1960年代後半から70年代初頭にかけて、アメリカのテレビ界に鮮やかな彩りを添えたのが『ドリス・デイ・ショー』です。CBSで放送されたこの作品は、映画界のトップスターであったドリス・デイが主役を務め、全5シーズン、128エピソードにわたって家族の絆や日常の喜びを描いた心温まるシットコム(シチュエーション・コメディ)でした。
しかし、この華やかな番組の裏側には、主演女優であるドリス・デイ自身の人生を揺るがすほどの深刻な葛藤と、法的な争いという衝撃的なドラマが隠されていました。

Key Facts
- 放送期間:1968年9月24日から1973年3月12日まで。
- 放送局:アメリカのCBSネットワーク。
- 総エピソード数:全5シーズンで計128話。
- 主演:映画スターのドリス・デイ。
- 制作会社:Arwin Productions。
- 特徴:道徳的で健全な家族像と、ドリス・デイのファッションへの情熱が反映された演出。
番組誕生に隠された衝撃の真実
多くの視聴者がこの番組を「心地よい娯楽」として楽しんでいましたが、ドリス・デイにとっての出演動機は極めて切実なものでした。彼女の当時の夫でありエージェントでもあったマーティン・メルチャーは、彼女の財産管理を完全に掌握していましたが、生前、彼女に内密にCBSと5年間の出演契約を結んでいました。
1968年にメルチャーが急逝した後、ドリスは自分がテレビ番組の主演に契約させられていたこと、そして信頼していた弁護士の不正な投資によって全財産を失い、多額の負債を抱えていたことを知ります。彼女がこのショーに出演し続けたのは、自身の名誉を守り、経済的な自立を取り戻して借金を返済するためという、強い責任感に基づいた決断でした。
その後、彼女は元弁護士を相手に詐欺と不正行為で訴訟を起こし、裁判所から約2,380万ドルの判決を勝ち取りましたが、実際に回収できた金額はごく一部に留まったとされています。

制作の舞台裏と撮影の苦労
撮影はハリウッドのゴールデン・ウェスト・スタジオで行われました。当時の映画撮影の手法を取り入れ、単一カメラによる撮影と、ドリスのアップにフィルターを使用するなどの工夫が凝らされていました。スタジオ観客を入れない形式で制作されたため、より映画に近い質感を持っていました。
しかし、撮影初期のドリスは精神的に非常に困難な状況にありました。劇中で「夫を亡くした未亡人」を演じなければならなかった時期は、現実でも夫を失った直後であり、撮影中に感情が溢れて涙し、中断を余儀なくされる場面が多々あったといいます。

また、私生活ではチャールズ・マンソン事件の影に怯えていた時期もあり、息子であるテリー・メルチャーが標的になる可能性があったため、自宅に私設警備員を配置するなど、緊張感のある日々を過ごしながら撮影に臨んでいました。
作品の魅力とファッションへのこだわり
番組の大きな見どころの一つが、ドリス・デイの洗練されたファッションです。彼女はもともと衣服への関心が強く、劇中の衣装の多くはロサンゼルスの高級百貨店ジョセフ・マグニンで購入した既製品でした。一部の視聴者から「秘書(後に編集助手)にしては贅沢すぎる」という声が上がった際、彼女は実際には手頃な価格の服であることを明かしています。
特にシーズン2以降、物語に組み込まれた「ファッションショー」の回は視聴率が非常に高く、最終シーズンには19もの衣装を披露する豪華な演出が行われました。これにより、彼女は「現代のビジネス界におけるスタイリッシュな働く女性」の象徴として高く評価されました。

番組概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 放送期間 | 1968年 - 1973年 |
| 全シーズン数 | 5シーズン |
| 総エピソード数 | 128話 |
| 主な出演者 | ドリス・デイ、フィリップ・ブラウン、トッド・スターク、デンバー・パイル |
| 制作会社 | Arwin Productions |
| 最高視聴率ランク | 第2シーズンで全米10位を記録 |
Frequently Asked Questions
ドリス・デイはなぜこの番組に出演したのですか?
亡くなった夫が彼女に無断で結んでいた契約を履行するため、そして不正投資で失った財産と負債を解消し、経済的な安定を取り戻すためという、責任感と必要性に迫られて出演しました。
番組の内容はどのようなものでしたか?
基本的には道徳的で健全な家族の日常を描いたシットコムです。未亡人となったドリス・マーティンが、2人の息子と共に父親の農場へ移り住むところから始まり、後にキャリアウーマンとしての活躍も描かれました。
ファッションショーの回が人気だったのはなぜですか?
ドリス・デイ自身のファッションへの情熱が反映されており、彼女がモデルとして最新のスタイルを披露する演出が視聴者に支持されたためです。これは番組内で最も視聴率の高いセグメントとなりました。
撮影中にどのような困難がありましたか?
夫を亡くした直後の喪失感から、撮影中に感情が高ぶり中断することがありました。また、チャールズ・マンソン事件に関連して身の危険を感じ、私設警備員を雇うなどの不安な状況下での撮影となりました。
番組の評価はどうでしたか?
第1シーズンこそ批評家から厳しい評価を受けましたが、第2シーズンには全米10位にランクインするなど、次第に安定した人気を獲得しました。
References
- Patrick, Pierre; McGee, Garry (2006). Que Sera, Sera: The Magic of Doris Day Through Television: Special Interviews with Doris Day and Friends. Albany, GA: BearManor Media. pp. 51–98.
- Patrick, Pierre; McGee, Garry (2006). Que Sera, Sera: The Magic of Doris Day Through Television: Special Interviews with Doris Day and Friends. Albany, GA: BearManor Media. pp. 99–142.
- Patrick, Pierre; McGee, Garry (2006). Que Sera, Sera: The Magic of Doris Day Through Television: Special Interviews with Doris Day and Friends. Albany, GA: BearManor Media. pp. 143–188.
- 965 North Parkway: "It's a Dog's Life," The Doris Day Show, season 5, episode 18, aired January 29, 1973.
- Patrick, Pierre; McGee, Garry (2006). Que Sera, Sera: The Magic of Doris Day Through Television: Special Interviews with Doris Day and Friends. Albany, GA: BearManor Media. pp. 177–178.
- "TV Times: May 19–May 25 [Friday, May 24, 10:30 p.m.]". Los Angeles Times. May 19, 1974. pp. N31.
- The pilot, titled "Young Love," was developed by Arwin Productions and directed by Norman Tokar. It is included in full on The Doris Day Show: Season 3, DVD, MPI Home Video, 2006, disc 4, "Bonus Features: 'Young Love' Pilot."
- Patrick, Pierre; McGee, Garry (2006). Que Sera, Sera: The Magic of Doris Day Through Television: Special Interviews with Doris Day and Friends. Albany, GA: BearManor Media. pp. 189–230.
- Patrick, Pierre; McGee, Garry (2006). Que Sera, Sera: The Magic of Doris Day Through Television: Special Interviews with Doris Day and Friends. Albany, GA: BearManor Media. pp. 231–290.
- Bingham, Dennis (Spring 2006). "'Before She Was a Virgin …': Doris Day and the Decline of Female Film Comedy in the 1950s and 1960s". Cinema Journal. 45 (3): 1 – via JSTOR.
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