南米大陸を北西から南東へと斜めに横切るように、広大な乾燥地帯が連なっていることをご存知でしょうか。これは乾燥帯の対角線(Arid Diagonal)と呼ばれ、ペルー沿岸からボリビア、チリを経て、アルゼンチンのパタゴニアに至るまで、乾燥および半乾燥気候が連続的に分布している地域を指します。
この地域には、世界的に有名なアタカマ砂漠をはじめ、セチュラ砂漠、モンテ砂漠、そしてパタゴニア砂漠といった多様な砂漠地帯が含まれています。この特異な気候帯は、単なる地理的な特徴にとどまらず、南米の植物相の分布や生態系の分断に決定的な役割を果たしてきました。

Key Facts
- 地理的範囲:ペルー北西岸からアルゼンチン南東部のパタゴニアまでを斜めに結ぶ乾燥地帯。
- 主要な砂漠:アタカマ、セチュラ、モンテ、パタゴニアの各砂漠を包含する。
- 生態学的役割:チリやアルゼンチン南部の温帯・亜熱帯林を、南米の他の森林地帯から地理的に隔離している。
- 形成要因:アンデス山脈による障壁効果と、冷たいフンボルト海流の流入が主因。
- 歴史的背景:1935年にフランスの地理学者エマニュエル・ド・マルトンによって提唱された概念。
乾燥帯が形成されたメカニズムと起源
この広大な乾燥地帯は、新第三紀(Neogene)から存在しており、主に地質学的な変動と海洋気候の相互作用によって形成されました。特に重要な要因は以下の2点です。
1. アンデス山脈の隆起による障壁
アンデス山脈が隆起したことで、湿った空気の流れが物理的に遮断されました。北部の地域では、南太平洋高気圧と山脈が貿易風をブロックし、南部のパタゴニア地域では、偏西風が運ぶ湿気が山脈に遮られる雨影効果(山脈の風下側で降水量が減少する現象)が発生しました。これにより、山脈の東側や特定の沿岸部で極端な乾燥が進みました。
2. 海流の影響
南米西海岸に沿って流れる冷たいフンボルト海流(南極由来の寒流)の定着も、北部の乾燥化を加速させました。冷たい海水面は空気の対流を抑制し、降雨を妨げる要因となります。
なお、南緯32度53分(メンドーサ南方)以降は、アンデス山脈の標高が下がるため、一部の湿気が内部に浸透します。その結果、より南の緯度では、最も乾燥したエリアが山脈から離れ、パタゴニアの大西洋沿岸へと移動するという特徴が見られます。
生物地理学的な影響と概念の変遷
乾燥帯の対角線は、第四紀の氷河作用とともに、チリおよびアルゼンチンの植生分布を決定づける主要な要因となりました。この乾燥地帯が障壁となることで、南部の温帯林や亜熱帯林は、大陸の他の森林地帯から切り離され、独自の進化を遂げることとなりました。
この概念は、1935年にエマニュエル・ド・マルトンが著書『Problème des régions arides Sud-Américaines』で初めて提唱しました。当初の定義ではチリ北部のアントファガスタからパタゴニア北岸までとされていましたが、1995年にマルガリータ・ゴンザレス・ロヤルテらによって、ペルー北岸まで範囲が拡張され、現在の定義に至っています。
南米乾燥帯の概要まとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 構成する主な砂漠 | セチュラ、アタカマ、モンテ、パタゴニア |
| 主な気候要因 | 貿易風の遮断、雨影効果、フンボルト海流 |
| 地質学的起源 | 新第三紀(アンデス山脈の隆起など) |
| 生態学的影響 | 南米南部森林の地理的隔離と植生分布の制御 |
Frequently Asked Questions
乾燥帯の対角線とは具体的にどのような地域ですか?
南米のペルー北西岸からアルゼンチンのパタゴニア南東までを斜めに結ぶ、乾燥および半乾燥気候が連続して分布する帯状の地域のことです。
なぜこの地域はこれほどまでに乾燥しているのですか?
主にアンデス山脈が湿った空気の流れを遮る障壁となっていること(雨影効果)と、西海岸に流れる冷たいフンボルト海流が降水を抑制しているためです。
この乾燥帯は生態系にどのような影響を与えましたか?
チリやアルゼンチン南部の温帯・亜熱帯林を、南米の他の森林地帯から物理的に分断し、隔離したため、地域の植生分布に大きな影響を与えました。
「乾燥帯の対角線」という言葉は誰が作ったのですか?
フランスの地理学者エマニュエル・ド・マルトンが、1935年の著作の中で初めてこの概念を提唱しました。
パタゴニア地方では乾燥地帯の位置にどのような特徴がありますか?
南緯32度53分以南ではアンデス山脈の高さが低くなるため、最も乾燥したエリアが山脈から離れ、大西洋沿岸側に位置するようになります。
References
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