宇宙に存在する多くの天体は、単独で漂っているのではなく、互いの重力によって結びついた「多体システム」を形成しています。こうしたシステムにおいて、圧倒的な質量を持ち、他の天体の運動を支配する中心的な存在を主星(Primary body)と呼びます。主星は、中心天体やホスト天体とも称され、システム全体の物理的なバランスを決定づける重要な役割を担っています。
主星の基本的な概念と重心の関係
主星を理解する上で欠かせないのが重心(Barycenter)という概念です。重心とは、システムに含まれるすべての天体の質量を考慮した平均的な位置を指します。一般的に、主星はその圧倒的な質量ゆえに、システムの重心のすぐ近くに位置します。
例えば、私たちの太陽系において、太陽はすべての惑星や小惑星にとっての主星です。太陽は系全体の質量の大部分を占めているため、太陽系の重心は通常、太陽の内部かそのごく近傍にあります。しかし、木星や土星のような巨大ガス惑星の質量と距離の影響により、重心が太陽の表面の外側に位置する場合もあります。

天文学における「主星」の使い分け
「主星」という用語は、対象が恒星であるか惑星であるかを問わず、そのシステムの中心にある天体を一般的に指す名詞として用いられます。これにより、個別の天体種別を特定せずに、重力的な主従関係を明確に表現することが可能です。
- 恒星系の場合:太陽のように、その周囲を惑星が公転している場合、その恒星が主星となります。
- 惑星系の場合:地球のように、その周囲を月(天然衛星)や人工衛星が公転している場合、その惑星が主星となります。
主星の定義が揺らぐ特殊なケース
すべてのシステムに明確な主星が存在するわけではありません。その代表的な議論の対象が、冥王星とその衛星カロンのペアです。この二つの天体の場合、共通の重心が冥王星の表面の外側に位置しています。このため、一部の天文学者はこれを「主星と衛星」の関係ではなく、二重矮惑星(Binary dwarf planet)と呼ぶべきだと主張しています。
国際天文学連合(IAU)は2006年に「二重惑星」の正式な定義を検討しましたが、最終的に批准には至りませんでした。そのため、依然として定義上の議論が続いています。
主星に関するまとめ
| 項目 | 一般的な主星システム | 特殊なシステム(例:冥王星-カロン) |
|---|---|---|
| 質量の分布 | 主星が圧倒的な質量を持つ | 質量差が比較的小さい |
| 重心の位置 | 主星の内部または至近距離 | 主星の表面の外側 |
| 呼称の傾向 | 主星と衛星(または惑星) | 二重惑星・二重矮惑星の可能性 |
Key Facts
- 主星(プライマリー)とは、重力的に結びついたシステムの中で最大の質量を持つ中心天体のこと。
- 主星は通常、システム全体の重心(バリセンター)の近くに位置する。
- 太陽系では、太陽が全惑星の主星であり、各惑星はそれぞれの衛星にとっての主星となる。
- 重心が天体の外にある場合、主星という定義が不適切となり「二重惑星」などの概念が検討される。
- 系外惑星における衛星(系外衛星)はまだ発見されていないため、系外惑星を主星と呼ぶことは一般的ではない。
Frequently Asked Questions
主星と重心は同じものですか?
いいえ、異なります。主星は物理的な「天体」そのものを指し、重心はシステム全体の質量バランスから計算される「仮想的な点」を指します。多くの場合、主星は重心の近くにありますが、同一ではありません。
なぜ「主星」という言葉を使うのですか?
相手が恒星なのか、惑星なのか、あるいは他の天体なのかを限定せずに、重力的な中心にある天体を一貫して表現できるため、専門的な議論において便利だからです。
二重惑星とは何が違うのですか?
通常の主星システムでは、重心が主星の内部にあります。一方、二重惑星(または二重矮惑星)の候補となるシステムでは、重心が両天体の間に位置するため、どちらか一方が圧倒的な主星であるとは言い切れない状態を指します。
銀河中心の超大質量ブラックホールは主星と呼ばれますか?
いいえ、科学論文などの専門的な文脈において、銀河中心のブラックホールを「主星(primary)」と呼ぶ習慣はありません。
太陽系の重心が太陽の外に出ることはありますか?
はい、あります。太陽が圧倒的な質量を持っていますが、木星などの巨大惑星が特定の配置になった際、システム全体の重心が太陽の表面より外側に移動することがあります。
References
- "What's a Barycenter?". Space Place. . 23 September 2015. Retrieved 2017-05-29.