1962年に公開された『That Touch of Mink』(邦題:ミンクの触感)は、洗練された都会的な雰囲気と、男女の絶妙な心理戦が魅力のロマンティック・コメディです。デルバート・マン監督の手により、当時のニューヨークを舞台に、自立した女性と遊び慣れた実業家の恋の行方が軽快に描かれました。
本作は、単なるラブストーリーに留まらず、当時の社会における男女の価値観や、結婚に対する考え方の変化をユーモラスに提示しています。特に主演のキャリー・グラントとドリス・デイの化学反応は素晴らしく、大人の余裕と純真さがぶつかり合う展開に観客を惹きつけました。
Key Facts
- 主演:映画界のレジェンド、キャリー・グラントとドリス・デイが共演。
- 興行成績:1962年の全米興行収入第4位を記録した大ヒット作。
- 受賞歴:ゴールデングローブ賞の作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。
- 象徴的な車:劇中に登場するシトロエン DS 19が、作品のモダンな印象を際立たせている。
- 評価:Rotten Tomatoesで78%の支持を得ており、今なお高く評価されている。
物語のあらすじ:プライドと情熱の攻防戦
物語は、仕事を探しているニューヨークのキャリアウーマン、キャシー・ティンバーレイクが、ある不運な出来事をきっかけに実業家のフィリップ・シェーンと出会うところから始まります。フィリップの運転するロールス・ロイスが跳ね上げた泥がキャシーのドレスを汚したことで、二人の運命的な出会いが果たされました。
互いに強い惹かれ合いを感じる二人でしたが、関係性の構築において決定的な価値観の違いがありました。フィリップは結婚を伴わない情熱的な関係を望みますが、キャシーは結婚という形を重視し、安易に妥協することを拒みます。この「結婚か、情事か」という駆け引きが、物語の主軸となります。
物語の中盤では、フィリップの誘いでバミューダ諸島へ旅しますが、緊張から神経性の発疹が出たり、お酒の飲み過ぎでバルコニーから転落したりと、キャシーの不器用な一面がコミカルに描かれます。また、フィリップの財務マネージャーであるロジャーと、彼のセラピストとの間で起こる勘違いというサブプロットが、物語にさらなる笑いを添えています。
最終的に、キャシーはフィリップに嫉妬させるための大胆な作戦を仕掛け、二人は結ばれることになります。皮肉にも、新婚旅行では今度はフィリップの方が緊張から発疹を出してしまうという、対照的な結末が用意されていました。
制作の舞台裏とトリビア
キャスティングにおいて、キャリー・グラントの影響力は大きく、彼がファンであった女優のオードリー・メドウズをコンニー役に推薦しました。また、ドリス・デイの回想によれば、グラントは非常にプロフェッショナルで細部にまでこだわり、衣装の選択やセットの装飾にまで自らの蔵書を持ち込むなど、徹底したこだわりを持って撮影に臨んでいたといいます。
また、映画の視覚的な象徴となっているのが、フランスの自動車メーカー、シトロエンのオープンカーです。キャリー・グラントが直接メーカーに連絡して手配したこの車両は、当時の最新モデルであり、映画のモダンな世界観を演出すると同時に、絶好のプロモーションとなりました。

興味深い点として、ドリス・デイが劇中で提示される「結婚候補者リスト」の中に、彼女の共演回数が多いロック・ハドソンが名前を連ねていたことが挙げられます。実際にはハドソンがフィリップ役に期待されていましたが、監督の意向でキャリー・グラントが起用されました。
作品の評価と文化的影響
公開当時、本作は商業的に大成功を収めました。特にニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールでは、わずか5週間で100万ドルを突破するという当時の劇場記録を塗り替える快挙を成し遂げました。
批評面では、ドリス・デイが演じる「自立しつつも保守的な女性像」が、当時の観客に新鮮に映りました。現代の視点から見れば古風に感じられる部分もありますが、当時の映画としては、結婚前の性的な関係をタブー視せず、軽妙なユーモアとして描いた先駆的な作品であったと分析されています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 公開日 | 1962年6月14日 |
| 監督 | デルバート・マン |
| 主要キャスト | キャリー・グラント、ドリス・デイ、ギグ・ヤング |
| 上映時間 | 99分 |
| 興行収入 | 1,760万ドル |
| 主な受賞 | ゴールデングローブ賞 作品賞(コメディ・ミュージカル部門) |
Frequently Asked Questions
この映画の主なテーマは何ですか?
主に、男女間の恋愛における価値観の対立と妥協、そして自立した女性のプライドと愛情の葛藤がテーマとなっています。特に「結婚」という形式を重視する女性と、自由な関係を求める男性の心理戦が描かれています。
劇中に登場する車は何というモデルですか?
シトロエンの「DS 19 Décapotable Usine」というオープンカーモデルです。主演のキャリー・グラントが直接メーカーに依頼して手配したと言われています。
ドリス・デイとキャリー・グラントの関係はどうでしたか?
ドリス・デイの自伝によると、グラントは非常にプロフェッショナルで親切でしたが、私生活については非常に控えめで距離を置く人物であったと記されています。
映画の結末はどうなりますか?
紆余曲折を経て、フィリップとキャシーは結婚します。エピローグでは、数ヶ月後に二人が子供を連れて公園を散歩する幸せな姿が描かれ、ハッピーエンドで締めくくられます。
この作品はどのような賞を受賞しましたか?
ゴールデングローブ賞の作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞したほか、ローレル賞で作品賞および主演男女賞、ライターズ・ギルド賞で最高のコメディ脚本賞を受賞しています。
References
- Box Office Information for That Touch of Mink. The Numbers. Retrieved June 13, 2013.
- https://www.tcm.com/articles/157884/behind-the-camera
- "AFI CATALOG OF FEATURE FILMS THE FIRST 100 YEARS 1893–1993 THAT TOUCH OF MINK (1962)". American Film Institute.
- "Cary Grant's Beige Summer Jacket and Citroën in That Touch of Mink". BAMF Style. July 9, 2019.
- Top 20 Films of 1962 by Domestic Revenue
- "Million-$ Gross In 5 Weeks; 'Mink' A Radio City Wow". . July 18, 1962. p. 1.
- "B'way as Spotty as Weather; 'Town' Big $41,000, 'Guns' Only Okay $20,000, 'Grimm' Giant 59G, 'Mink' 151G, 10th". . August 22, 1962. p. 9.
- That Touch of Mink, , retrieved October 28, 2016
- "REVIEWS 'That Touch of Mink'". Retrieved September 19, 2020.
- Emanuel Levy (April 10, 2012). "That Touch of Mink (1962): Romantic Comedy Starring Cary Grant and Doris Day".