Que sais-je?(ケ・セ・ジュ):フランスが誇る知のコンパクト・百科事典
専門的な知識を、誰もが手に取りやすい形式で提供する。そんな知的探究心へのアプローチを体現しているのが、フランスの出版社PUF(Presses universitaires de France)が展開する書籍シリーズ「Que sais-je?(ケ・セ・ジュ)」です。フランス語で「私は何を知っているか?」を意味するこのタイトルは、哲学者ミシェル・ド・モンテーニュの言葉に由来しています。
このシリーズの最大の特徴は、いわゆる「haute vulgarisation(高度な普及活動)」を実践している点にあります。これは、特定の分野の権威ある専門家が執筆しつつも、一般の読者が無理なく理解できるよう、エッセンスを凝縮して解説する手法のことです。
Key Facts
- 創刊:1941年、ポール・アングールヴァンによって設立。
- 規模:2,500人以上の著者による3,900以上のタイトルを刊行。
- 世界展開:43以上の言語に翻訳され、累計販売数は1億6,000万冊(2004年時点)を突破。
- 形式:全巻128ページという統一規格で、価格も低く抑えられている(2023年時点で10ユーロ)。
- 多様性:古典文学から最新の社会問題まで、あらゆる分野を網羅する世界最大級のペーパーバック百科事典。
知の体系化と編集のこだわり
「Que sais-je?」は、単なる書籍の集まりではなく、体系的な知識のアーカイブとして機能しています。毎年50〜60冊の新刊が追加され、現在は10の異なるシリーズに分かれています。その内容は極めて幅広く、ホメロスや叙事詩といった学術的なテーマから、美食学、自由意志、さらにはスポーツにおける暴力やパーソナルコーチングといった現代的なトピックまで多岐にわたります。
情報の提示方法も柔軟で、分野への入門書としての役割を果たすこともあれば、特定の思想流派を深く掘り下げたエッセイや、時事問題の分析として構成されることもあります。

時代に合わせた情報の更新
知識の陳腐化を防ぐため、本シリーズでは厳格な管理が行われています。内容が古くなった書籍は、ラインナップから除外されるか、あるいは最新の情報に基づいて更新されます。場合によっては、シリーズ番号を維持したまま、著者を交代して全面的に書き直されることもあります。例えば、1980年にエドモン・ルードニツカが執筆した『香水(Parfumerie)』は、2006年にジャン=クロード・エレナによって全面的にリライトされました。
市場の変遷と戦略的転換
長年にわたり成功を収めてきた本シリーズですが、時代の変化に伴う課題にも直面しました。一般的なテーマをほぼ網羅し尽くした結果、次第に「皮膚科におけるレーザー治療」や「精子」、「ファクタリング」といった極めて専門的な分野へと深化していきました。しかし、この専門化が進みすぎたことで一般読者が離れ、20世紀末には売上の減少を招きました。
この状況を打開するため、シリーズはカタログの3分の2を整理し、厳選された700タイトルに集中させるという戦略的な再編を行いました。
シリーズ概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 出版社 | Presses universitaires de France (PUF) |
| ページ数 | 全巻一律 128ページ |
| 価格設定 | 低価格で統一(2023年時点で10ユーロ) |
| 翻訳言語数 | 43言語以上 |
| 類似シリーズ | Oxford University Pressの「Very Short Introductions」など |
Frequently Asked Questions
「Que sais-je?」という名前にはどのような意味がありますか?
フランスの随筆家ミシェル・ド・モンテーニュの言葉から取られており、「私は何を知っているか?」という問いかけを意味しています。これは、謙虚に知識を追求する姿勢を象徴しています。
どのような人が執筆しているのですか?
それぞれの分野における専門家が執筆を担当しています。専門的な知見を、一般の読者が理解しやすい形式に落とし込むことが求められています。
本の内容が古くなった場合はどうなりますか?
内容が時代に合わなくなった場合、その本は販売停止になるか、あるいは最新の知見に基づいて更新されます。大幅な書き直しが行われる場合でも、シリーズとしての管理番号は維持されます。
どのようなジャンルの本が読めますか?
学術的な古典や哲学から、現代の社会現象、実用的なトピックまで、まさに百科事典のようにあらゆるジャンルをカバーしています。
他の国の似たようなシリーズはありますか?
オックスフォード大学出版局の「Very Short Introductions」や、ドイツのC.H. Beck Wissenなどが、同様のコンセプトを持つシリーズとして挙げられます。