火成岩を観察していると、細かい粒子の集まりの中に、ひときわ大きく目立つ結晶が点在していることがあります。この大きな結晶のことを地質学では斑晶(はんしょう)と呼びます。斑晶は単なる見た目の特徴ではなく、その岩石がどのような環境で、どのようなプロセスを経て固まったのかを物語る重要な手がかりとなります。
斑晶を持つ岩石は、結晶のサイズに明確な差があるため「斑状組織」を持つと言われ、このような岩石をポルフィリー(斑状岩)と呼びます。斑晶はマグマがゆっくりと冷却される過程で早期に形成されるため、周囲の細かい結晶(石基)よりも大きく成長します。
Key Facts
- 斑晶:火成岩の石基(地質的なベース部分)よりも著しく大きい結晶のこと。
- サイズ基準:一般的に直径0.5mm以上のものが斑晶と呼ばれ、それ未満で石基より大きいものは「微斑晶」、極めて大きいものは「巨斑晶」とされる。
- 分布:安山岩や流紋岩などの珪酸分が多い岩石に多く見られるが、超塩基性岩を含むあらゆる火成岩に存在する。
- 分析価値:結晶の成長過程や化学組成の変化(ゾーニング)から、マグマの温度や圧力の履歴を推定できる。
斑晶の分類と定義
斑晶の有無や量によって、岩石の名称や分類が細かく規定されます。例えば、斑晶が全く含まれていないか、体積比で1%未満である岩石は「無斑晶(aphyric)」と呼ばれます。一方で、斑晶が含まれる場合は「斑状(phyric/porphyritic)」と表現されます。
具体的な岩石名をつける際は、含まれている鉱物の種類と量に基づいて修飾語が付け加えられます。例えば、玄武岩の中にカンラン石の斑晶が主に見られる場合は「斑状カンラン石玄武岩」と呼ばれます。さらに、カンラン石に加えて斜長石の斑晶も含まれている場合は、量の多い順に並べて「カンラン石-斜長石斑状玄武岩」のように記述します。
結晶のサイズによる分類では、観察手法(ルーペや顕微鏡の使用)によって境界が変動することもありますが、一般的には0.5mmが一つの目安となります。この基準を下回るものの、石基よりは大きい結晶は微斑晶(microphenocrysts)と区別されます。

マグマの履歴を解き明かす「ゾーニング」と構造
斑晶の内部構造を分析することで、結晶が成長した際の環境変化を読み取ることができます。特に斜長石などの斑晶に見られるゾーニング(帯状構造)は非常に有用なデータとなります。
- 正常ゾーニング:中心部が高温時の組成(カルシウムに富む)で、外縁に向かって低温時の組成(ナトリウムに富む)へと変化している状態。
- 逆ゾーニング:外縁部の方が中心部よりも高温時の組成を示している稀なケース。
- 振動ゾーニング:高温と低温の組成が周期的に繰り返されている状態。
また、特定の岩石ではユニークな構造が見られます。例えばラパキビ花崗岩では、正長石の斑晶が斜長石(オリゴクレーズなど)の縁取りに包まれているのが特徴です。
火山岩や浅い貫入岩の場合、噴出前や定置前に形成された斑晶が、急冷された微細な結晶やガラス質の石基の中に閉じ込められます。この際、結晶が流れ方向に沿って平行に並ぶ「流理構造(フローバンディング)」が見られることがあり、これはマグマの流動方向を示す重要な証拠となります。

斑晶に関するまとめ
| 用語 | 定義・特徴 | 備考 |
|---|---|---|
| 斑晶 (Phenocryst) | 石基より著しく大きく、通常0.5mm以上の結晶 | 早期に形成される |
| 微斑晶 (Microphenocryst) | 石基よりは大きいが、斑晶の基準サイズ未満の結晶 | 分析手法により定義が異なる |
| 巨斑晶 (Megaphenocryst) | 極めて巨大な斑晶 | ペグマタイトなどで見られる |
| 斑状組織 (Porphyritic) | 結晶サイズに明確な差がある組織 | ポルフィリーとも呼ぶ |
| 無斑晶 (Aphyric) | 斑晶を含まない、または体積比1%未満の岩石 | 均質な組織を持つ |
Frequently Asked Questions
斑晶と変成岩に見られる似た結晶は何が違うのですか?
見た目は似ていますが、火成岩の斑晶がマグマから結晶化したものであるのに対し、変成岩の中で周囲より大きく成長した結晶は斑状晶(porphyroblast)と呼ばれ、固相状態での再結晶作用によって形成されます。
なぜ斑晶は特定の岩石に多く見られるのですか?
斑晶は特に流紋岩や安山岩などの珪酸分が多い(明るい色の)火成岩によく見られますが、実際には超塩基性岩を含むあらゆる種類の火成岩で発生し得ます。これはマグマの冷却速度や化学組成によって結晶化のタイミングが異なるためです。
ゾーニングから何がわかるのですか?
結晶の芯から縁にかけての化学組成の変化を調べることで、その結晶が成長した際の温度変化や、マグマの組成がどのように変化したかという履歴を復元することができます。
斑晶のサイズ基準は厳格に決まっているのですか?
いいえ、0.5mmという基準は便宜的なものであり、絶対的なものではありません。使用する観察機器(ハンドレンズか顕微鏡か)や分析者の定義によって、100μmを基準とする場合や、体積比で1%〜5%を境界とする場合など、幅があります。
References
- The minimum size boundary is arbitrary and not precise. It is based upon observation and may vary depending upon whether technical aids, such as a hand lens or a microscope are used or not. One analyst used a 100 limit on the size of crystals as that was the minimum that could be point-counted accurately by optical means. Murphy, M. D.; Sparks, R. S. J.; ; Carroll, M. R. & Brewer, T. S. (2000). "Remobilization of andesite magma by intrusion of mafic magma at the Soufriere Hills Volcano, Montserrat, West Indies". Journal of Petrology. 41 (1): 21–42. :10.1093/petrology/41.1.21.
- Smith, George I. (1964). Geology and Volcanic Petrology of the Lava Mountains, San Bernardino County, California. United States Geological Survey professional paper 457. Washington, D.C.: United States Geological Survey. p. 39. 3598916.
- Gill, Robin (2011). Igneous Rocks and Processes: A Practical Guide. Hoboken, New Jersey: Wiley. p. 34. .
- Some use a 1% boundary condition, Sen, Bibhas; Sabale, A. B. & Sukumaran, P. V. (2012). "Lava channel of Khedrai Dam, northeast of Nasik in western Deccan Volcanic province: Detailed morphology and evidences of channel reactivation". Journal of the Geological Society of India. 80 (3): 314–328. :10.1007/s12594-012-0150-8. 128608511. and Ocean Drilling Program, Texas A & M University (1991). Proceedings of the Ocean Drilling Program. Part A, Initial report. Vol. 140. National Science Foundation (U.S.). p. 52., while others suggest a limit of 5%. Piccirillo, E. M. & Melford, A. J. (1988). The Mesozoic Flood Volcanism of the Paraná Basin: Petrogenetic and Geophysical Aspects. São Paulo, Brazil: Universidade de São Paulo, Instituto Astronômico e Geofísico. p. 49. . and Moulton, B. J. A.; et al. (2008). Volcanology of the Felsic Volcanic Rocks of the Kidd-Munro assemblage in Prosser and Muro Townships and Premininary Correlations with the Kidd Creek Deposit, Abitibi Greenstone Belt, Ontario. Geological Survey of Canada, Current Research, No. 2008-18. Ottawa: Geological Survey of Canada. p. 19. .
- Gill, Robin (2011). Igneous Rocks and Processes: A Practical Guide. Hoboken, New Jersey: Wiley. p. 21. .
- Byerly, Gary R. & Wright, Thomas L. (1978). "Origin of major element chemical trends in DSDP Leg 37 basalts, Mid-Atlantic Ridge". Journal of Volcanology and Geothermal Research. 3 (3–4): 229–279. :1978JVGR....3..229B. :10.1016/0377-0273(78)90038-0.
- Gangopadhyay, A. M. I. T. A. V. A.; Sen, Gautam & Keshav, Shantanu (2003). "Experimental Crystallization of Deccan Basalts at Low Pressure: Effect of Contamination on Phase Equilibrium" (PDF). Indian Journal of Geology. 75 (1/4): 54.
- Williams, Howel; Turner, Francis J. & Gilbert, Charles M. (1954). Petrography: An introduction to the study of rocks in thin sections. San Francisco: W. H. Freeman. p. 102–103. .
{{}}: ISBN / Date incompatibility () - "Crystal zoning." Oxford Reference. Accessed 8 Aug. 2020. https://www.oxfordreference.com/view/10.1093/oi/authority.20110803095651756.
- Cox, S. F. & Etheridge, M. A. (1983). "Crack-seal fibre growth mechanisms and their significance in the development of oriented layer silicate microstructures". Tectonophysics. 92 (1): 147–170. :1983Tectp..92..147C. :10.1016/0040-1951(83)90088-4.
📸 フォトギャラリー

