パプアニューギニアでは、深刻な住居不足と社会的不安定さが重なり、多くの人々が住まいを失っています。特に首都ポートモレスビーでは、経済的な格差や急激な都市化が原因となり、路上生活を余儀なくされる人々が増加しています。この問題は単なる住居の欠如にとどまらず、栄養不良や精神衛生の悪化、そして社会的な差別という深刻な連鎖を引き起こしています。
Key Facts
- 深刻な格差: ポートモレスビーの平均家賃(年額13,920豪ドル)が、国民の平均年収(3,555豪ドル)を大幅に上回っている。
- 若年層の脆弱性: 首都だけでも5,000人以上のホームレスの子どもたちが存在すると推定されている。
- 地理的リスク: 「環太平洋火山帯(Ring of Fire)」に位置するため、地震や火山噴火による家屋喪失が頻発している。
- 社会的排除: 排水溝に住む人々が「ドレイン・ドウェラー(Drain Dwellers)」と呼ばれ、強い偏見にさらされている。
都市部における住居危機の構造
ポートモレスビーなどの都市部では、地方から就業目的で流入する人々が手頃な住居を見つけられない状況にあります。ある調査では、一般的な賃貸物件の費用が世帯収入の120%に達するとされており、経済的に自立した生活を送ることが極めて困難です。その結果、市街地周辺に不法占拠による「スクワッター・セトルメント(不法居住区)」が形成されています。
これらの居住区で育った子どもたちは、土地を法的に相続することができないため、成人後も住居不安にさらされ、ホームレス化するリスクを抱えています。また、政府による強制立ち退き作戦も問題を悪化させており、警察によって家屋が破壊されることで、多くの家族が放棄された車両などで生活せざるを得ない状況に追い込まれています。

強制立ち退きと法的混乱
2026年初頭には、ラビアジニ(Rabiagini)という大規模な居住区が警察によって撤去されました。住民側は土地を正当に購入したと主張しましたが、実際には慣習的な土地所有者から非公式に購入していたケースが多く、法的な権利が認められないという悲劇が繰り返されています。カトリック教会のジョン・リバット枢機卿は、こうした強硬な立ち退き策がホームレスを増大させているとして、政府に若者向けのインフラ整備を強く求めています。

ホームレス化を加速させる外部要因
自然災害による喪失
パプアニューギニアは地質学的に不安定な地域にあり、自然災害が直接的に住まいを奪う要因となっています。地震、火山噴火、サイクロン、そして土砂崩れが頻繁に発生しています。
- 洪水: 1998年にはセピック川とラム川の氾濫で約3万人が、2007年には北部州で約1万3,000人が家を失いました。
- 地震・火山: 2018年のマグニチュード7.5の地震ではハイランド地方で約3万5,000人が避難し、同年のウルアウン山などの噴火では1万3,000人以上が被災しました。
- 気候変動: 海面上昇により、低地のカータレット諸島では住居が脅かされており、気候難民の問題が顕在化しています。

社会不安と紛争
コミュニティ間の部族紛争も、住居喪失の大きな原因です。特に近年は銃器の流入により暴力が激化しており、家屋の放火や女性・子どもへの攻撃が相次いでいます。例えば、東ニューブリテン州のナヌク地区では、紛争により22家族の家が焼失しました。また、ラエ市で発生した抗議活動に伴う放火など、社会的な混乱が直接的に人々を路上へと追い出しています。
支援体制と政府の対応
政府による支援不足が批判される一方で、宗教団体やNGOが重要な役割を担っています。マザー・テレサが1972年から活動を開始したことに始まり、現在は「シティ・ミッション(City Mission)」などの団体が、ホームレスの若者に職業訓練を提供し、自立を支援しています。

政府側も対策を講じており、2023年には国際金融公社(IFC)の支援を受け、ポートモレスビー周辺に気候変動に対応した環境配慮型住宅を最大2,000戸建設することを表明しました。また、国家児童家族サービス局(NOCFS)がホームレス問題への対応を担っています。
主要な支援団体と法整備
| カテゴリー | 名称・団体名 | 主な役割・目的 |
|---|---|---|
| 支援団体 | City Mission | ホームレスの若者への職業訓練提供 |
| 支援団体 | Women of Hope Shelter | 女性へのシェルター提供と保護 |
| 支援団体 | Life Care PNG | 人道的な生活支援 |
| 法整備 | Lukautim Pikinini Act 2009 | 子どもの権利保護と福祉の法的な枠組み |
Frequently Asked Questions
なぜポートモレスビーでホームレスが増えているのですか?
主な要因は、地方から都市への人口流入に対し、手頃な価格の住宅供給が全く追いついていないことです。平均的な年収に対して家賃が高すぎることが、不法居住区の形成や路上生活に直結しています。
「ドレイン・ドウェラー」とはどのような人々ですか?
都市部の排水システム(ドレイン)の中に住居を構えて生活しているホームレスの人々を指します。彼らは社会的に激しい差別やステレオタイプな偏見にさらされており、精神的・社会的な孤立を深めています。
自然災害はどのように住居問題に影響していますか?
環太平洋火山帯に位置するため、大規模な地震や火山噴火が頻発し、一度の災害で数万人規模の人が家を失うことがあります。また、気候変動による海面上昇や激しい洪水も、恒久的な住居喪失を招いています。
子どもたちのホームレス化を防ぐための取り組みはありますか?
シティ・ミッションなどの宗教系NGOが職業訓練を提供しているほか、マレーシア協会などの団体が資金援助を行っています。また、政府は気候変動に対応した低コスト住宅の建設を計画しています。
政府の立ち退き策が問題視されているのはなぜですか?
警察による家屋の破壊(ブルドーザーによる撤去や放火)が強行されており、代替の住居が確保されないまま人々を路上に追い出しているため、結果としてホームレス数を増加させていると批判されています。
References
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