Pioneer Venus Bus with probes attached
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パイオニア・ヴィーナス金星探査NASA大気プローブ惑星科学

パイオニア・ヴィーナス・マルチプローブ金星の大気を解き明かしたNASAの挑戦

🗓 2026年8月11日

1970年代後半、NASAは金星の過酷な環境を詳細に調査するため、「パイオニア・ヴィーナス」プロジェクトを始動させました。その中核を担ったのが、1978年に打ち上げられたパイオニア・ヴィーナス・マルチプローブ(別名:パイオニア・ヴィーナス2、パイオニア13)です。このミッションは、単一の探査機ではなく、複数のプローブ(探査機)を同時に投入することで、金星の異なる地点における大気データを同時に収集するという野心的な試みでした。

このミッションは、同時期に打ち上げられたオービター(周回機)と連携し、金星の全体像を把握することを目的としていました。後のマゼラン探査機によるレーダーマッピングへと繋がる、金星探査の重要な転換点となったミッションです。

Trajectory of Pioneer Venus Multiprobe in 1978

Key Facts

  • ミッション目的: 金星の大気組成、温度、気圧、および雲の構造の調査。
  • 構成: メインバス1基、大型プローブ1基、小型プローブ3基の計5つのコンポーネント。
  • 打ち上げ日: 1978年8月8日(アトラス SLV-3D ケンタウルス-D1ARロケットを使用)。
  • 到達日: 1978年12月9日。
  • 主要な発見: 地表付近の極端な高温(約450℃)と高圧、および地球とは異なるアルゴン同位体比の検出。
Pioneer Venus Multiprobe infographic

探査機の構造と役割

マルチプローブの心臓部となったのは、ヒューズ社が製造したHS-507バスです。直径2.5メートルの円筒形をしたこのメインバスは、4つのプローブを運ぶ輸送船の役割を果たし、金星到達後にそれらを分離させました。また、バス自体も金星の上層大気に突入し、貴重なデータを送信しました。

Pioneer Venus Bus with probes attached

大型プローブの精密調査

大型プローブは、最も高度な観測機器を搭載していました。中性質量分析計(LNMS)やガスクロマトグラフ(LGC)を用いて大気組成を分析し、太陽光束放射計(LSFR)や赤外線放射計(LIR)でエネルギー分布を測定しました。さらに、雲粒子のサイズや形状を調べる分光計(LCPS)やネフェロメーター(LN)も搭載されていました。

このプローブは秒速約11.5kmという猛烈な速度で大気圏に突入し、高度67kmでパラシュートを開いて減速しながら降下しました。

Pioneer Venus Large Probe opens its parachute (artist's rendition)
Pioneer Venus Large Probe descent sequence

小型プローブによる多地点観測

3基の小型プローブ(北側、昼側、夜側)は、大型プローブと同様の科学装置を簡略化した形で搭載していました。これらは金星の異なる地域に同時に突入することで、場所による大気条件の差異を明らかにすることを目的としていました。

A small probe (1-antenna, 2-temperature sensor, 3-frontal protection, 4-hermetic container, 5-nephelometer, 6-radiometer)
Entry of Pioneer Venus Multiprobe (comprising 1 large and 3 small probes)

金星突入のタイムラインと結果

1978年12月9日、すべてのコンポーネントが金星に到達しました。まず大型プローブが突入し、その後11分かけて3基の小型プローブが次々と大気圏へ入りました。最後にメインバスが突入し、高度110kmで最後の信号を送信してその役目を終えました。

パイオニア・ヴィーナス・マルチプローブ 突入データまとめ
コンポーネント 突入時刻 (UTC) 地表到達/信号喪失 着陸地点 (推定)
大型プローブ 18:45:32 19:39:53 北緯4.4° 東経304.0°
北側プローブ 18:49:40 19:42:40 北緯59.3° 東経4.8°
昼側プローブ 18:52:18 19:47:59 南緯31.3° 東経317.0°
夜側プローブ 18:56:13 19:52:05 南緯28.7° 東経56.7°
メインバス 20:21:52 20:22:55 南緯37.9° 東経290.9°

科学的成果:金星の正体を暴く

このミッションによって、金星の地表付近の環境が極めて均一であることが判明しました。高度50km以下では、どのプローブもほぼ同じ温度(448〜459℃)と気圧(86.2〜94.5バール)を記録しました。

また、ネフェロメーター(雲粒子測定器)のデータから、特性の異なる3つの雲の層が存在することが確認されました。風速についても興味深いデータが得られ、中層雲では秒速200メートルに達する強風が吹いている一方、地表付近では秒速1メートルまで低下することが分かりました。

最も重要な発見の一つは、アルゴン同位体比が地球よりも大幅に高いことでした。これは、金星の大気が地球とは全く異なるプロセスで形成されたことを強く示唆しています。これらの成果は、先行していたソ連のベネラ計画のデータを補完し、より精緻なものへと進化させました。

Pioneer 11 at Saturn

Frequently Asked Questions

パイオニア・ヴィーナス・マルチプローブの最大の特徴は何ですか?

1基の大型プローブと3基の小型プローブを同時に金星の異なる地点へ投入し、大気データを多角的に収集した点にあります。

金星の地表付近の温度と気圧はどうだったのでしょうか?

温度は約448〜459℃という極めて高温で、気圧は86.2〜94.5バールという、地球の深海のような超高圧環境であることが確認されました。

このミッションで得られた最も驚くべき発見は何ですか?

アルゴンの同位体比が地球と大きく異なっていたことです。これにより、金星の大気の起源が地球とは根本的に異なる可能性が浮上しました。

金星の風速にはどのような特徴がありましたか?

高度によって劇的に変化しており、中層の雲の中では秒速200mという猛烈な風が吹いていましたが、地表付近では秒速1mまで穏やかになることが分かりました。

メインバスの役割は何でしたか?

プローブを金星まで運ぶ輸送船としての役割に加え、自身も大気圏に突入して上層大気のデータを収集する観測機としての役割を担っていました。

References

  1. "Pioneer Venus Multiprobe/Pioneer Venus 2/Pioneer 13". NASA's Solar System Exploration website. Retrieved December 1, 2022.
  2. "Pioneer Venus Project Information". NASA Goddard Space Flight Center. Retrieved 2016-08-17.
  3. "Pioneer Venus Probes". NASA Goddard Space Flight Center. 2005. Archived from the original on June 16, 2006.
  4. NASA. Pioneer Venus 2, NASA Science: Solar System Exploration, February 3, 2021. Retrieved 24 April 2022.
  5. Paolo Ulivi et David M. Harland, Robotic Exploration of the Solar System Part 1, The Golden Age 1957–1982, Springer Praxis, 2007 ( )

📸 フォトギャラリー

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A small probe (1-antenna, 2-temperature sensor, 3-frontal protection, 4-hermetic container, 5-nephelometer, 6-radiometer)
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