TRPGの歴史において、初期の『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』が持っていたシンプルさと緊張感は、多くのプレイヤーを惹きつけて止みません。そこで注目を集めているのがレトロクローンという手法です。これは、過去の特定の版のルールを現代的に再構成し、互換性を維持しながらも遊びやすくしたゲームのことを指します。
本記事では、古き良き時代のゲーム体験を再現し、現代のテーブルに届ける代表的なレトロクローン作品を紹介します。
主要なレトロクローンの特徴まとめ
数あるレトロクローンの中でも、特に影響力の強い作品とそのベースとなったルールを一覧にまとめました。
| 作品名 | ベースとなったルール | 主な特徴 |
|---|---|---|
| OSRIC | AD&D 第1版 | 包括的なインデックスを備えた再現版 |
| Old-School Essentials | 1981年版 Basic/Expert (B/X) | 高い互換性と徹底した整理・索引 |
| Swords & Wizardry | 1974年版 オリジナルD&D | 3つの異なるルールボリュームを展開 |
| Basic Fantasy RPG | 1981年版 Basic/Expert (B/X) | 上昇するAC(アーマークラス)を採用 |
| Labyrinth Lord | 1981年版 Basic/Expert (B/X) | レベル上限を20まで拡張 |
Key Facts
- レトロクローンとは、古い版のTRPGルールを現代向けに再構築した互換ゲームのこと。
- 多くの作品が1970年代から80年代のD&D(B/XやAD&Dなど)をモデルにしている。
- 単なるコピーではなく、レベル上限の引き上げや、ルールの整理、現代的な表記への変更が行われている。
- 無料配布やプリントオンデマンド形式で提供される作品が多く、アクセスしやすい。
1980年代の黄金期を再現するB/X系クローン
1981年に登場したBasicセットとExpertセット(通称B/X)は、多くのレトロクローンの基盤となっています。
Old-School Essentials (OSE)
Gavin Norman氏によって設計されたOSEは、B/Xルールの忠実な再現と、現代的な使いやすさの両立を目指しています。特に情報の整理と索引の充実が特徴で、「Classic Fantasy」と、AD&D第1版の要素を取り入れた「Advanced Fantasy」の2つのバージョンが存在します。また、一冊にまとまった形式と、分割されたモジュール形式のどちらでも利用可能です。
Basic Fantasy RPG
Chris Gonnerman氏によるこの作品は、B/Xとの高い互換性を持ちながら、d20システムのような「数値が高いほど防御力が高い」上昇式アーマークラスを採用しています。また、種族とクラスを分離させた点も大きな変更点です。
Labyrinth Lord
Daniel Proctor氏が手掛けた本作は、B/Xベースでありながら、キャラクターの成長上限を20レベルまで拡張しています(オリジナルは14レベルまで)。また、AD&Dへの敬意として、クレリックが1レベルから呪文を使用できる仕様になっています。
Mazes & Perils および Blueholme
1977年版のBasicセット(John Eric Holmes編集)をモデルにした作品に、Mazes & PerilsとBlueholmeがあります。前者はレベル上限を12まで広げ、後者は「Prentice Rules」として低レベル帯をカバーし、さらに高レベル向けの「Journeymanne Rules」や詳細な「Compleat Rules」を展開しています。
初期D&DとAD&Dを継承する作品群
B/X以前のオリジナル版や、より複雑なAD&D(Advanced Dungeons & Dragons)を再現した作品も存在します。
Swords & Wizardry
1974年のオリジナルD&Dをエミュレートした作品です。シンプルさを追求した「White Box」、標準的な「Core」、そして拡張ルールを網羅した「Complete」の3つのエディションが用意されており、プレイヤーの好みに合わせた遊び方が可能です。
OSRIC
AD&D第1版を再構築したOSRIC(Old School Reference and Index Compilation)は、レトロクローンの中でも非常に成功した例の一つです。2006年に初版が登場し、2013年にはv2.2までアップデートされました。
For Gold & Glory
1989年のAD&D第2版をベースにした作品で、Justen Brown氏とMoses Wildermuth氏によって制作されました。無料でダウンロードできるほか、書籍形式でも提供されています。
独自の解釈とパロディを取り入れた作品
Dark Dungeons
1991年の『Rules Cyclopedia』を主軸に、1989年の『Spelljammer』の設定を組み込んだユニークな作品です。名称やサンプルキャラクターにパロディ要素が含まれているのが特徴です。基本的には1983〜85年のBasic、Expert、Companion、Masterセットと互換性がありますが、不死者レベルのルールに関しては1993年のサプリメントに基づいているため、1985年のImmortals Setとは互換性がありません。
Frequently Asked Questions
レトロクローンとオリジナル版の最大の違いは何ですか?
基本的にはルールの核となる部分は同じですが、現代のプレイヤーが使いやすいようにレイアウトが改善されていたり、索引が追加されていたりします。また、一部の作品ではレベル上限の変更や、計算方法の簡略化などの調整が行われています。
古いD&D向けに書かれたシナリオはそのまま使えますか?
多くのレトロクローンは互換性を重視して設計されているため、ほとんどの場合、修正なしあるいは最小限の調整でそのままプレイ可能です。特にB/X系クローンであれば、当時のB/X向けシナリオがそのまま利用できます。
どのレトロクローンから始めるのがおすすめですか?
整理されたルールと使いやすさを求めるなら「Old-School Essentials」、極限までシンプルな初期体験を求めるなら「Swords & Wizardry (White Box)」が適しています。
「上昇式アーマークラス」とは何ですか?
古典的なD&Dでは「数値が低いほど防御力が高い」という逆説的な仕組みでしたが、これを現代の多くのRPGのように「数値が高いほど防御力が高い」形式に変更したものです。Basic Fantasy RPGなどで採用されています。