1956年にエース・ブックスから出版された時の交差点』(The Crossroads of Time)は、アメリカの著名なSF作家アンドレ・ノートンによる野心的な作品です。本作は、単なる過去や未来への時間旅行ではなく、「もし歴史が別の道を辿っていたら」というifの世界、すなわち並行世界を舞台にした物語です。読者は主人公と共に、似ているようで決定的に異なる複数の地球を巡る旅へと誘われます。

Key Facts

  • 著者:アンドレ・ノートン(Andre Norton)
  • 初版刊行:1956年(アメリカ、Ace Books)
  • ジャンル:サイエンス・フィクション(SF)
  • シリーズ:クロスタイム(Crosstime)シリーズの第1作
  • 主要テーマ:並行世界への移動、代替歴史、サイキック能力
  • 翻訳:スペイン語、イタリア語、ドイツ語に翻訳済み

物語の根幹となる「クロスタイム」の概念

本作で描かれるのは、一般的なタイムトラベルとは異なるクロスタイム(Crosstime)という概念です。これは時間の前後(過去や未来)に移動するのではなく、同じ時間軸に存在する「異なる歴史を歩んだ世界」の間を横断することを指します。日付は変わりませんが、その世界の文明レベルや政治状況、社会構造は、歴史上の分岐点によって劇的に変化しています。

登場人物の相関

物語は、予知に近い危険察知能力を持つ青年ブレイク・ウォーカーを中心に展開します。彼は偶然にも、高度な科学技術と精神能力を持つ別世界から来たエージェントたちに巻き込まれていきます。

  • ブレイク・ウォーカー:主人公。幼少期に捨てられた過去を持ち、直感的に危険を察知する能力に長けている。
  • マーク・キットソン(本名:コム・ヴァルト):クロスタイム・エージェントのチームリーダー。
  • ジェイソン・サクストン(本名:ホーマン・ティリス):チームの最年長メンバー。
  • その他のメンバー:スタン・アースキン(パグ・ロ・シグ)、ホイト(ファル・コルフ)。
  • クモート・ヴォ・プランジ:世界支配を企むサイコパスな悪役。時に「レフティ・コナーズ」という小悪党に変装して潜伏する。

あらすじ:多層的な世界を巡る逃走劇

1955年のニューヨーク。大学進学のためにオハイオからやってきたブレイクは、自身の予知能力に従ってある男性を誘拐犯から救い出します。救った相手こそがマーク・キットソンであり、ここからブレイクは、地球よりも遥かに進んだ文明を持つ世界から来たエージェントたちの活動に深く関わることになります。

彼らの目的は、凶悪犯プランジの追跡でした。しかし、ブレイクはプランジの手によって拉致され、偶然にも並行世界へ移動する装置を起動させてしまいます。そこからブレイクの孤独な世界巡りが始まります。

彼が最初に辿り着いたのは、石造りの塔が点在し、肉食の怪物や巨大なロボットムカデが徘徊する荒廃したマンハッタンでした。さらに移動した先には、ナチス・ドイツが英国戦役(アシカ作戦)に成功し、アメリカまで侵攻したという衝撃的な代替歴史の世界が広がっていました。そこでは文明が崩壊し、セントラルパークを拠点とする「サージ」という慈悲深い独裁者が、治安を乱す「ハイダー(潜伏者)」たちと戦いながら文明の再建を試みていました。

プランジはこの混乱した世界で「アレス」と名乗り、ハイダーたちを操って高度な兵器を配ることで権力を握ろうとしていました。最終的に、キットソン率いるエージェントチームとサージの軍勢が協力し、プランジの野望を打ち砕きます。激しい精神的な攻防戦(サイキック・デュエル)の末にプランジは拘束されましたが、世界の秘密を知りすぎたブレイクは、彼らと共に元の世界ではない、エージェントたちの故郷である世界へと旅立つことになります。

作品概要まとめ

『時の交差点』作品データ
項目 詳細
初版ページ数 169ページ(ペーパーバック版)
カバーアート ロバート・シュルツ
後継作品 『Quest Crosstime』
OCLC番号 904427840

Frequently Asked Questions

この物語における「時間旅行」とは何が違うのですか?

一般的な時間旅行が「過去」や「未来」へ行くのに対し、本作の「クロスタイム」は、同じ時間帯に存在する「異なる歴史を辿った別の地球」へ移動することを指します。

主人公ブレイクの特殊能力は何ですか?

ブレイクは、これから起こる危険を事前に察知する強い予感(予知能力のようなもの)を持っており、それが物語の展開や生存に重要な役割を果たします。

作中に登場する代替歴史の世界はどのような設定ですか?

特に印象的なのは、ナチス・ドイツが第二次世界大戦で勝利し、アメリカ合衆国まで侵攻して文明が崩壊した世界です。ニューヨークは廃墟となり、生き残った人々が小規模なコミュニティを作って生活しています。

物語の結末はどうなりますか?

悪役のプランジは、エージェントたちの精神的な戦いによって敗北し、拘束されます。主人公のブレイクは、並行世界の機密に触れたため、元の世界に戻らずエージェントたちの故郷の世界へ同行することになります。

この本はシリーズ作品の一部ですか?

はい。アンドレ・ノートンの「クロスタイム」シリーズの第1作であり、後に『Quest Crosstime』という続編が刊行されています。