地球の地殻を構成する火成岩の中には、化学組成のわずかな偏りが、その岩石がどのような環境で誕生したかを物語る重要な手がかりとなるものがあります。その代表例が過アルカリ岩(Peralkaline rocks)です。この岩石は、一般的な火成岩とは異なる特異なアルミニウムの含有量を持っており、地質学的な解析において極めて重要な意味を持ちます。
過アルカリ岩とは何か
過アルカリ岩とは、組成の中にアルミニウムが不足している火成岩の総称です。通常、火成岩に含まれるナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ元素は、長石(feldspar)という鉱物を形成するために消費されます。しかし、過アルカリ岩ではアルミニウムの量が不十分であるため、長石を作り終えてもなおアルカリ元素が余るという状態になります。
このような化学的特性を持つ岩石の分類を視覚的に理解するために、アルミニウムの飽和度に基づいた区分が用いられます。

指標となる特徴的な鉱物
過アルカリ状態にあるかどうかを判断する際、特定の鉱物の存在が決定的な証拠となります。特に、ナトリウムを含む輝石であるエージェリン(aegerine)や、ナトリウムを含む角閃石であるリーベッカイト(riebeckite)が検出された場合、その岩石は過アルカリ的な環境で形成されたと判断されます。
代表的な岩石の種類と具体例
過アルカリ岩には、そのシリカ(二酸化ケイ素)含有量によっていくつかの種類に分けられます。特に流紋岩質の過アルカリ岩として知られるのが、コメンダイト(comendite)とパンテライト(pantellerite)です。このうち、よりシリカに富む(フェルシックな)性質を持つのがコメンダイトです。
また、こうした特性を持つ岩石は火山岩だけでなく、深成岩としても現れます。例えば、北大西洋に浮かぶ小島、ロックオール(Rockall)を構成する過アルカリ花崗岩がその典型的な例です。
過アルカリ岩が形成されるメカニズムと場所
マグマの分化プロセス
過アルカリマグマは、主に分化作用(fractional crystallization)によって生じると考えられています。これは、マグマが冷却される過程で特定の鉱物が先に結晶化して取り除かれる現象です。特に、苦鉄質鉱物(mafic minerals)に比べて斜長石(plagioclase)が大量に除去されることで、残った液体部分にアルカリ元素が濃縮され、アルミニウムが相対的に不足した状態になります。
発生しやすい地質学的環境
過アルカリ岩は、地球上の特定のテクトニクス環境で頻繁に観察されます。
- 大陸リフト帯: ケニア中部の東アフリカリフトに見られる過アルカリ流紋岩などが代表的です。
- ホットスポット: 大陸上のホットスポット(オーストラリア東部のグラスハウス山脈)や、海洋上のホットスポット(大西洋のカナリア諸島)で発生します。
- 沈み込み帯: 稀ではありますが、イタリアのサルデーニャ島のように、プレートの沈み込みに関連して形成された例も報告されています。
主要データのまとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 化学的定義 | アルミニウムが不足し、ナトリウムやカリウムが過剰な状態 |
| 指標鉱物 | エージェリン(Na輝石)、リーベッカイト(Na角閃石) |
| 代表的な岩石 | コメンダイト、パンテライト、過アルカリ花崗岩 |
| 主な成因 | 斜長石の優先的な分化結晶作用によるアルミニウムの除去 |
| 主な分布域 | 大陸リフト、ホットスポット、一部の沈み込み帯 |
Key Facts
- アルミニウム不足: 長石を形成するのに必要な量よりもアルミニウムが少ないことが定義である。
- 特有の鉱物: エージェリンやリーベッカイトの存在が過アルカリ状態の証明となる。
- シリカ量による分類: 過アルカリ流紋岩の中でも、よりシリカに富むものをコメンダイトと呼ぶ。
- 形成プロセス: 分化作用により斜長石が効率的に取り除かれることで生成される。
- 多様な分布: 東アフリカリフトやカナリア諸島など、リフトやホットスポットに多く見られる。
Frequently Asked Questions
過アルカリ岩と普通のアルカリ岩は何が違うのですか?
単なる「アルカリ岩」はアルカリ元素(Na, K)が多い岩石全般を指しますが、「過アルカリ岩」はさらに踏み込んで、アルミニウムの量が少なすぎるためにアルカリ元素が余っているという化学的な不均衡状態にあることを指します。
コメンダイトとパンテライトの決定的な違いは何ですか?
どちらも過アルカリ的な流紋岩ですが、シリカ(二酸化ケイ素)の含有量に違いがあります。コメンダイトの方がよりシリカに富んだ(フェルシックな)組成を持っています。
なぜ斜長石が取り除かれると過アルカリになるのですか?
斜長石は組成の中にアルミニウムを多く含んでいます。そのため、マグマから斜長石が結晶として大量に分離して取り除かれると、残った液体(マグマ)からはアルミニウムが減り、相対的にナトリウムやカリウムが過剰な状態になるためです。
過アルカリ岩は世界中のどこで見つかりますか?
代表的な場所としては、ケニアの東アフリカリフト、オーストラリアのグラスハウス山脈、大西洋のカナリア諸島、北大西洋のロックオール、そしてイタリアのサルデーニャ島などが挙げられます。
References
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