Den Store Danske Encyklopædi:デンマーク最大の百科事典の歴史と変遷

デンマーク語で書かれた現代の百科事典の中で、最も包括的な内容を誇るのがDen Store Danske Encyklopædi(大デンマーク百科事典)です。この壮大なプロジェクトは、単なる知識の集積にとどまらず、紙媒体からデジタル、そしてオープンな知識プラットフォームへと形を変えながら、デンマークの知的遺産を継承してきました。

Key Facts

  • 構成: 全20巻(1994年〜2001年発行)、補遺1巻、索引2巻で構成。
  • 規模: 約11万5,000件の記事を収録し、最大で130ページに及ぶデンマークに関する詳細な記述がある。
  • 執筆陣: ヨルン・ルンド編集長の指揮下、約4,000人の学術専門家が参画。
  • 販売数: 紙版は約3万5,000セットが販売された。
  • 現状: 2020年より、その内容は新プラットフォーム「Lex」に統合されている。
Den Store Danske Encyklopædi

紙版の誕生と学術的価値

本プロジェクトは、同時期のスウェーデン国立百科事典(Nationalencyklopedin)に触発されて始まりました。出版を担ったのは、デンマークの出版社Gyldendalの子会社であるDanmarks Nationalleksikon A/Sです。アウグスティヌス財団からの資金援助や、政府による前払い購読へのインフレ保証といった強力なバックアップ体制のもとで制作されました。

内容の信頼性を担保するため、数十行を超える主要な記事には執筆者の署名が添えられており、多くの項目に図版が挿入されています。記事の幅は広く、一行の相互参照から、国家の詳細を記した膨大な論考まで多岐にわたります。

デジタル化への挑戦と挫折

時代の変化に合わせ、2004年にはWindows向け、2005年にはmacOS向けのCD-ROM版がリリースされました。ただし、このデジタル版は図版が省かれたテキストのみの構成でした。また、Microsoftのセキュリティアップデートの影響で、後のOSバージョンでは動作しなくなるという技術的な課題も抱えていました。

その後、2006年にはサブスクリプション形式の完全オンライン版の提供が計画されましたが、十分な購読者数を確保できず、2008年にプロジェクトの失敗が宣言されるという苦い経験を味わっています。

ハイブリッド型オンライン版の試行

2009年2月26日、戦略を転換して無料のオンライン版が公開されました。これはWikiソフトウェアを採用し、ユーザーがコンテンツを投稿できる形式でしたが、専門の編集スタッフが監視を行うという、伝統的な百科事典とユーザー生成コンテンツ(UGC)を融合させた「ハイブリッド型」を目指したものでした。

この無料化は、かつて高額(約25,000デンマーク・クローネ)で紙版を購入したユーザーから反発を招きました。しかし、出版社側は「紙の百科事典を安価に提供したわけではなく、ウェブベースの別形態である」として、当初の約束に反していないと主張しました。

運営面では、約1,61,000件の記事を検証するために1,500人の専門家を募り、最終的に約1,100人が登録されました。20人の常駐スタッフと共に、情報の信頼性と最新性の維持に努めましたが、維持コストの増大により2017年にサービス終了を決定しました。

現在の形態と権利関係

2020年、Den Store Danskeのコンテンツは、デンマークの新しい国立百科事典であるLexへと統合され、現代的な形式で引き継がれています。

Den Store Danske Encyklopædi の概要まとめ
項目 詳細
出版期間(紙版) 1994年 〜 2001年(補遺・索引は2002-2003年)
記事数 約115,000件(オンライン版では約161,000件へ拡大)
執筆者数 約4,000人の専門家
オンライン版期間 2009年 〜 2017年
後継プラットフォーム Lex (2020年〜)

著作権については、Gyldendalが保有しています。オリジナルの記事は非営利目的であれば自由に使用可能ですが、配布や商業利用は禁止されています。一方で、ユーザーが作成した新しい記事については、ディープリンクによる出典明記を条件に自由な利用が認められていました。

Frequently Asked Questions

Den Store Danske Encyklopædiは現在も利用できますか?

単独のオンライン版は2017年に終了しましたが、その内容は2020年に始動した「Lex – Denmark's National Encyclopedia」に統合されており、そこで閲覧することが可能です。

紙版の価格はどのくらいだったのでしょうか?

オンライン版が無料化した際に議論となりましたが、当時の紙版の価格は約25,000デンマーク・クローネ(2010年時点のレートで約4,500米ドル)という非常に高価なものでした。

誰がこの記事を執筆したのですか?

編集長のヨルン・ルンド氏を中心とした、約4,000人の学術的な専門家たちによって執筆されました。一定以上の長さがある記事には、執筆者の名前が明記されています。

CD-ROM版は今でも使えますか?

Microsoftによるセキュリティ修正の影響で、Windows XPやVista以降の新しいバージョンでは、アップデートなしに動作させることは困難であるとされています。

ユーザーが記事を編集できた時期があったというのは本当ですか?

はい。2009年から2017年まで提供されていたオンライン版では、Wiki形式を採用していたため、登録ユーザーによるコンテンツの投稿や画像のアップロードが可能でした。ただし、専門スタッフによる審査を経て承認される仕組みとなっていました。