← ホームへ戻る

Quest Crosstimeアンドレ・ノートンが描く並行世界への旅

🗓 2026年8月16日

SF黄金時代の巨匠アンドレ・ノートンによる『Quest Crosstime』(1965年刊行)は、緻密な世界構築とスリリングな展開が魅力の作品です。前作『The Crossroads of Time』から続く物語であり、異なる時間軸や並行世界を飛び越える「クロスタイム」という概念を軸に、政治的陰謀と個人の成長が交錯します。

物語の舞台となるのは、高度な文明を持つ並行地球「Vroom(ヴルーム)」です。ここでは、選ばれたエージェントたちが「クロスタイム・コープ」という組織に属し、様々な時間軸の間で密かな交易や監視を行っています。

Key Facts

  • 著者:アンドレ・ノートン(アメリカの著名なSF作家)
  • 初版刊行:1965年(The Viking Press)
  • ジャンル:サイエンスフィクション
  • シリーズ:ブレイク・ウォーカー・シリーズ(前作:The Crossroads of Time)
  • 主要設定:並行世界間の移動と、テレパシー能力(テレダイナミクス)の活用

物語を彩る主要キャラクター

本作では、特殊な能力を持つ者と持たざる者の対比が重要な役割を果たします。

  • ブレイク・ウォーカー:本作の主人公。新米の「アプト・ウォーズマン(見習い監視員)」として活動。他の住民のようなテレパシー能力は持たないが、危険を察知する鋭い予感と、精神的な障壁(マインドブロック)によりテレパスの干渉を受けないという特異体質を持つ。
  • コム・ヴァルト:ブレイクの上官であり、熟練のマスター・ウォーズマン。
  • パグ・ロ・シゲ:ブレイクの同僚。技術的な才覚に長けたエージェント。
  • エルク・ロガン:Vroomの統治評議会「ハンドレッド」の一員。クロスタイム移動の監督責任を担う。
  • マーフィー&マーヴァ・ロガン:エルクの双子の娘。互いに深く共鳴し合う強力なテレパス。
  • サウル・トケクロプス:「ハンドレッド」のメンバーでありながら、権力欲に駆られた野心家。既存の交易システムを破壊し、略奪による支配を目論む。

あらすじ:失踪した少女と並行世界の陰謀

物語は、マーヴァ・ロガンが生命の存在しない不毛な地球を訪れた際に失踪したことから始まります。彼女の双子の姉マーフィーは、妹が生存していることを確信していましたが、すでに元の時間軸にはいないことを悟ります。そこで、初めての単独任務に就いたブレイク・ウォーカーが、妨害工作による困難を乗り越え、マーフィーを救出することから物語が動き出します。

手がかりを追った捜索チームは、ある特異な歴史を持つ世界へと降り立ちます。そこは、1485年のボズワースの戦いでリチャード3世が勝利し、さらに新世界においてコルテスやピサロがメソアメリカ文明の征服に失敗した世界でした。20世紀となったその世界では、新ブリテン国とトルテカ帝国がミシシッピ川を挟んで冷戦状態にあり、緊張感漂う中で限定的な交易が行われていました。

潜入捜査の末、一行はマーヴァを救出することに成功しますが、それは巧妙な罠でした。彼らは再び生命のない死の地球へと連行され、飢えに追い込まれます。しかし、パグ・ロ・シゲが廃墟の通信設備から急造したテレパシー増幅装置により、救助を呼ぶことに成功。彼らはトケクロプスの追手から逃れたウォーズマンたちの避難所へと辿り着きます。

最終局面では、ブレイクが単身で敵陣に乗り込み、トケクロプスに寝返ったふりをして内部から崩壊させるという大胆な作戦を展開します。強力な増幅装置と仲間たちの連携により、ついに独裁を企んだトケクロプスを制圧し、乱れたクロスタイム交易の秩序を取り戻すのでした。

作品概要まとめ

本作の基本情報を以下の表にまとめます。

『Quest Crosstime』作品データ
項目 詳細
著者 アンドレ・ノートン
初版発行年 1965年
出版社 The Viking Press(米国)
ハードカバー頁数 253ページ
カバーアート 田代幸雄
OCLC番号 761231222

Frequently Asked Questions

この小説は単独で読むことができますか?

本作は『The Crossroads of Time』の続編であり、同じ登場人物が登場します。物語の背景やキャラクターの関係性をより深く理解するためには、前作から読み始めることが推奨されます。

「クロスタイム」とはどのような設定ですか?

異なる歴史を辿った並行世界(タイムトラック)の間を移動することを指します。作中では、Vroomという世界の組織がこの技術を管理し、世界間での交易や監視を行っています。

主人公のブレイク・ウォーカーにはどのような能力がありますか?

他の登場人物のような能動的なテレパシー能力は持っていません。しかし、危険を察知する直感的な予感と、他者の精神的な干渉を完全に遮断する「マインドブロック」という特殊な耐性を備えています。

物語に登場する「リチャード3世が勝利した世界」とはどのような場所ですか?

現実の歴史とは異なり、イギリスの王位継承争いでリチャード3世が勝利し、さらにアメリカ大陸の先住民文明がスペインの征服を退けた世界です。結果として、20世紀には新ブリテン国とトルテカ帝国という二大勢力が対立する独自の政治状況が生まれています。

悪役のサウル・トケクロプスは何を目論んでいましたか?

彼は、クロスタイム・コープが行っている慎重な交易システムを嫌い、自らの私兵を用いて他世界を略奪し、絶対的な権力を握ることで自らの劣等感を埋めようとしていました。

References

  1. Schlobin, Roger C. and Irene R. Harrison, Andre Norton: A Primary and Secondary Bibliography, Pg 7, NESFA Press (Framingham, Massachusetts)