圧力とは、液体や気体などの流体が表面に対して単位面積あたりに及ぼす力のことを指します。私たちの身の回りから産業現場まで、この圧力の正確な測定は安全管理や製品開発において不可欠な要素です。国際単位系(SI)ではパスカル(Pa)が標準単位として用いられていますが、用途に応じて多様な単位や計測手法が使い分けられています。
Key Facts
- 圧力の定義:単位面積あたりに作用する力で、SI単位はパスカル(Pa)である。
- 基準の違い:大気を基準とする「ゲージ圧」と、完全真空を基準とする「絶対圧」がある。
- 代表的な機器:機械式のブルドン管圧力計から、高精度な電子式シリコンセンサまで幅広い。
- 真空測定:大気圧より低い領域を測定し、ピラニゲージや電離真空計などが用いられる。
- 応用範囲:高度計、液面計、リークテスト、潜水時の水圧測定など多岐にわたる。
圧力の基準と単位
圧力を測定する際、何を「ゼロ」とするかによって数値の意味が変わります。最も一般的なのは、周囲の大気圧をゼロとして測定するゲージ圧です。一方で、完全に空気が無い状態(完全真空)をゼロとするのが絶対圧であり、極めて低い圧力を扱う真空測定ではこの基準が必須となります。
また、2つの地点の圧力差を測る差圧という概念もあります。単位については、パスカルのほか、工業的に広く使われるバー(bar)、気象学的な標準大気圧(atm)、米国で一般的なpsi(ポンド毎平方インチ)などが混在して使用されています。
| 単位 | パスカル (Pa) | バー (bar) | 標準大気圧 (atm) | psi | 水銀柱 (mmHg) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 Pa | 1 | 10⁻⁵ | ≈ 9.87 × 10⁻⁶ | ≈ 1.45 × 10⁻⁴ | ≈ 7.50 × 10⁻³ |
| 1 bar | 100,000 | 1 | ≈ 0.987 | ≈ 14.50 | ≈ 750.06 |
| 1 atm | 101,325 | 1.01325 | 1 | ≈ 14.70 | 760.00 |
| 1 psi | ≈ 6,894.76 | ≈ 0.069 | ≈ 0.068 | 1 | ≈ 51.71 |
特殊な環境では別の単位が使われます。例えば潜水士は、海水10分の1バーに相当する「メートル海水(msw)」や、米国基準の「フィート海水(fsw)」を用いて水深に伴う圧力を管理しています。
機械式圧力計の仕組み
ブルドン管圧力計
最も普及している機械式計器の一つがブルドン管です。これは、断面が楕円形の曲がった管に圧力をかけると、管が直線的に戻ろうとする性質を利用しています。このわずかな変形をギアで増幅させ、文字盤の針に伝えることで圧力を可視化します。






ブルドン管は構造がシンプルで直線性が高く、工業的な用途に最適です。振動が激しい環境では、針の振れを抑えるためにケース内にオイルやグリセリンを満たす工夫がなされることがあります。


マノメーター(液柱圧力計)
歴史的に最も古い手法が、U字管などに液体を満たし、その液面の高さの差で圧力を測るマノメーターです。液柱の高さ(圧力ヘッド)は、流体の密度と重力加速度に基づいた計算で圧力値に変換されます。



その他の機械式デバイス
他にも、金属製の薄い膜がたわむ性質を利用したダイヤフラム(膜)式や、伸縮するベローズ式、気圧計に用いられるアネロイド(真空カプセル)式などがあります。


真空測定と特殊な計測法
大気圧よりも大幅に低い領域を測定する場合、通常の圧力計では対応できません。そこで、ガスの熱伝導率を利用するピラニゲージや、ガス分子を電離させて得られる電流値を測定する電離真空計(ホットカソード式やコールドカソード式)が使用されます。



また、極めて高い精度が求められる研究室などでは、回転する鋼球がガスの粘性によって減速する速度を測る「回転ローターゲージ」や、既知の重りを用いて圧力を発生させる「デッドウェイトテスター」が標準器として利用されます。


電子式圧力センサの進化
現代の産業界では、電気信号で出力を得る電子式センサが主流です。特に、圧力によって電気抵抗が変化するピエゾ抵抗を利用したシリコンセンサは、小型で応答性が高く、デジタル機器への組み込みが容易です。




これらのセンサは、圧力トランスミッタとしてシステムに組み込まれ、遠隔地からの監視や自動制御に活用されています。また、ワイヤレス通信機能を備えた産業用センサも登場しています。


圧力測定の具体的な応用例
圧力測定の技術は、単なる数値計測を超えて様々な用途に応用されています。
- 高度測定:高度が上がると気圧が下がる関係を利用し、航空機や気象観測気球の高度計として利用されます。
- 液面・水深測定:液体の深さに比例して圧力が上昇することを利用し、タンクの残量確認や潜水艇の水深計として機能します。
- 流量測定:流路に設けられた絞り部分の前後で生じる差圧を測ることで、流体の流速を算出します。
- 地盤調査:ピエゾメーターを用いて地下水の圧力(間隙水圧)を測定し、土木工事の安全性を評価します。






Frequently Asked Questions
ゲージ圧と絶対圧の決定的な違いは何ですか?
ゲージ圧は「現在の大気圧」を0として測定する方式で、タイヤの空気圧などの日常的な測定に用いられます。一方、絶対圧は「完全な真空」を0とする方式で、宇宙空間や高度な真空装置の測定に不可欠です。
ブルドン管圧力計が選ばれる理由は何ですか?
構造が非常にシンプルでありながら、測定精度が高く、耐久性に優れているためです。また、電源を必要とせず、機械的な動作だけで圧力を表示できる点も大きなメリットです。
真空計にはなぜ複数の種類があるのですか?
真空度(低真空から超高真空まで)によって、測定可能な原理が異なるためです。例えば、中程度の真空には熱伝導を利用するピラニゲージが適していますが、極低圧領域では分子を電離させる電離真空計が必要になります。
圧力センサで「差圧」を測るメリットは?
2点間の圧力の差を測ることで、フィルターの目詰まり検知や、流体の流量計算、あるいは微小な圧力変化の検出が可能になります。絶対的な値よりも「変化量」が重要な場合に有効です。
References
- Taskos, Nikolaos (2020-09-16). "Pressure Sensing 101 – Absolute, Gauge, Differential & Sealed pressure". ES Systems. Retrieved 2020-09-16.
- Bequette, B. Wayne (2003). Process control: modeling, design, and simulation. . p. 735. .
- NIST
- Staff (2016). "2 - Diving physics". Guidance for Diving Supervisors (IMCA D 022 August 2016, Rev. 1 ed.). London, UK: International Marine Contractors' Association. p. 3.
- Page 2-12.
- "Understanding Vacuum Measurement Units". 9 February 2013.
- Daood, Syed S.; Ijaz, Aamir; Butt, Muhammad A. (2007-11-20). "Study on a Concentric Tube Bulb Manometer and its Performance Compared to U-shaped Manometer". Sensors (Basel, Switzerland). 7 (11): 2835–2845. :2007Senso...7.2835D. :10.3390/s7112835. 1424-8220. 3965241. 28903264.
- Nagata, Tomio; Terabe, Hiroaki; Kuwahara, Sirou; Sakurai, Shizuki; Tabata, Osamu; Sugiyama, Susumu; Esashi, Masayoshi (1992-08-01). "Digital compensated capacitive pressure sensor using CMOS technology for low-pressure measurements". Sensors and Actuators A: Physical. 34 (2): 173–177. :1992SeAcA..34..173N. :10.1016/0924-4247(92)80189-A. 0924-4247.
📸 フォトギャラリー





























