見事に再現されました。

作品概要まとめ

『8月のクジラ』作品データ
項目 詳細
公開日 1987年10月16日
監督 リンゼイ・アンダーソン
上映時間 90分
予算 / 興行収入 300万ドル / 130万ドル
主な受賞・ノミネート アカデミー助演女優賞ノミネート(アン・サザン)、全米映画批評家協会賞主演女優賞(リリアン・ギッシュ)

Frequently Asked Questions

この映画は商業的に成功しましたか?

いいえ、国内での商業的な成功は限定的でした。予算300万ドルに対し、興行収入は130万ドルにとどまりました。

リリアン・ギッシュとベティ・デイヴィスの関係はどうでしたか?

撮影中は非常に険悪でした。クレジットの順序を巡る争いや、性格の不一致、身体的な不自由さからくる誤解などが重なり、互いに反目し合っていたことが記録されています。

どのような評価を受けた作品ですか?

批評家の反応は賛否両論でしたが、概ね肯定的でした。特に俳優陣の演技力については絶賛されており、ロジャー・エバートは4つ星のうち3つ星という高評価を与えています。

この映画が俳優にとってどのような意味を持つ作品でしたか?

リリアン・ギッシュとアン・サザンにとっての遺作となり、ベティ・デイヴィスにとってもキャリアの最終盤に位置する、文字通り「名女優たちの集大成」とも言える作品となりました。

黒澤明監督はこの映画についてどう語っていましたか?

具体的なコメントの詳細は不明ですが、黒澤監督が選んだ「お気に入りの映画100選」の中に本作が含まれていました。

References