愛する人を、あるいは自分自身を、地球という枠を超えて無限に広がる宇宙へと送り出す。そんなSFのような物語が、現代では「宇宙葬(メモリアルスペースフライト)」として現実の選択肢となっています。火葬された遺骨の一部をロケットに搭載し、地球の軌道上や月、さらには遥か彼方の深宇宙へと届けるこの儀式は、単なる埋葬を超えた究極の旅と言えるでしょう。
一般的に、宇宙葬では打ち上げコストを抑え、より多くの人が利用できるように、遺骨の全量ではなく少量のサンプルのみを搭載します。目的地によって、大気圏再突入時に燃え尽きるプランや、月などの天体に到達するプラン、あるいは短時間で宇宙空間へ到達して回収されるサブオービタル飛行など、多様な形式が提供されています。

Key Facts
- 宇宙葬の定義:火葬した遺骨を宇宙空間や天体へ打ち上げる供養形式。
- 多様な目的地:地球低軌道、月表面、太陽系外へと向かう深宇宙など。
- コスト抑制:打ち上げ重量を減らすため、通常は遺骨の一部のみを搭載する。
- 先駆的な事例:1992年のジーン・ロッデンベリー氏の打ち上げが最初とされる。
- ペット対応:人間だけでなく、ペット専用の宇宙葬サービスも展開されている。
宇宙葬の歴史と概念の誕生
宇宙へ遺骨を運ぶというアイデアは、意外にも古くから存在していました。1931年にSF作家ニール・R・ジョーンズが中編小説『ザ・ジェイムソン・サテライト』の中でこの概念を提示し、その後1965年の映画『The Loved One』や1977年の新聞記事などを通じて、商業サービスとしての可能性が議論されるようになりました。
実用化への大きな一歩となったのは1992年です。NASAのスペースシャトル・コロンビア号(STS-52ミッション)により、『スタートレック』の生みの親であるジーン・ロッデンベリー氏の遺骨サンプルが宇宙へ運ばれ、地球へと帰還しました。

その後、1997年には民間企業Celestis社による初の商業宇宙葬「Earthview 01: The Founders Flight」が実施されました。ペガサスロケットを用いて24名分の遺骨を楕円軌道に乗せ、約5年間にわたり地球を周回した後、2002年にオーストラリア北東上空で大気圏に再突入しました。この便にはロッデンベリー氏やティモシー・リアリー氏などの著名人も含まれていました。

目的地別の打ち上げ形式
地球軌道およびサブオービタル飛行
最も一般的なのが地球周回軌道への打ち上げです。多くのケースでは、最終的に大気圏に再突入して燃え尽きることで、星へと還る演出がなされます。一方、軌道速度に達せず宇宙の境界線まで到達して戻ってくる「サブオービタル飛行」は、コストを抑えた手法として利用されており、遺骨は回収されるか、あるいはそのまま宇宙に散布されます。

月への旅(月葬)
月への打ち上げは、より特別な旅として位置づけられています。初の事例は、天文学者のユージン・メルル・シューメーカー氏の遺骨がNASAの「ルナ・プロスペクター」に搭載されたことです。1998年に打ち上げられたこの探査機は、ヘール・ボップ彗星やアリゾナ州の隕石クレーターの画像、そしてシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の一節を刻んだ真鍮箔と共に、1999年に月の南極地域に衝突しました。
深宇宙への旅
太陽系を飛び出し、永遠に宇宙を旅し続けるプランもあります。冥王星を発見した天文学者クライド・トンボー氏の遺骨サンプルは、NASAの探査機「ニューホライズンズ」に搭載されました。これは人類の遺骨として初めて太陽系を脱出する事例となります。
宇宙葬を支えるビジネスと現状
現在、複数の企業が「メモリアルスペースフライト」という名称でサービスを提供しています。かつてはElysium Space社などが専用のCubeSat(超小型衛星)を用いた打ち上げを試みるなど、技術的な挑戦も続いてきました。また、2014年にはペット向けの宇宙葬サービス「Celestis Pets」も開始され、家族の一員である動物たちにも星への旅が開かれています。

| 企業名 | 設立年 | ステータス | 提供目的地 |
|---|---|---|---|
| Celestis | 1994年 | 活動中 | 地球軌道、地球帰還、月表面、深宇宙 |
| Elysium Space | 2013年 | 活動停止 | 地球軌道、月表面 |
| Space NTK | 2017年 | 活動中 | 地球軌道、月表面 |
| Beyond Burials | 2020年 | 活動中 | 地球軌道、月表面 |
| Space Beyond | 2025年 | 活動中 | 地球軌道 |
宇宙葬に名を刻む人々
宇宙葬は、宇宙への強い憧れを持っていた科学者や芸術家にとって、人生の最終章を飾る最高の手段となっています。例えば、日本の漫画家・アニメーターである松本零士氏は、将来的にElysium Spaceのミッションで遺骨の一部を宇宙へ送る意向を表明しています。
また、宇宙飛行士のゴードン・クーパー氏や、女優のニシェル・ニコルズ氏など、宇宙開発の歴史に深く関わった人々や、宇宙をテーマにした作品で世界を魅了した人々が、実際に宇宙へと旅立っています。
Frequently Asked Questions
宇宙葬では遺骨をすべて打ち上げるのですか?
いいえ、通常はごく一部のサンプルのみを打ち上げます。これは、宇宙への打ち上げコストが重量に依存するためであり、少量を搭載することで費用を抑え、より多くの方が利用できるようにしています。
打ち上げられた遺骨はどうなりますか?
プランによって異なります。地球軌道プランの場合は、数年後に大気圏に再突入して燃え尽きることが一般的です。月葬の場合は月表面に到達し、深宇宙プランの場合は太陽系外へと旅を続けます。
ペットでも宇宙葬は可能ですか?
はい、可能です。Celestis社などがペット専用のメモリアルスペースフライトサービスを提供しており、動物の遺骨を宇宙へ送ることができます。
宇宙葬の歴史の中で、最初に打ち上げられたのは誰ですか?
公式な記録では、1992年にNASAのスペースシャトル・コロンビア号で運ばれた『スタートレック』の創造主、ジーン・ロッデンベリー氏が最初とされています。
民間企業による宇宙葬は安全に運用されていますか?
多くのミッションが成功していますが、ロケットの故障による失敗例も存在します。例えば、2024年1月の月面ミッションでは機体故障により月へ到達できず、大気圏に再突入した事例があります。
References
- "The Jameson Satellite" (Amazing Stories, July 1931; Amazing Stories, April 1956 (reprint); Ace Books collection #1, 1967.
- goodgoodbye.com/film-and-video-reviews/funeral-films-the-loved-one/
- John Hinterberger: The Seattle Times Sunday Magazine, page 3, April 3, 1977.
- "Celetis Launch Manifest". CelestisInc. Retrieved March 14, 2014.
- 1 2 "Shuttle bore Roddenberry's ashes". . April 29, 1994. Retrieved March 13, 2014.
- "Celestis Memorial Spaceflights – The Founders Flight". CelestisInc. Archived from the original on March 15, 2014. Retrieved March 14, 2014.
- Stiles, Lorie (January 6, 1998). "Eugene Shoemaker Ashes Carried on Lunar Prospector". University of Arizona News Services. Retrieved August 6, 2015.
- Porco, Carolyn. "The Eugene M. Shoemaker Tribute". Diamond Sky Productions. Retrieved June 8, 2013.
- Porco, Carolyn C. (February 2000). "Destination Moon". Astronomy. Retrieved June 8, 2013.
The next day, I drove to Phoenix for a flight to Ames Research Center in California, where the following day, a Monday, I delivered the whole package to Scott Hubbard.
- Williams, David. "Lunar Prospector". NASA Space Science Data Coordinated Archive, NASA Goddard Space Flight Center. Retrieved August 6, 2015.
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